9月28日に新録音3曲を収録した35周年ベスト・アルバム『I've Got Soul』（選曲・監修: クリス松村）をリリースしたばかりの鈴木聖美が、デビュー35周年記念ライヴ〈鈴木聖美 35th Anniversary Live I've Got Soul 'Just One Night'〉を、10月2日（日）に埼玉・所沢市民文化センター・アークホールで開催しました。

　杉真理とのデュエット「ウイスキーがお好きでしょ」や鈴木雅之との姉妹デュエット「ロンリー・チャップリン」をはじめ、佐藤善雄、桑野信義らゲスト陣との華やかな共演も交え、全17曲を披露。熱唱・熱演による圧巻のパフォーマンスに、会場は鳴りやまぬ拍手喝采に包まれました。

［ライヴ・レポート］
　10月2日（日）、〈鈴木聖美 35th Anniversary Live I've Got Soul 'Just One Night'〉が所沢市民文化センター・アークホールで行われた。昨年12月に病を克服してステージに復帰、9月28日には新録音3曲を収録したベスト・アルバム『I've Got Soul』（選曲・監修: クリス松村）をリリースし、満を持してのデビュー35周年記念ライヴだ。

　オープニング曲は、今回のベスト・アルバムにも収録された「ひとりでDancin'」。ソウルフルなヴォーカルと“聖美流”とも言うべき歌唱表現は依然健在、しかも発せられるパワーやエネルギーは明らかに強さを増している反面、強さだけでなく柔らかさや穏やかさが共存している。誰もがわずか1曲でヴォーカリストとしての進化を感じたはずだ。第一声から観客の心を捉え、挨拶代わりのMCを挟んで一気に4曲を披露、早くもステージと客席は一体となる。

　5曲目から続々とゲストが登場。まずは杉真理。彼も今年デビュー45周年を迎え、11月に発売予定の作品集CDにも収録される代表的作品「ウイスキーがお好きでしょ」、「Precious Friend」の2曲をコラボレーション。2人の声の波長が絶妙にマッチし、心地よい大人のデュエットとなった。

　続いて、“ファミリー”であるRATS & STARのメンバー佐藤善雄・桑野信義が登場。佐藤と桑野のデュエット曲「夢見る16才」を3人で初共演、およそ半世紀にわたる関係から自然と作り出される極めて息の合ったステージに場内のボルテージも上がったところで、最後のゲスト鈴木雅之が迎えられた。

　期待と注目で空気が一変する。しかしこの姉弟は簡単に期待や想像を超えていく。2人のデュエット・ナンバー「夜明けのスターライト」、「ロンリー・チャップリン」はヴォーカルの圧倒的なクオリティ・2人の存在感・完璧な間合いなど最高峰と言えるパフォーマンスを披露した。また、鈴木姉弟のMCも毎回秀逸だ。特に幼少期の話は今回も会場を大いに楽しませた。そして最後に弟として“姉のデビューにあたって何かプレゼントを”と「ロンリー・チャップリン」を書き下ろしたエピソードも明かした。

　その勢いのままライヴは終盤へ。今回のベスト・アルバムのために新録音した、夫でもある伊賀武氏のギターによるアコースティック・ヴァージョンの「TAXI」とアン・ルイスのカヴァー曲「WOMAN」の2曲を含めた5曲をエピソードも交えながら熱唱、ヴォーカルはますます冴えわたり観客を完全に魅了していた。そして最後の曲は鈴木聖美がデビュー当時の愛と切なさに満ちた親子の想いが描かれた「涙ぐんだ天使」を歌い切りライヴの幕が下りる。

　鳴り止まぬ拍手に導かれ、アンコールはRATS & STARの大ヒット曲「め組のひと」でスタート。鈴木雅之、佐藤善雄、桑野信義による華やかなライヴが繰り広げられ、曲の終わりで鈴木雅之が姉聖美を呼び込む。主役の再登場に大きな拍手が巻き起こる。そして、デビュー曲「シンデレラ・リバティ」（作詞: 三浦百恵、作曲: アン・ルイス）を集まってくれたみんなに感謝の言葉と共に歌い上げ客席は総立ち状態となった。ライヴの最後は杉真理も再登場し、出演者全員で「星の見える草原」を披露し、ステージを締めくくった。

　祝福と感謝の想いに溢れ、主役もゲストも最高のパフォーマンスで全17曲を完走した鈴木聖美デビュー35周年記念ライヴ。この素晴らしい空間を通じて、すべての人が彼女の魂を受け取った（got soul）ことだろう。

　この後は、今年で最後となるソウル・ミュージックの祭典〈SOUL POWER 2022 FINAL〉に出演、11月にはデビュー35周年記念ライヴの続編で桑野信義と共演、ゲストに杉真理を迎えてのステージが決まっている。

写真撮影: 上飯坂一