MonaとHinaの姉妹ふたりによるピアノ連弾ヴォーカル・ユニット
Kitriが、4月にリリースしたアルバム『
Kitrist II』を携え、6月13日に神奈川・Billboard Live YOKOHAMAにて〈Kitri Billboard Live 2021“Kitri & The Bremenz Live”〉を開催しました。
『Kitrist II』は2020年1月リリースの1stアルバム『
Kitrist』に続く2作目のアルバムで、2019年発表のEP2作『
Primo』『
Secondo』然り、彼女たちは“姉妹によるピアノ連弾ユニット”というかたちを大切にしながら、“Kitriでこんな曲をやってみたらどうなるのだろう?”と想像を膨らまし、ふたり以外の音も取り入れて、作品をリリースするごとに表現の幅を広げてきました。
そんな中でも、ステージでの衣装は決まってKitriのキーカラーである赤いワンピースだったり、1曲目にクラシック曲を演奏することなど、ライヴではちょっとしたルーティンがありましたが、この日の第2部は黒色に赤い十字のラインが入ったワンピースに、フワッとしたパーマをかけたヘア・スタイルで登場。『Kitrist II』の収録曲「小さな決心」で幕を開けると、ふたりが口ずさむハーモニーが優しく会場に広がります。
本ライヴは、Kitri初のバンドセットということで、2曲目からは“The Bremenz”と名付けられたメンバーが参加。音源ではアレンジャーとしてもお馴染みのドラマー・
神谷洵平をはじめ、Monaが“大地を感じる音色が魅力的”と太鼓判を押すベーシスト・
千葉広樹、Sax、クラリネット、シンセ、フルートも奏でる副田整歩がこの日のステージに彩を添えます。Hinaは曲ごとにギターやピアニカなどを持ち換え、Monaはピアノ固定と、ライヴを重ねるうちにふたりのポジションも決まってきたようです。
そんな5人で披露した「人間プログラム」では、最初の音合わせでHinaがエレキギターをバイオリン弓で弾いていたのも印象的で、Kitriはピアノ連弾から始まり、打ち込みやストリングスなどを取り入れて挑戦を重ねていますが、サウンドを一気に華やかにするのではなく、その変化を“じっくりと時間をかけて魅せる”ことにも手を抜かず。ライヴでもまるでフルコースを振る舞うように、まずはシンプルなアンサンブルを聴かせることで、曲が始まってからのピアノ、エレキベース、パーカッションの調和の中でキラリと光るエレキギターが存在感を放ちます。
続いて、ふたりがステージでの装いを一新したことにも通ずる「NEW ME」も披露。ダンサブルな曲調がバンド・サウンドにぴったりで、Hinaの高音パートとMonaの低音パートが合わさり、どこか気怠さを帯びて響く歌声の妙が癖になります。「Akari」ではノスタルジックなフルートの音色に魅了され、曲に潜入しきった神谷の絶妙なビートに心を奪われながらも、Kitriのヴォーカルとピアノがしっかりと音の中心にあるのを感じさせます。「未知階段」のドラマチックなピアノ・リフと、ウッドベースのじんわりと広がる深みも相性が良く、ラテン調の「赤い月」が描く情熱と勇敢なさまは今のKitriそのものを表しているかのよう。また、同曲の大サビ前でそれぞれの楽器が違うメロディを弾いていても、全ての音が耳に飛び込んでくるという奏者としての巧みな技術は圧巻です。
その余韻を残しながら聴く「矛盾律」はライヴのたびに最も音の変化を楽しめる曲で、今まではMonaとHinaのふたりで遊びを凝らしていたところ、今回は3人の仲間が加わることでどっしりとした音像が広がり、動物の足音に似たリズムも聴こえて、より壮大なジャングルが目に映るような演奏を聴かせます。
後半の流れも素晴らしく、「Lily」ではドラム、ウッドベース、クラリネットが入るも、どこかささやかなアレンジでピアノ連弾を引き立たせ、次の「青い春」ではMonaが思いきり歌うのに合わせて、その他の楽器も高らかに鳴り、心地良い抑揚を表現。本編のラストにメジャー・デビュー作『Primo』のリード曲「羅針鳥」を披露し「ここからはじめまして」と歌うサビに、これからのKitriへの期待を募らせる締め括りになりました。
Kitriはカヴァーの選曲も意外なものが多く、これまでにも
フラワーカンパニーズの「
深夜高速」、
たまの「
パルテノン銀座通り」と、ジャンルや世代関係なく演奏してきましたが、この日のアンコールでチョイスされたのは
ビートたけしの「TAKESHIの、たかをくくろうか」。趣深いこの曲も哀愁を帯びながらしっとりを歌い上げ、最後はMonaとHinaだけでふたりの生い立ちを綴った「君のアルバム」を演奏しました。
取材: 千々和香苗
Photo: Masatsugu ide