Perfume 2019/10/28掲載(Last Update:21/06/07 14:09)
今年9月にメジャー・デビュー15周年、結成20周年のアニバーサリー・イヤーに突入した
Perfumeが、東京・渋谷の新たな文化発信基地として生まれたLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)のこけら落とし公演として、10月16日から正味8日間にわたる〈Reframe 2019〉を開催しました。
通常のPerfumeのライヴと異なり、〈Reframe〉はMCなしでクールに進行する1時間強のノンストップ・ショー。しかも、着席での観覧がマストのため、いつもと勝手が違って戸惑いもあるのか、観客はちょっと緊張した面持ちで開演を待っていました。
〈Reframe〉誕生のきっかけは、エンタテインメントの可能性に照準を当てた「Perfume X TECHNOLOGY」という2017年のNHKの番組企画でした。そこに連動する公演〈This is NIPPONプレミアムシアター『Perfume X TECHNOLOGY』presents “Reframe”〉が行なわれたのが、2018年の3月のこと。演出・振付は
MIKIKO、インタラクションデザインはライゾマティクスが担当。前者はPerfumeのメジャー・デビューからの全振付と演出を、後者は技術面でPerfumeの革新的ライヴを支え続けています。両者ともが〈2016年リオデジャネイロオリンピック〉のフラッグ・ハンドオーバー・セレモニーを成功に導いたキー・パーソンでもあったため、2018年の〈Reframe〉は国内外にて大きな反響を呼びました。
〈Reframe 2019〉は、その同じチームによってさらに進化した最新ヴァージョンというもの。そもそもの〈Reframe〉のテーマは「再構築」。楽曲、音声、ダンス・パフォーマンス、写真、映像といったノーマル素材から、MVやライヴ制作のためライゾマティクスと記録してきたモーションキャプチャーや3Dスキャンといった特殊素材まで、Perfumeがこれまで蓄積してきたさまざまなデータを、最先端の演出アイディアと技術で再構築し、Perfumeの今のストーリーとして見せるというのが大命題で、歴史あるPerfumeだからこそできる〈Reframe〉と言えます。ある意味技術のショーケースでありながら、Perfumeの世界観自体も深みを増していくという、この両軸の進化が成立するのは、Perfume、MIKIKO、ライゾマティクスに、互いへの尊敬と信頼という蓄積があるからです。
Photo: 上山陽介[ライヴ・レポート] 観客が息を飲んで待つ会場。そこに不意に耳障りなマシン・ノイズが鳴り出します。真四角に切り取られたたくさんのサンドストーム画面が現れ、鼓動のような音とリンクしてメンバーの唇、目、手が現れては消える。これまでのあらゆる映像や音声も、超高速でランダムにフラッシュバック。見えたのが錯覚か否か脳が追いつかぬ間に、目の前にはめくるめく〈Reframe〉の世界が広がっていた。
素朴に、あ、面白いなと思ったひとつが「Record」。ステージとリフター上と別々の3箇所に立つメンバーが、一人ひとり生声で「マイクチェック、ワンツー、アー」と言って自己紹介。そして、頭上の「REC」ボタンが点いた順に、流れているリズムのあるタイミングで正確に「ツ」、「タン」、「アー」などと発声する。すると、いわゆるルーパーのように声は録音されどんどん重なっていき、いつしかポリリズムのカオス的サウンドが生まれていた。これは、デジタルとアナログのPerfume的生コラボという意味でも、純粋に音楽的にも興奮したポイントだった。
〈Reframe 2019〉が観客参加型であったことも、特筆すべき点だろう。開催期間中、LINE CUBE SHIBUYAの2階のロビーには「Pose analysis」というブースが置かれ、希望する観客はそこで20秒間の撮影に参加。その服装や動きの解析データが、演出の一部として使われた。そして、ポーズといえば忘れられないのが、人気曲の印象的なワンポーズを、3人が18曲にもわたって生で見せてくれたこと。ああ、そのまま美術館に飾りたいと溜め息が出るほど、生身の3人が創り出すそのポーズはアートなオブジェだった。
後半「FUSION」、「edge」と攻めの曲が続くと、もはや本物かバーチャルか見分けがつかなり、さまざまな種類のバーチャルPerfumeが徐々に人格を帯びるように感じられた。が、やがてそのバーチャルな3人は、どこか知らない宇宙の彼方に落ちていくように消えていく。聞こえてきたのは、3人の声のカットアップで再構築された「キミ」、「ボク」、「ヒカリ」、「印象」、「連続」といった言葉。気づけば薄明かりのステージに本物の3人が立っていた。そして、「無限未来」。暗がりを揺らぐ光と手を取り合うように踊るそのエレガントなダンスに、じっと目を凝らした。
今度はどこからともなく白い帳が降り、そこに蛍のような無数の仄かな光が宿る。やがてそれは揺らめくオーロラに。始まったのは「Dream Land」だった。これを聴くのは2013年の東京ドームのラスト以来ではないだろうか。ディムライトのなか3人は、せつないメロディをひたむきに歌う。ふと、「このわずかな光を、君は光と感じられるかい?」と問いかけられている気がした。それは、テクノロジーと共存してきたPerfumeからのあえてのアンチテーゼのようでもあった。どんなデータの蓄積にも勝るのは、3人の心に蓄積されているけっしてデータにはできないもの。それこそが光なのだ、と、ハッと気づく感動のラストシーン。もしかしたら、そこにすべてを集約するための〈Reframe〉だったのかもしれない。
「過去と深く向き合ってより愛おしく思えるようになりました。みんながそれを受け止めてくれるから、また新しい挑戦ができます」とかしゆか。「結成20周年。どこも否定せず、全部ひっくるめて新しいPerfumeになれてることに喜びを感じてます」とのっち。「テクノロジーを冷たく淋しいものに感じるかもしれないけど、あれも一個一個人間の手でプログラムされたもの。未来はきっと温かいものになっていくと信じていきます」とあ〜ちゃん。3人の近い将来の夢は、日本のファンのみならず海外のファンも足を運びやすくなるような常駐公演だという。8日間の〈Reframe 2019〉は、そこに向けての確かな第一歩となった。 文: 藤井美保