ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲チクルスや、作秋に完結した4つの元素「水・風・火・大地」をテーマにしたピアノ・リサイタルシリーズ「
Four Elements」などのプロジェクトに取り組んできたピアニストの
小菅優が、今一番向き合いたい作品を取り上げるピアノ・リサイタルを2022年1月21日(金)に東京・東京オペラシティ コンサートホールで開催します。
当日披露されるのは、
フランクのプレリュード、コラールとフーガ、
武満徹の雨の樹 素描 I、
ドビュッシーの前奏曲集第1巻から「野を渡る風」「西風の見たもの」「沈める寺」と前奏曲集第2巻から「霧」「花火」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 op.13「悲愴」、
シューベルトの幻想曲 ハ長調 D760「さすらい人」。チケットは10月16日(土)に一般発売されます。
[コメント]今回のリサイタルで私は、これまでの2つの大きなプロジェクト、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会と「Four Elements」プロジェクトを顧みつつ、今自分が一番向き合いたい作品を取り上げます。
前半はフランス・パリを中心に活躍したフランクとドビュッシー、そして2人の影響を受けた武満徹、後半はベートーヴェンとシューベルトの転機にあたる、ウィーンで書かれた2つの傑作を演奏します。
フランクは主な作品をすべて晩年に残しましたが、この「プレリュード、コラールとフーガ」は、優れたオルガン奏者だったフランク独特の教会のオルガンの響きと深い感情が結合した大作です。
同じく晩年の集大成ともいえるドビュッシーの前奏曲集から、水、火や風の描写に五感が刺激される作品を選曲しました。そして独自の神秘的な色彩感や音と音の間に魅了され、10代のころから演奏してきた武満徹の「雨の樹 素描」を、彼の敬愛する作曲家たちの作品と共にお届けしたいと思います。
後半はソナタ形式をもとに、27歳のベートーヴェンが自由な構想で書いたソナタ「悲愴」と、シンフォニーの研究を積み重ねていた時期、25歳のシューベルトの「さすらい人幻想曲」を。
両作品は人間の孤独感や内なる叫びがドラマチックに展開し、それぞれ異なった葛藤が現れる傑作です。
これらのソナタやシンフォニーは楽章に分かれつつも一つのストーリーにまとめられ、歌や舞曲など様々な枠の中でそれぞれの役目を果たし、あらゆる心情を表しながら頂点に向かいます。
それはまるで一つの人生のように綴られています。
次のプロジェクトでは、この「ソナタ」というテーマの中で、古典派に限らずバロックから現代まで羽を伸ばし、その多彩で画期的な音楽の真髄を追っていきたいと思います。――小菅 優©Marco Borggreve