1980年代、多国籍かつ多ジャンルの織り混ざった独自の音楽で一世を風靡した
ペンギン・カフェ・オーケストラ(Penguin Cafe Orchestra)。その創設者
サイモン・ジェフスの遺志を引き継いだ息子アーサーにより、メンバーを一新させたうえで2009年に再始動したグループがペンギン・カフェです。待望の来日ツアーが実現した今回、さる9月28日(日)に行なわれた横須賀公演(来日公演2014最終公演)の模様をレポートします。
幅広い年齢層の人々が詰めかけ、1階〜2階席がほぼ埋まった客席。セットリストより、本公演は2部構成の全20曲で、ペンギン・カフェによる作品とペンギン・カフェ・オーケストラによる作品が同じくらい取り上げられることがわかります。やがて照明が落とされ、観客の視線が舞台へ集中したそのとき、舞台の上手から手を振りつつ小走りでペンギン・カフェのメンバーが現われました。拍手に迎えられるなか各々がポジションにつき、コンサート開幕です。
客席の期待感を一身に背負うオープニングを飾るのは、「Telephone And Rubber Band」。ミニマル的かつ温かみのある音色で、会場を一気にペンギン・カフェの世界へ引き込みます。第2曲「Catania」では、精緻なバランスのうえに成り立っている曲を聴き漏らすまいと、観客も息を殺して集中。第4曲「Swing The Cat」では各メンバーによる速弾きが披露され、メンバー同士で顔を見合わせながらどんどん加速していくさまに、客席から手拍子・拍手とどよめきが上がりました。
ここで上向きだった雰囲気が一変、落ち着いた曲調へ。しっとりとした曲全体を通して持続されるピアノのパターンが耳に残る第5曲「Solaris」と第8曲「Landau」では、アーサー自身が共演を願っていたというペンギン・ダンサーとの世界初共演が実現しました。続く第9曲「Giles Farnaby's Dream」のどこかなつかしく朗らかな響きをもって、第1部は閉幕。
興奮の冷めやらぬまま休憩を挟み、第2部へ。第10曲「彼と彼女のソネット / T'en Va Pas」と第11曲「四季 / Shiki」は、本公演スペシャル・ゲストの
大貫妙子との共演で、元はフランス語の作品を大貫が日本語で書き下ろしたものとのこと。MCにて、大貫は次のように語りました。
「(ペンギン・カフェ・オーケストラの)CDを、自分を含め周りのミュージシャン皆が買っていた。[……]どこのジャンルにも属さない音楽を書くことは難しい。ペンギン・カフェは、パパを引き継いですばらしいバンドになっていると思う」
アーサーの奏でるティン・ホイッスルの印象的な「Odeon」、ヴァイオリンによるピッツィカートの小気味よい「Radio Bemba」を演奏したのち、第14曲「And Yet…」ではペンギン・ダンサーが三たび登場。大きなうねりを感じさせる曲調にあわせ、2羽のペンギンがシンクロした動きで作品を演じます。第16曲では、
Corneliusによる「Bird watching at Inner Forest」をカヴァー。さまざまな楽器で鳥の声がリアルに奏でられました。
ミニマル感の強い「Perpetuum Mobile」、「In the Back of A Taxi」と続いたのち、第19曲「Bean Fields」が始まります。ペンギン・ダンサーがキレのある動きで踊り、観客の手拍子も加わって熱を帯びた公演はクライマックスへ突入。中南米の要素を感じさせる第20曲「Black Hibiscus」がラストを飾ります。曲が終わってからは客席から拍手喝采、スタンディング・オベーションも出るほどの盛り上がりを見せました。
アンコールは豪華3本立て。アーサーのピアノのみで奏でられる「Harry Piers」と、大貫を交えた「ピーター・ラビットとわたし」、そしてペンギン・ダンサーを交えた「Music For A Found Harmonium」です。アンコール後には、ダンサーや振り付け師の紹介や花束の贈呈などが行なわれ、熱狂的な拍手に包まれて公演は幕を閉じました。
※写真提供: プランクトン