クリスティアン・ティーレマンを指揮に迎え、元旦にオーストリア・ウィーンのムジークフェラインザールで行なわれた
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートから、「ブルックナー:カドリーユ WAB 121」「ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ『美しく青きドナウ』作品314」「ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲」の3曲が1月5日に先行デジタル・リリースされました。アルバム全曲は1月12日(金)に配信予定。輸入盤CDは1月19日(金)、国内盤
CDは1月24日(水)、国内盤Blu-rayは2月14日(水)発売。そのほか、輸入盤のDVD、Blu-ray、LPも発売されます。
2019年以来、2度目の出演となったティーレマンが指揮する今年のニューイヤー・コンサートは全世界90ヵ国で中継(一部の国では録画放送)され、地元オーストリアではテレビの視聴率が60%に達しました。日本では地震関連のニュースのため放送時間が変更され、NHK Eテレでは1月6日(土)14時から、NHK-FMでは1月8日(月・祝)16時から放送されます。
今年のニューイヤー・コンサートでは、ティーレマン自身が年末の記者会見で述べた「ここ数年で強化されたウィーン・フィルとの絆と大きくなった相互の信頼関係」を強く感じさせる、息の合った華やかな演奏が繰り広げられました。毎年注目される初登場曲は、公式演目15曲のうち9曲。初登場曲の目玉は、2024年に生誕200年を迎えている
ブルックナーの作品で、リンツ時代に作曲したピアノ曲にヨーゼフ・ランナー協会のヴォルフガング・デルナーがオーケストレーションを施した「カドリーユ」でした。ニューイヤー・コンサートでブルックナーの作品が取り上げられるのはこれが初めて。ティーレマンといえばブルックナーの交響曲を十八番とする巨匠であり、昨年10月にはウィーン・フィルとの共演で交響曲11曲を収めた全集録音をソニークラシカルから発表したばかり。シンフォニスト・ブルックナーとは思えないチャーミングな作品にも、指揮者・オーケストラと作曲者との親和性が息づいていました。
また
ヨハン・シュトラウス2世の遺作「イシュル・ワルツ」は、風光明媚なリゾート地として知られ、ヨハン2世も含む名士たちがこぞって訪れたバート・イシュルが、今年の「欧州文化首都」に選ばれていることにちなんで取り上げられました。またウィーンの上水道開設(1873年)を機に作曲されたエドゥアルト・シュトラウスのワルツ「山の湧水」は、地球規模の課題である環境保護の重要性を訴えるべく演目に組まれ、ウィーン・フィルからオーストリア・アルプス協会の環境保護プロジェクトに10万ユーロが寄付されたことが発表されています。
ウィーン・フィルとゆかりの深い
ヘルメスベルガー2世のバレエ曲「イベリアの真珠」の間奏曲「学生音楽隊のポルカ」は、その前の「新ピチカート・ポルカ」とともに、ニューイヤー・コンサートの選曲時にティーレマンが「ピチカートの入った曲を演奏しよう」という希望を受けて選ばれたものです。
アンコールは人気のポルカ・シュネル「騎手」のあと、定番の「美しく青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」。前者の演奏前にはティーレマンがいつもより長めのスピーチを行ない、後者では客席が一丸となった拍手をティーレマンが巧みにコントロールして、華やかにコンサートを締めくくりました。また同時にヨハン2世の生誕200年アニバーサリーとなる2025年のニューイヤー・コンサートの指揮者がリッカルド・ムーティであることも発表されました。
[アンコール時のスピーチ]戦争や不寛容によって引き裂かれた世界はとても不愉快なものです。本日、皆様が聴いておられるとても美しい音楽は、人々の気持ちを変えてくれるでしょう。時には感傷的で、時には大げさなくらい感情を際立たせた、素晴らしく変化に富んだこれらの音楽について、皆様がそれぞれの思いを抱かれておられると思います。それらについてどう考えるか、何を望むかは、すべて皆さんひとりひとりに委ねられています。それでもこのホールにいるほとんどの人の考えや望みは一致していると思います。それゆえに、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と私はみなさまにこうして新年のご挨拶を申し上げます:あけましておめでとうございます。――クリスティアン・ティーレマン©Heinz Peter Bader