サザンオールスターズが、10月23日(月・休)に〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA〉最終日に大トリで出演。20万人超の観客、そしてアンコールでは、23日公演に出演した
ヤバイTシャツ屋さん、
ももいろクローバーZ、
緑黄色社会、
Creepy Nuts、
WANIMA、
THE YELLOW MONKEYがステージに出てくるサプライズも交えて、サザンにとって“最後の夏フェス出演”となる伝説の夜を繰り広げました。
〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉への出演は、6年振り3度目(2005年・2018年に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に大トリとして出演)。今年はイベントの25周年を記念して、8月には千葉県千葉市で、9月には茨城県ひたちなか市で、合計10日間の開催。特に、国営ひたち海浜公園での開催は、2019年以来5年振りであり、“ロッキン”の聖地・ひたちなかへの帰還に、サザンオールスターズが華を添える形で、その10日間全ての最終日となる9月23日に大トリを務めました。
今回の出演発表にあたり、大きな話題を呼んだのは今回がサザンにとって“最後の夏フェス出演”であるということ。平均年齢約68歳のサザンオールスターズが夏の野外でライヴをすることの現実と向き合いつつ、後進のミュージシャンに今後の夏フェスの未来を託そうという想いを込めた勇退となります。もちろん、夏フェスに限っての“最後”ではありますが、ホームでもあり、アウェイでもある特別な空間と時間の中で、サザンオールスターズのライヴを見ることができるのは、ラストチャンスに。この決断を受け、事務局からの特別措置として、今回のサザンオールスターズの演奏時間は通常より長く、約100分ほどとなりました。これは〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉としては歴代最長の単独アーティストの演奏時間となりました。
夏を象徴するバンドの“最後の夏フェス出演”ということで、サザンオールスターズの出演日である9月23日は、規定の5万人のキャパシティを大幅に超え、〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉史上最多となる数十万の申し込みがあり、その注目度の高さが窺える結果に。これを受け、この日は、47都道府県332館の映画館で611スクリーンの調整がつき、〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉として史上初のライヴ・ビューイングも実施。国内単独アーティストの夏フェス出演時ライヴ・ビューイングは史上初であるだけでなく、ライヴ・ビューイング史上最大規模&最大動員数記録となり、単日ではサザンオールスターズのライヴ・ビューイングとしても史上最多となり、全席完売。異例づくしのライヴ・ビューイングとなりました。
なお、終演には、サザンオールスターズが披露した楽曲をまとめたプレイリストも公開されています。
[ライヴレポート] 9月23日(月・振休)。1週間前まで、この日のひたちなか市の天気予報は雨だったが、サザンの晴れ舞台を祝うかのように、天気は気温と共にフェス日和に。時刻は17時30分を回り、日が暮れて深いオレンジに空が染まると、ライブ開演を告げるジングルがモニターに流れ始めた。サザンオールスターズ最後の夏フェスを見届けるべく会場に集まった5万人が大歓声をあげると、ステージ上にサポートミュージシャンがにこやかな表情で現れ、続いてサザンオールスターズが登場。大喝采の中、5人がステージ前面に集まり、手を繋ぎ、ラインナップする。これぞ、サザンオールスターズ。飾らず、格好つけるわけでもなく、ただ5人がそこに集まり手を挙げるだけで、会場中に笑顔が満ちる。サザンオールスターズ“最後の夏フェス”の幕が開けた。
オープニングナンバーは、1978年発表のデビューアルバム『熱い胸さわぎ』に収録された「女呼んでブギ」。5万人のクラップと刻む軽快なリズムに乗せて、令和の時代には不適切にもほどがあるギリギリアウト(!?)の歌詞が弾む。サザンらしさ満載の軽妙なこの曲で幕開けを飾ったことが、今日この時間が楽しく幸せな時間になることを確信させる。1曲目の演奏が終わり「こんばんは!ロッキン最終日です。良い天気にしてくれて本当にありがとうございます、みなさん!最後まで残ってくれてありがとう!」と感謝を伝えると「サザンオールスターズです!新曲聴いてください!」と宣言。2曲目に投下したのは最新楽曲「ジャンヌ・ダルクによろしく」だ。オーバードライブのかかったギターがリフを鳴らし、無骨なバンドサウンドが会場の空気を震わせる。46年音楽シーンの第一線に立ち、常に新曲で闘ってきた。新曲を生み出しリスナーに届け、進化し続けることにこだわってきたからこそ、今、このステージがある。バックに背負ったモニターには「SOUTHERN ALL STARS」の文字だけが写し出され、小細工なし、ロック1本で5万人と向き合うその姿は、国民的ロック・バンドたる王者の風格を纏い、間違いなく“夏の魂”が燃えていた。
時代は再びタイムスリップし80年代の名曲が2曲続く。寸分違わず刻まれる原のピアノリフから始まるマイナー調の「My Foreplay Music」で会場を淫靡なムードに包んだかと思いきや、波の音が流れ「海」のイントロが始まると、会場中を爽やかな風が吹き抜ける。ねっとりした情事と甘酸っぱい恋。これほどまでに曲ごとの振れ幅があるアーティストはサザン以外、未だいないのではないだろうか。少し話は逸れるが、「海」を披露したのは、2020年6月25日、コロナ禍に行われた無観客配信ライブ『サザンオールスターズ 特別ライブ2020「Keep Smilin’〜皆さん、ありがとうございます!!〜」』以来4年ぶり。当時、未曾有の疫病が世界を襲い、世の中が暗いムードになっている中で真っ先にサザンが大規模無観客配信ライブを行ったことは記憶に新しい。街中ではマスクすることが義務付けられ、もちろんライブには観客はいない。誰しもが苦境に立たされる中で、一筋の希望を灯したライブだったが、あれから数年が経ち、ROCK IN JAPAN FESTIVALもコロナ以来5年ぶりに同会場での開催に漕ぎつけ、サザンオールスターズのステージでは5万人が一同に集まり、マスクを挟まずに笑顔を見せ合えることができた。この環境は、当たり前のようでいて、当たり前ではない、至高の幸せなのである。
「神の島遥か国」に曲が変わると、一気にムードは湘南から南国へ。陽気なサウンドが会場中を気持ちよく酔わせたかと思いきや、「栄光の男」の哀愁が観客の感情を揺さぶる。その余韻も冷めやらぬうちに「愛の言霊(ことだま)〜Spiritual Message〜」に演奏が移ると、照明で会場が赤く染まり異次元の世界へ。バンドサウンドとホーンセクションが絡み合い妖艶にグルーヴする。鬼気迫る演奏と桑田のラップが重なり、5万人が陶酔する中、息つく間もなく続いたのは、「いとしのエリー」。プログレッシブからソウル・バラードまで、ジャンルを横断して色褪せない大ヒット曲の数々を持つバンドの特異性はさることながら、桑田佳祐の歌唱力に圧倒される。いつの間にかとっぷりと日が暮れ、時折涼しい風が吹き抜ける中、今が最高潮なのではないかと思わせられるソウルフルな歌声に、観客一同が聴き惚れ、感動で涙する。9曲目に披露した「思い過ごしも恋のうち」では、モニターにデビュー初期の頃の本人映像が映し出されるなど、長きにわたる活動を経て今日のステージに辿り着いたことを噛み締める一幕も。
10曲目に入る前に一息をつき、MCで桑田が「楽しんでますか?皆さん、ここに5万人も集まってくれているということで、本当にありがとうございます!長い時間だったと思いますけど、皆さん我々のところで待ってていただいて、ほんとありがたいです。」と感謝を述べ、今日出演した各アーティストについて触れつつ「景気付けにコール&レスポンスを!」と、桑田と5万人の観客が掛け合いをした流れで「東京VICTORY」に突入。ミラーボールが回りだし、幾重に重なる光の線が会場中を明るく照らす。スポーツを盛り上げる応援歌としても人気を博すこの曲だが、この日に限っては〈夢の未来へ space goes round/友よ forever young〉という歌詞がメンバー5人からオーディエンスへ、そしてロッキンへの激励のように響く。サザンと会場の5万人、そしてスクリーン越しの15万人が一体となり「Wow wow」とコール&レスポンスした瞬間は多幸感に溢れる瞬間だった。その幸福感は次なる「真夏の果実」でピークに達する。舞台上の照明がオレンジ色の電球だけになり、シンプルかつミニマムな演出が曲の切なさを引き立てる。ラストサビでは、モニター上に星空の如く光が全面に映し出され、会場全体が自然と一体に。サザンの演奏に包まれ、世界とひとつになる感覚は野外ライブならではの体験だ。
12曲目に披露した「恋のブギウギナイト」は間違いなく今回のライブのハイライトの一つだろう。2024年のサザンの活動を封切りした新曲であり、大反響を呼んだフジテレビ系ドラマ『新宿野戦病院』の主題歌ということもあり、今夏メディアを席巻していたが、ライブで披露されるのは「ジャンヌ・ダルクによろしく」と共に今回が初。イントロが鳴り始めた瞬間に歓声が沸き、ド派手なレーザー、奇妙に光る自動販売機、ロングドレス姿のセクシーダンサー等が登場するなど、カオスなディスコに早変わり。アウトロで「ロッキン最高!!」「今夜はありがとう!!」と言う桑田は、エンジン全開だ。
ここからは怒涛のラッシュだ。「LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜」で大合唱を巻き起こし、「マチルダBABY」「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」で拳を突き上げヒートアップさせると夏フェスお決まりのあの曲へ。曲に入る前のOvertureで「夏フェスは暑すぎて おじいさんとおばあさんは goodbye」「泣かないで渋谷さん みなさんこれからもよろしく」と演歌調に歌い、今年退任したロッキング・オン・グループ元社長/現会長 渋谷陽一氏、そして、夏フェスのバトンを渡した後輩ミュージシャンたちへのメッセージを送り「みんなのうた」へ。5万人が手を振り、もちろんお決まりの桑田による放水も。
本編最後に披露されたのは「マンピーのG★SPOT」。タイトル、歌詞、モニターに映し出される映像の数々への言及はあえて避けるが、「女呼んでブギ」で始めて「マンピーのG★SPOT」で締めくくることのできるアーティストは、未来永劫、世界中を見渡してもサザンしかいないことは間違いない。市井に溢れかえる猥雑さを、時代と共に音楽に昇華したものがポップミュージックであり、エンターテインメントなのである。その極意が散りばめられた圧巻のステージだった。
鳴り止まないアンコールの拍手と歓声に応えて、「今日はありがとう!」と再び戻ってくると2018年に同フェスに出演した際、1曲目に披露した「希望の轍」を繰り出した。老若男女に愛されるこの曲が、オーディエンスの胸を熱くする。サザンオールスターズが歩んできた46年に残る轍は、偉大だ。
そして“最後の夏フェス”で披露した最後の曲は、“すべての始まり”の曲「勝手にシンドバッド」。総勢約40名のサンバダンサーを引き連れ、大合唱が巻き起こる。演奏の終盤には、なんと23日公演に出演した全アーティスト、ヤバイTシャツ屋さん、ももいろクローバーZ、緑黄色社会、Creepy Nuts、WANIMA、THE YELLOW MONKEYがステージに出てくるサプライズも!桑田が、全アーティストの名前を呼びつつ、一緒に間奏のコールアンドレスポンスをする場面は、日本夏フェス史に類を見ない語り継がれるワンシーンになるに違いない。豪華絢爛花火も上がるなど、祝祭感溢れるこれ以上ない空間に。サザンオールスターズの夏フェス最後のパフォーマンスは大熱狂の中、幕を閉じた。実は今回、デビュー曲「勝手にシンドバッド」から最新曲「ジャンヌ・ダルクによろしく」まで、1970年代、80年代、90年代、2000年代、10年代、20年代にそれぞれ発表した楽曲を網羅するセットリストとなっていた。誰しもの人生に、いつも必ずあるのがサザンの音楽だ。日本全国、老若男女、映画館も入れて20万人を越える全ての観客を一人も置いてきぼりにはさせないと言わんばかりの、サザンオールスターズの愛が溢れる100分のステージだった。
桑田は最後のMCで言った。「本当に、大変お騒がせしました。一旦我々、卒業させていただきますけども、本当に若い素晴らしいアーティストたちにこれから頑張っていただいて、今後も素晴らしいこのフェスが、素晴らしくあるように、信じております」。国民的ロック・バンドであるサザンオールスターズから後進の素晴らしいアーティストたちにバトンが渡された、日本音楽史で永遠に語り継がれる名場面が生まれた夜だった。
ただ、あくまで引退したのは“夏フェス”である。今冬にオリジナル・アルバムがリリースされることも発表されているし、最後に「また何処かでお会いしましょう!」と桑田が言ったように、近いうちにまた新たなアナウンスがあることは間違いないだろう。まだまだ、サザンオールスターズは未来へと続いていくー。 撮影:西槇太一