第77回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門オープニング作品として選出され、さらに
ケイト・ブランシェットが作品に惚れ込み完成後にもかかわらず、エグゼクティブ・プロデューサーに名乗りを上げたクリストス・ニク監督のデビュー作『林檎とポラロイド』が、3月11日(金)より東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、東京・新宿武蔵野館ほかにて全国順次ロードショー。公開に先駆け、予告篇と場面写真が公開されています。
本作の監督を務めるのは、
リチャード・リンクレイター(『
6才のボクが、大人になるまで。』)や、
ヨルゴス・ランティモス(『
女王陛下のお気に入り』)の助監督を務めていたクリストス・ニク。奇抜なアイデアと人間への優しい眼差し――彼らの持ち味を独自に昇華させ創り上げたデビュー作『林檎とポラロイド』は、ワールドプレミアとなった2020年ヴェネチア国際映画祭で上映されるや、「見事なまでに胸を打つ〈ガーディアン紙〉」「魂のこもった今日性のある映画〈ヴァラエティ誌〉」と、その独創的で普遍的な物語に、絶賛の嵐が巻き起こりました。さらにその評判を耳にしたケイト・ブランシェットは、監督の才能に惚れ込み、エグゼクティブ・プロデューサーとして参加することを熱望し、新たにクレジットされました。監督オリジナル脚本による本作は、哀愁とユーモアが絶妙なバランスで調合され、近未来的な設定ながらも、人肌のような温もりに満ちています。見る者は、主人公の寡黙で物憂げな表情、どこか滑稽で真面目なふるまいに笑い、そして明かされていく過去に胸を熱くするに違いありません。
公開された予告篇は、冒頭から「私は、映画界の新なる才能にふれ、喜びを感じました」というケイト・ブランシェットの賛辞ではじまります。記憶喪失という普通に考えれば一大事が起きたにも関わらず、この世界の患者や医者は飄々とそれに向き合います。記憶をなくす奇病が蔓延した世の中で、主人公の男は病院から薦められた「新しい自分」プログラムに参加することに。「自転車に乗る」「ホラー映画を見る」「仮装パーティで友達を作る」など日々与えられたミッションをこなす主人公の姿は、いたって真剣で真面目なのに、見る者はどこかおかしく感じてしまいます。しかし、男が、同じ治療を受ける仲間と出会いお互いのことを話すうち、親族の迎えがなく身寄りのないことや、ある忘れられない事実が浮かび上がります――。冒頭のケイトの言葉で「哀しみの核を持ち、同時に心をくすぐられる映画」と形容された“哀しみの核”とは、一体何なのか。「哀しい記憶だけ失うことはできませんか?」というキャッチコピーに乗せた、主人公の心の内にある、本当の思いをぜひスクリーンで確かめていただきたいです。
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