Pot-pourriが、2月5日にリリースした3rdアルバム『
Eraser, Pencil』のリリース・パーティーを3月30日(日)に東京・新大久保のEARTHDOMで開催することが決定。TIGETでのチケット予約も開始しています。
さまざまなジャンルのテイストを織り込みながら、これまでの作品で最もポップな3rdアルバム『Eraser, Pencil』の発売を記念した本公演には、以前より交流があり、2023年にはPot-pourri [SNR]として共演し、アルバムにも参加している北海道在住のシンガー・ソングライター“
滝沢朋恵”が出演。滝沢の東京でのソロ・パフォーマンスは約1年振りとなります。
新大久保のEARTHDOMを舞台に、作り込まれたアルバムの収録曲たちが生演奏でさらに躍動する一夜。あわせて、Pot-pourriとは深い縁のある、批評家 / ライターの伏見瞬による『Eraser, Pencil』の推薦文も公開されています。
[伏見瞬 推薦テキスト] Sawawo君と出会ったのは2011年ごろ。彼は高校生だった。最初はTwitterの相互フォロワーだった。
当時はSpotifyもApple Musicも日本にはなくて、音楽好きは音楽を聴くのに今よりお金をかけていた。その分、みんな熱量が高かった。我先に新しいCDやレコードを買う人や、今はもうないレンタルショップで山ほど借りている人が何人もいた。そういう人の中にSawawo君はいた。当時は、彼をTwitterのアカウント名で呼んでいた(というか今もプライベートではそちらの名前で呼んでいる)。
高校生であるにもかかわらず、Sawawo君はものすごく音楽に詳しかった。一体どこでそんなに知識を得て、どこでそんなに音楽を聴いてきたのか。実際に会った彼は物静かでシャイで戸惑いがちな少年だったけど、情熱ははち切れんばかりだった。加えて、彼は僕と近い趣味を共有していた。あらゆるアンダーグラウンドの音楽に興味を示しつつ、スピッツやL'Arc〜en〜Cielへの愛も示していた。
2014年から2016年にかけて、僕らは一緒にバンドをやっていた。いろいろなアイデアを試し、曲を作り、何度かライヴもした。今聞いてもカッコいいと思う曲も作ったけど、持続していくためのイメージがわかず、活動を止めてしまった。
その後、僕は書き手としての活動をはじめ、Sawawo君はPot-pourriを本格始動した。2017年4月に、大宮のはずれの小さなライヴハウスで、はじめてPot-pourriのライヴを観た。声に加工を加えたりしたりと、色々新しいことを試しているけど、まだうまくいっていないのかなと思った。
今のメンバーのPot-pourriのライヴを観たとき、率直に驚いた。演奏技術の高さと、音楽的アイデアの鋭さ。声とアコースティックギターをリアルタイムでエフェクトさせながら、ベースとドラムが複雑なリズムを確実に刻む。ヘッドホンで繊細な電子音楽(例えばBasic ChannelやFennesz)を聴くときの歓びを、ライヴハウスの空間に転送するような音楽だった。
Pot-pourriはライヴの繊細さとダイナミズムを、少しずつ音源に取りこめるようになったと思う。特に本作『Eraser, Pencil』には、音が目の前で変態していく感覚が、たしかに宿っている。さらに、本作には流れがある。「Paradis」の直角的な8ビートの爽快感は4曲目でなければ表れないし、「Y (Le Printemps encore Mix)」と「Over (and Over)」は連続しなければいけない。この曲順でなければならないという必然がある。
そして、Sawawo君の歌詞が変わった。実直かつエモーショナルになった。自らの恥ずかしさを、露悪的ではない方法で、あらわにするようになった。世界への戸惑いと情熱を、直接感じさせる音と言葉が、そこにはあった。
『Eraser, Pencil』を聴いていたら、思わず僕らの過去と現在のことを考えてしまった。それはきっと、このアルバムが「なんで過去と現在はこの世界に存在しているんだろう?」と首を傾げる、少年のような作品だからだ。話し相手のいない少年は、白い空に向けて問いを繰り返し繰り返す。消しゴムと鉛筆で、消しては書いて。書いては消して。
伏見瞬