サウンドメイキングにおいては、Sawawoの音楽嗜好の核になるものを掘り下げるように、黎明期のイギリスのポスト・ロック周辺(トーク・トークの『Sprit of Eden』期、A.R.ケインの『Sixty Nine』やBark Psychosis等)や、前作以上にプログレッシヴ・ロック(特に『アイランズ』期のキング・クリムゾン)的なものが意識的・無意識的に反映されているようなところから始まり、完成が近づくに連れて、レディオヘッドの『アムニージアック』や『ア・ムーン・シェイプト・プール』、スウェーデンのミュージシャン、スティーナ・ノルデンスタムの『Dynamite』や『People Are Strange』(カヴァー・アルバム)との類似性を感じさせるようになりました。
音の質感はTirzahおよびMicachu(ミカ・レヴィ)の参照に始まり、Slauson Malone、Wool and the Pants等、ジャンルを超えた現代のローファイ感を自分達なりの解釈で導入しています。メンバーとしてプログラミングで参加するRYO NAGAI a.k.a.液晶が全曲のミキシングを手掛け、彼がリスペクトするナイン・インチ・ネイルズ、ノーツイストやラディアンのようなポストパンク、ダブ、エレクトロニカ / IDMの流れを汲んだ、轟音と静寂が同居するサウンドを作り上げました。
できあがった作品はレーベルであるHEADZの繋がりもあるdetune.や、君島大空の作品に通底する変則的な構成やファンタジックな世界観も見せています。メンバーも影響を公言するPeople In The Boxが日本のオルタナ・バンドとしてのスタンスを崩さず確立した、モダンでもある独自のポップ・スタイルに近い空気感を持った、前作以上に唯一無二な音楽性に到達した素晴らしいアルバムとなりました。