ベルリン・フィル・レコーディングスは
ベルリン・フィルと
フランク・ペーター・ツィンマーマンによるヴァイオリン協奏曲を収録する2CD+Blu-rayの『ベートーヴェン、ベルク、バルトーク:ヴァイオリン協奏曲』を発表しました。
収録曲は
ダニエル・ハーディングが指揮を務めた2019年12月録音のベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、
キリル・ペトレンコが指揮を務めた2020年9月録音のベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」、
アラン・ギルバートが指揮を務めた2016年11月録音のバルトーク:ヴァイオリン競争協第1番と第2番。Blu-rayには上記全曲のコンサート映像のほかツィンマーマンがアルバムの背景を語る日本語字幕の付いたインタビュー、全曲の48kHz/24bitハイレゾ音源をステレオと5.1chで収め、さらに、192kHz/24bitの音源をダウンロードするためのURLとパスワードを記したデジタルバウチャーが同梱されています。
ツィンマーマンがベルリン・フィルと初めて共演したのは、1985年のヴァルトビューネにさかのぼります。以来、彼とベルリン・フィルは密接な関係にあり、互いに刺激を与え合ってきました。彼の演奏は、多くの団員、とりわけヴァイオリンセクションのメンバーに強く支持されていると言われます。当盤でも、その厚い信頼関係が高いエネルギーとなって表れています。
2枚組のCDに収録されているのは、
ベートーヴェン、
ベルク、
バルトークの4曲のコンチェルト。まず、ツィンマーマンが「ヴァイオリン協奏曲のエベレスト」と呼ぶベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ですが、彼はこの曲を、2019年にベルリン・フィルで30年ぶりに演奏し、完璧無比な演奏を聴かせました(※収録はすべて実際の演奏会で行なわれています)。共演のダニエル・ハーディングは、ソリストとオケの緊密な連携をとり、作品に寄り添った指揮ぶりをみせています。
2曲目は、1936年に初演されたベルクのヴァイオリン協奏曲。作曲家は、夭逝したマノン・グロピウス(
アルマ・マーラーの娘)へのレクイエムとして「ある天使の思い出に」という副題の付いたヴァイオリン協奏曲を作曲しました。ツィンマーマンの解釈は、十二音技法の作品に潜む深いロマンティシズムを明らかにしたもので、彼自身、首席指揮者のキリル・ペトレンコとの共演・収録を「忘れがたい素晴らしい瞬間」と呼んでいます。
アルバムを締めくくるのは、バルトークの2つのヴァイオリン協奏曲です。ツィンマーマンは、ヴァイオリン界随一のテクニックを持っていますが、演奏至難なこれらの作品では、その力が最大限に発揮されます。意外なことに、彼が両曲をレパートリーに取り入れたのは、比較的遅かったといいます。今回の共演指揮者は、20年以上の親交があるアラン・ギルバート。歓喜に満ちた第1番は、バルトークが当時恋していたヴァイオリニスト、シュテフィ・ゲイエルに捧げられており、第2番は民族性を湛えたドラマチックさと独創的な形式が魅了します。ツィンマーマンは、後者を「もっとも偉大なヴァイオリン協奏曲の3曲中の一つに数えられる」と称賛しています。