桜木紫乃 2020/04/03掲載(Last Update:20/09/23 16:35)
桜木紫乃の代表作を実写映画化した「ホテルローヤル」が、2020年冬に東京・TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー。監督および原作者のコメントが公開されています。
原作は2013年に〈第149回直木賞〉を受賞し、累計発行部数85万部(電子書籍を含む)を超える桜木紫乃の代表作。北海道の湿原に立つラブホテルを舞台に、現在から過去へ時間軸を遡り、ホテルの盛衰とそこを訪れる人々の生と性を、切なくも瑞々しいタッチで描いた七編からなる連作小説で、映画では、原作の持つ静謐な魅力をそのままに、閉塞感のある日常を離れ、ホテルローヤルの扉をひらく男と女、問題を抱える経営者家族・従業員のそれぞれの人生模様をホテルの経営者家族の一人娘・雅代を主軸として繊細に綴られます。
監督は、『
百円の恋』で〈日本アカデミー賞〉をはじめ国内外の各映画賞を総なめにした
武 正晴が務めます。
[コメント]桜木紫乃さんの名作を映画化できるとお話しをいただき5年。ようやく映画が完成でき、ホッとしている。原作を読んで「ホテルローヤル」というホテルそのものを主人公にできないかと妄想した。どうしても釧路で撮らなくてはと考えた。釧路という土地が我々撮影隊に力を与えてくれた。桜木さんが我々のシナリオに自由を与えてくれた。この原作に惚れ込んだ素晴らしいキャストとスタッフが集結して挑んでくれた。僕の敬愛する啄木が、さいはてと呼んだ土地での仕事を僕は一生忘れないだろう。釧路、札幌、北海道の土地のおかげで、唯一無二の映画が創れたと自画自賛している。――監督 武 正晴あの日あの場所にいたかもしれない人を、小説というかたちで裸にしたと傲慢にも信じていたので、映像化のお話をいただいたときは「遠慮なく好きに作ってくださいね」などと言っていた。
しかし新たな姿で目の前に現れた「ホテルローヤル」は、あの日あの場所にいたかもしれない経営者やホテルに集う「家族」の物語となっていた。
正直に言うと映画という表現に書き手の内面を素っ裸にされたような気持ちになった。
脱がせたつもりが脱がされていた――エンドロールで泣いてしまうという失態。悔しかった。――原作 桜木紫乃©桜木紫乃/集英社 ©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会