東京都交響楽団は、創立50周年となる2015年4月より、指揮者の
大野和士を音楽監督として迎えることを発表しました(任期は5年 / 2020年3月末まで)。5月14日に都内で行なわれた記者会見の様子をレポートします。
現在53歳の大野は、これまでベルギー王立歌劇場(モネ劇場)などヨーロッパの歴史ある歌劇場の音楽監督等を歴任、現在はフランス国立リヨン歌劇場首席指揮者として手腕をふるうほか、世界の主要オペラハウスやオーケストラへの客演を続ける、名実ともに日本を代表する指揮者の一人です。
これまでは海外での活躍ぶりを耳にすることが多かった大野が、国内のオーケストラの音楽監督に就任するというニュースは、音楽ファンに大きな驚きと喜びをもたらしました。日本のオーケストラのポストに就く決心をした動機を、大野は会見で以下のように語っています。
「ちょうどこれから、来週の定期演奏会で都響と演奏するブリテンの『戦争レクイエム』のリハーサルがはじまるところですが、私はこの作品の〈アニュス・デイ〉の部分でいつも、20年以上前のクロアチア、ザグレブ・フィル音楽監督時代に目にした戦場の光景を思い出します。そして、2011年3月11日に日本で起きた大震災のことを、重ね合わせるのです。傷ついた祖国に、今、自分は何を成し得るのか? そう考えたときに、祖国のためにより貢献したいという気持ちが芽生えました」 都響とは、大野のプロ・デビューとなった1984年3月の初共演以来、1990〜92年の都響指揮者を経て、近年も定期的な共演を重ね、信頼関係を深めてきました。これからはじまる都響とのパートナーシップについて、大野は意欲的なプロジェクトを語ってくれました。
「音楽監督になることで、都響と深めてきた音楽をまとまった形で日本の皆さんに届けることができます。さらに2015年秋に予定されている都響とのヨーロッパ・ツアーでは、世界に向けて日本文化の最先端を届けていきたいと思います。
今、世界で何が起こっているのか? 世界中で同時進行している表現の最前線を、都響を聴きに来れば分かるようにしたいのです。都響に来れば、いつも何か新しいことが起こっている、というように。
そのためには、これまで以上にさまざまなレパートリーに挑戦していきたい。今生まれたばかりの曲、知られざる名曲、知っておくべき曲をたくさん紹介したいと考えています。そういった曲を集めたコンサートをシリーズ化できるといいかもしれません」
大野の就任挨拶を受け、都響のソロ・コンサートマスターの
矢部達哉は次のように語りました。
「大野さんの音楽監督就任を一番待ち望んでいたのは、間違いなく僕です。今回の就任にあたり、僕は“放蕩息子の帰還”という言葉を思い出しました。でも、たいてい放蕩息子というのは無一文で帰ってくるものですが、大野さんは違う。ヨーロッパでの経験というたくさんの財産を持って、日本へ帰ってきてくれたわけですから(笑)」
大野はこれから都響に、そして日本の音楽シーンに新風を巻き起こしてくれることでしょう。2015年が待ち遠しいです!