米カリフォルニア州オークランドを拠点にするメリル・ガーバスとネイト・ブレナーによるアート・ポップ・デュオ、チューン・ヤーズ(Tune-Yards)が、通算6作目となる新作アルバム『Better Dreaming』を5月16日(金)に「4AD」よりリリース。あわせて、先行シングル「Limelight」がミュージック・ビデオとともに公開されています。
「Limelight」で、ファンキーなグルーヴと高揚感に満ちたメロディに乗せて歌われるのは、来るべき解放と自由な未来に向けた希望や、家族の絆というテーマ。
ジョージ・クリントンの曲に合わせて、家族でダンスをしていたことから生まれた同曲は、3歳になった2人の子供の歌声や笑い声も聴こえてきます。
メリル・ガーバスは「世界中でいくつものジェノサイドが起きて、特に子供達が大きな影響を受けている中で“子供達は大丈夫”なんて歌うのは、あまりにも安易に思えた。でも、この曲を聴いた人々が次々とポジティブな反応を示し、特にうちの子が気に入ってくれたから、収録することにしたの。“自由になろう”なんて私が言っていいのか...。でも、ファニー・ルー・ヘイマーが言ったように『誰もが自由にならない限り、誰も自由ではない』の。私自身も一括りに、その一部であると自覚するのは、脆さを伴うけれど、きっと重要な事なんだと思う」と語っています。
新作アルバム『Better Dreaming』では、ダンサブルな作品を連発してきたチューン・ヤーズ史上、最もスムースでファンキー、そしてダイレクトなポップ・ミュージックを展開。同時に、シルキーで時にソウルフルに歌われる歌詞は痛烈で、社会問題に真摯に向き合い、世界の暗闇と常に格闘してきた彼女らの楽曲で踊ることは、心の奥底に深く沈んでいた膿を、汗と共に流し出す機会になるとも言えます。
本作は、自由な発想をもとに、動きを感じさせる音楽、耳に届いた瞬間に体を揺らし、関節を緩ませるような音楽を追求して制作されました。COVID-19による隔離生活やライヴの中断を経て、音楽に身を委ねることの重要性を再認識した事に加え、2人が子宝にも恵まれ、育児を経験した事も、本作に大きな影響を与えたとのこと。楽曲群には、音楽を作る喜びに満ちあふれた2人の姿が映し出され、アルバムの随所には子供の愛らしい声が散りばめらている仕上がりに。
また、ガーバスのドラムループやリズム構築を基盤とした生々しい質感は、初期の『Bird-Brains』や『
WHOKILL』を彷彿とさせ、フルドラムキットを使わずに、よりミニマルなアプローチを取ったことで、ネイト・ブレナーによるタイトでクセになるベースが際立ち、全体のグルーヴに洗練された新鮮さをもたらしています。本作『Better Dreaming』は、チューン・ヤーズの2人が持つ豊かな個性が絶妙に絡み合い、楽観的とは違う、エネルギッシュな肯定が生んだ、至極のアートポップ・アルバムとなっています。
Photo by Shervin Lainez