スコットランドの現代作曲家であり、マルチ・インストゥルメンタル奏者のアーランド・クーパー(Erland Cooper)は、ニュー・アルバム『カーヴ・ザ・ルーンズ・ゼン・ビー・コンテント・ウィズ・サイレンス』の1/4インチの音源テープと楽譜とヴァイオリン一挺を、クーパーが育ったオークニー諸島の地中に2021年5月に埋めました。3年後の2024年にこのテープを発掘して、Mercury KXレーベルからアルバムを発売するプロジェクトが進められています。
クーパーはこのところ毎年春と秋にアルバムを発表してきましたが、今年は音楽の代わりに、地図のようなものを発表するとのこと。これを手がかりに、地中の音源テープを探し、見つけた場合、発見者はクーパーとともにアルバムを演奏したり聴いたりできます。また、発見された時点でプロジェクトは終了し、発掘されたテープはリリースされます。
『カーヴ・ザ・ルーンズ・ゼン・ビー・コンテント・ウィズ・サイレンス』は、オークニーの著名な詩人であるジョージ・マッカイ・ブラウンの生誕100周年を記念して、ソロ・ヴァイオリンと弦楽アンサンブルのためにクーパーが作曲した作品で、国際的に高い評価を得ているヴァイオリニスト、ダニエル・ピオロと、英国王立スコットランド音楽院が特別に選抜した室内弦楽団、スタジオ・コレクティブとともに録音。マルタ・サローニ(
ビョーク、
アンナ・メレディス、
ダニエル・エイヴリーのプロデューサー)によってミックス / マスタリングされました。クーパーはテープを3年間地中に埋めることで、作品がどのように自然からの影響を受け、変化し、熟成されるかに関心を寄せています。また、埋められた音源テープ以外のデジタル・ファイルは全て消去されました。
クーパーは今回のプロジェクトについて、「音楽は過小評価されていると感じることが多いです。また、最近ではライヴで演奏ができなくて、埋もれているように感じることもあります。アイディアが生まれたらすぐに共有したいと思うことがよくありますが、この作品を鳥のように飛ばせて独自の場所と時間に着地させたいと思います。この作品には、記念すべき時代の思い出と感謝が込められています」とコメント。このプロセスについて「テープの素材が自然に浸食されて静寂を生み出すかもしれないし、もしくは完璧に保存されるかもしれません。年を経て良くなるかもしれないし、ならないかもしれません。私の作曲が気に入らなくなるかもしれないし、そうならないかもしれません。音や音楽に変化が起きたら、オーケストラのアーティキュレーションとして、新たな楽譜、演奏として再び取り込みます」と説明しています。
Photo by Samuel Davies