没後25年を迎えた今もなお多くの音楽家に影響を与え続けている、日本を代表する作曲家、
武満徹。彼の世界初演曲で構成された1982年の公演を完全収録するアルバム『1982 武満徹世界初演曲集』が、7月7日(水)にドイツ・グラモフォンからリリースされます。演奏は
岩城宏之指揮
札幌交響楽団。オフィシャル・トレイラーが公開され、収録曲「夢の時(オーケストラのための)」の先行配信がスタートしています。
このアルバムは、1970年代後半から素晴らしいコンビネーションを築き上げていた武満と岩城宏之指揮札幌交響楽団が、1982年6月27日に札幌市民会館で行なったコンサート〈武満徹世界初演曲 札響特別演奏会〉の録音を完全パッケージ化したもの。武満自身の希望で曲目のすべてが世界初演となったこのコンサートで披露された、「ア・ウェイ・ア・ローンII(弦楽オーケストラのための)」、「海へII(アルト・フルート、ハープ、弦楽オーケストラのための)」、「夢の時(オーケストラのための)」という3曲、さらに当日行なわれた武満が自身の音楽や演奏曲についてみずから解説する50分超の講演もノーカットで収録しています。札響の地元FMラジオ局であるAIR-G'(エフエム北海道)開局記念番組のために収録され、同局に保管されていたという今回の音源は、1982年と2017年にその一部がラジオでオンエアされたのみというきわめて貴重なものです。
「札響は私の音楽と最も調和しているオーケストラだ」と語り、後日エッセイを執筆するほどこの公演は武満にとっても特別な意味を持っていました。今回のリリースについて、武満の愛娘であり音楽プロデューサーの武満真樹は「“作曲というのは孤独な作業だ”と父はよく言っていました。だからこそ信頼する岩城宏之さんと札響の皆さんとの新しい音楽作りに大きな喜びを感じていたのでしょう。それは決して出来上がった楽譜を見て良い演奏をする、ということに留まらない、創造的でロマンチックな時間だったのだと思います。作曲家と初演の演奏家たちとの協同作業によって完成した誕生直後の3作品を、40年たった今、皆さんに聴いていただけると知り、父と岩城さんもあの世で思い出話に花を咲かせていることでしょう」とコメントしています。