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和楽器バンド、活動休止前ラストとなるファイナル公演で魅せた10年の集大成と8人の未来

和楽器バンド   2024/12/12 12:48掲載
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和楽器バンド、活動休止前ラストとなるファイナル公演で魅せた10年の集大成と8人の未来
 伝統的な和楽器をロック・サウンドと融合させ、文字通り唯一無二の存在感で国内外のファンを魅了し続けている和楽器バンド。2024年12月末日をもって無期限の活動休止を発表している中、12月10日に活動休止前ラストとなる公演を東京ガーデンシアターで開催しました。

 11月22日に東京・LINE CUBU SHIBUYAより開幕した〈和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS 〜八奏ノ音〜〉のファイナルであり、デビュー10周年の1年を掛けてファンへの感謝を届けてきた日々の終着点となりました。

[ライヴ・レポート]
 「Overture〜八奏ノ音〜」に乗せて一人ずつ登場し、スポットライトの下でファンの歓声を一身に浴びるメンバーたち。黒流(和太鼓)、山葵(Drum)、亜沙(Bass)、蜷川べに(津軽三味線)、神永大輔(尺八)、いぶくろ聖志(箏)、町屋(Guitar&Vocal)、最後に鈴華ゆう子(Vocal)が姿を現して8人が揃うと、黒流が「和楽器バンドのライブへようこそ!ファイナルだ!」とシャウト。10月にリリースしたベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』でも幕開けを飾っている「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」からスタートすると、「オイオイ!」という力強い掛け声をファンも上げ、早々に一体感が場内を満たしていく。かと思えば、「生命のアリア」ではしっとりとした美しいメロディーに酔わせ、圧巻の歌唱と緻密な演奏で射抜き、その場に立ち尽くさせてしまう。ベストアルバム収録曲をほぼ網羅しつつ、この日披露したのは全28曲というフルボリューム。ベストアルバム制作時に募ったファンの要望を参考にしながらセットリストを組み、10年の歴史を彩ってきた多彩な楽曲たちを次々と披露して行った。

 鈴華は序盤のMCで、「今日は皆にとっても特別な日だと思います。遠くからも今日のために会いに来てくださった方もたくさんいらっしゃるんじゃないかと思います。私たちにとっても特別な日になると思います。この日に立ち会ってくださってありがとうございます!」と足を運んでくれたファンを慮り、「(日本武道館と形状が似ていることから)“大忘年会”のような気持ちで盛り上がって行きたい」と決意を語り、「地球最後の告白を」が始まると悲鳴のような歓喜の声が場内に響き、歌唱、演奏共に凄まじいパワーを放っていく。背後には地球、海、夕空など壮大なスケール感の映像が映し出され、相乗効果を生んでいた。曲の世界に惹き込んだ後、MCではリラックスしたムードで、このツアーで恒例だった「10年でいちばん○○なこと」をお題としたトークを展開。神永は「いちばん思い出深いのが、日本武道館でライブをした時。尺八の先生を二人ご招待したんです」と語り始め、ステージで動き回る自身の演奏スタイルを認めてもらえた、というエピソードを披露。先生のうちお一人は人間国宝になられたそうで、「なかなかないですよ、人間国宝がロックバンドのライブを観に来るって」と笑った。蜷川は、ファンクラブでバンジージャンプを体験したのをきっかけに、「(商業用バンジージャンプとしては)世界一高いマカオタワーから飛び降りた」と驚きの経験を披露。亜沙は、「10年でいちばん良かったライブって何だろう?と考えていたんですけど、今日ですね。今日、いちばんいいライブにします」と誓った。

 鈴華の呼び掛けで、スマートフォンのライトをファンが点灯させて揺らし、幻想的な白い光が輝く中で届けたのは、和の情緒溢れるバラード「月下美人」。無色透明の繊細な花弁が開いていく儚げな映像を背に、エモーショナルな歌と演奏を繰り広げていく8人。余韻に浸る間もなく、スポットライトを浴びた町屋が怒涛のスラップでギターを鳴らし始め、太鼓を携えた黒流が前へ出てくると、対峙する2人がバトルするように演奏。その真ん中に狐の面を付けた鈴華が現れ、剣を振るった(「遠野物語九四」)。曲が「遠野物語五五」に切り替わると、黒流は後方で煽り、白鷺(いぶくろ監修の文化箏)を手にしたいぶくろが前へ出てきて町屋と向き合い、鈴華が羽衣のような布を揺らめかせながら二人の間を彷徨った。亜沙と山葵が加わって、能面を付けた町屋と3人で「知恵の果実」を高速でプレイし圧倒すると、神永が合流して「焔」へ。ヘッドバンギングしながら神永は尺八を吹き、亜沙もアグレッシヴなベースプレイを聴かせる。すると蜷川がセンターに登場し、神永と並んでヘッドバンギング。果てしなく昂っていく、黒流と山葵の掻き回し。音が途切れた瞬間、どよめきのような大歓声が響いた。メンバーそれぞれの存在感と実力をひしひしと感じ、そんなメンバーが揃っている和楽器バンドの底知れなさを思い知る、インストゥルメンタルの表現だった。

 撮影OKという表示がスクリーンに出て、「The Beast」を披露した後は、再び「10年でいちばん○○」を尋ねていくMCへ。町屋は「皆さんのイメージからすると僕は音源担当っぽいので」と音源をテーマに語り、「最高だったアルバムは、今回のベストアルバムにしたいと思います。特に『細雪(Re-Recording)』のリアレンジはすごく難しかったですけど……」と語るとファンからは大きな拍手が起きる。「リレコーディングできたのは、僕の中で、初期に消化できなかった気持ちを今年消化できたので、とてもいいレコーディングでした」と笑顔を見せた。山葵は「10年間でいちばん印象に残ったライブは、初めての武道館。が!今日そのナンバー1を更新すると思います!」と力強く語った。いぶくろは、序盤は黒流をイジって笑いを取りながらも、「和楽器バンドを通して、人生にとって“いい”と思った人たちと集まれることが10年間でいちばんうれしいこと」と熱くコメント。黒流は「年齢を公開したいと思います。52歳です!(※『ライブレポートの人も、書いていい』とステージ上で許可していたので)3歳から太鼓を叩いているので、芸歴49年です!」と発表。「年齢を言い訳にしちゃダメ。全然行けるから皆頑張ろう!」と力説、その信念をパワフルな和太鼓演奏で貫いていた。

 ツインボーカルがポイントとなる楽曲群を切れ目なく、勢いよく連打していった4曲の流れも鮮やかだった。「Perfect Blue」「シンクロニシティ」「チルドレンレコード」では鈴華と町屋が歌い繋いだりハモったりユニゾンしたり、多種多様なバリエーションのツインボーカルを披露。「吉原ラメント」では鈴華が差す和傘の下で亜沙とデュエットする場面が印象的で、最後の鈴華のロングハイトーンの後、蜷川の三味線ソロで盛り上がりがピークに達すると、掻き回しの後音が止まった瞬間、地鳴りのようなどよめきが起きた。その熱をなだめるように、スローバラード「細雪 (Re-Recording)」を届ける流れも美しく、最後のいぶくろの奏でた粒立った箏の音色に聴き入った。「いろんな曲が生み出されましたね。ロックもバラードも、ジャンル=和楽器バンドになってしまう。愛してくださってありがとうございます」と鈴華はこれまでの10年に感謝しながら、「曲は残っていくので、これからも愛してほしい」と今後への願いを語り、同時に「明日もライブがあるような気がする」とまだ活動休止を現実と思えない様子も見せた。

 黒流と山葵が一騎打ちする「ドラム和太鼓バトル〜幾千ノ言霊〜」で二人は、渾身の力でスティックを振り下ろしては魂の音を鳴らし続け、舌戦も繰り広げていく。光るスティックの演出では、2人の描く軌跡の違いがハッキリと分かり、タイプの異なる打楽器奏者二人が共存する和楽器バンドの個性をここでも改めて実感。そして何より、「もっと!」とファンの声を繰り返し求めては、場内の一体感をぐんぐんと高めていくエンターテイナーぶりに感動するのだった。6人が再合流すると、三本締めから「起死回生 (Re-Recording)」をスタート。タオル回しの説明が鈴華と町屋からあって、「雪影ぼうし」へ。鈴華自らプロペラのように勢いよくタオルを回し、歌いながらファンを煽っていく。

 「皆の想いを一つに込めた、この曲を聴いてください」と鈴華が叫び、「八奏絵巻」を絢爛な和柄の巻物と海に浮かぶ月をコラージュした美しい映像を背に届けた。本編ラストは、和楽器バンドの名刺のような曲として愛され続けて来た「千本桜 (Re-Recording)」を披露。全ての力を出し尽くし、ステージに置いていこうとするような、決死の歌であり、演奏だと感じた。

 メンバーがステージを去ると、すぐにアンコールを求める声が起き、「暁ノ糸」をファンが合唱し始めた。それに応えて8人は再登場、メンバーから一言ずつ挨拶があった。以下、抜粋してお届けする。

 蜷川は涙ながらに「出会って11年やってきたんですけど、戦友であり、親友であり、いかなる時も一緒に戦ってきたな、と思う。どんな状況の時も、8人がステージに立ったら、和楽器バンドという一つの目的のために、言葉は無くても分かり合えた。そういう素敵な出会いを与えてくださった皆さんに感謝したい」とコメント。町屋は、「簡潔にまとめますね。詳しくは後日編集後記的なものをしっかり書かせていただきます」と断ってから、「僕らと出会ってくれて、僕たちの音楽に出逢ってくれて、どうもありがとうございます」と述べた。

 神永は、この本番中に起きたマイクトラブルを振り返り、スタッフさんの対応力、メンバーのカバー力を讃え、「一生、“あなたのバンドは何ですか?”といわれたら、“和楽器バンドだ”って言える。尺八という変な楽器と変な人間を迎え入れてくれて、感謝しています」と語った。亜沙は、「今日も演奏してきて、すごいいいバンドだなって改めて思います。分不相応なものをこのバンドにはいろいろ与えてもらったような気がします。けど、俺たちは8人で一人前なんだと思います。足りないところがあるから、こうやってバンドをやって音楽業界で闘ってこられたと思います」と語り、ファンへの感謝で締め括った。

 山葵は、「今日が自分の中で思い出に残る大切なライブとなりました。10年前は売れないミュージシャンだった僕が、こうして応援してくださる皆さんと支えてくれるスタッフさんによってここまで大きくなれて。皆さんのお陰で生かされてきたんだなと思います。間違いなく言えるのは、この10年間、与えてくださる皆さんのお陰で僕の人生は成り立った。ここまで一緒に駆け抜けてくださってありがとうございました」とコメント。

 いぶくろは「僕にとって、和楽器バンドは大きな成長のきっかけ、飛躍のきっかけとなったバンド。人生にとってなくてはならない時間だった。メンバーもそうなんだけど、こんな平日の夜に皆さんも集まってくれて、同じ時間を共有してくれている皆さんを仲間だと思っているので、うれしい10年の締め括りになったと思っています。10年間ありがとうございます」と述べた。黒流「まさか52歳だとはね……(笑)」と自虐(!?)しながら、「とにかく今日、こうやって集まってくださった皆さん、全世界から今日応援してくださってる方たくさんいますので、感謝を伝えたいと思います。ありがとうございました!」と締め括った。

 ここでまずは、鈴華から「アンコールを頂きましたので、まずは皆と一つになるこの曲」との紹介から、「暁ノ糸」を届けた。8人の放つ音がすべてクリアに聴こえ、真っ直ぐに届いてくる。スクリーンに映るメンバーの表情からも、内から溢れ出る想いが伝わってくるように感じられた。鈴華の「次の曲も皆で声出して行こう」という呼び掛けから、「星月夜」へ雪崩込むと、黒流の「騒ぐぞ!」というシャウトでファンの突き上げるペンライトの動きは勢い付いていく。シンガロングが響き、どよめきと歓声、大拍手の中で曲を終えると、鈴華は「皆さん、本当にありがとうございます!」と挨拶。「皆さんの笑顔に包まれながら、本当に今日がラストなのかな?って。ずっと悲しくて寂しくて、頭では今日って分かっているのに、10年間一緒にいすぎて、明日も続くんじゃないか?って。あまりに当たり前で……。後から追い掛けてくるんだと思う。亜沙も言ってましたけど、私たち8人で一人前なんです。世の中にはたくさんの音楽が溢れているのに、見つけてくれてありがとう。和楽器バンドの音楽は生き続けます」とファンに語り掛けた。

 和楽器バンドの未来について、鈴華は「アベンジャーズのそれぞれのヒーローの物語の続きがある。皆さんの目でそれぞれのヒーロー物語の続きを見届けてほしい。これからも音楽の世界で生きていくので見守ってほしい」とも語り、更に「メンバーに一言だけ伝えさせてほしい」と付け加えた。「唯一の女子メンバーが、べにで良かった。亜沙さんがいるだけで和楽器バンドの8人のバランスが整い本当に重要な存在でした、ベースが亜沙でよかったです。山葵は、いざという時空気を変えるムードメーカー。大さん(神永)は右を見ればあなたが必ずいて、精神的な支えでした。そして聖志、いつも前向きにしてくれてありがとう!黒流さんはいつもかわいがってくれて、いつも“鈴華ゆう子”でいることができました。まっちー(町屋)があの日話し掛けてくれなかったら、和楽器バンドは生まれなかった。怖いお兄さんかと思ったら(笑)、話すと穏やかで心底信頼しています。あなたの才能を10年間和楽器バンドに捧げてくれてありがとう」(以上、抜粋)。熱くメンバーへの想いを語った鈴華に、町屋が「ゆう子が7人をまとめあげてくれた。ありがとう」と代表して感謝を述べた。改めて鈴華は「この8人だからできた、と思っています。あなたの時間を捧げてくれて、10年間本当にありがとうございました!」と深く頭を下げた。

 「最後に一曲、今日のこの光景が、私たちの人生を支えてくれると思います。最後に一つになりましょう!」と呼び掛けて、この10年間支えてくれた人々への感謝の気持ちを封じ込めた大切な曲「GIFT」を届けた。笑顔で歌いながら、鈴華は客席を右から左まですーっと指を動かして差し示しながら、一人一人に語り掛けるように前傾姿勢になる。終盤で銀テープが噴出し、ファンの頭上で煌めいた光景は美しく、居合わせた一人一人の生涯心に残る場面となるだろう。何度も感謝の言葉を述べながら、名残惜しそうにしながらステージを去って行った。山葵がTシャツを脱ぎガッツポーズすると、背中には「またね」と書かれており、ファンは大歓声。全28曲約3時間に及ぶライブは幕を閉じた。

 ラストライブという特別な一夜に、一体どのような気持ちでメンバー、そして足を運んだファンは臨んだのか。想像するだけで切なさに胸が締め付けられるが、ステージ上のメンバーは、最後まで和楽器バンドの音楽そのものに没入し、完璧なパフォーマンスを届けることに集中しているように見えた。終盤のMCでこそ涙があり、ごく自然に感極まった表情を浮かべていたことに感動したものの、いわゆるお涙頂戴の演出は皆無だったことに、8人の和楽器バンドに対する真の誇りを感じたのだった。だからこそ、これで一旦終わりとも信じられないような、不思議な心持ちでライブの余韻を味わっている。間違いなく言えるのは、ファンへの感謝、メンバー間の互いへのリスペクトに溢れた、エモーショナルな活動休止前のラストライブだったということ。それぞれの歩みをこれからも見守っていきたい。


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取材・文: 大前多恵
写真: KEIKO TANABE / 上溝恭香


〈和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS 〜八奏ノ音〜〉ファイナル公演
2024年12月10日(火) 開場16:30 / 開演17:30
東京ガーデンシアター

[セットリスト]
M01. Overture〜八奏ノ音〜
M02. 六兆年と一夜物語(Re-Recording)
M03. Valkyrie-戦乙女-
M04. 生命のアリア
M05. 雨のち感情論(Re-Recording)
M06. Starlight (I vs I ver.)
M07. 地球最後の告白を
M08. 月下美人
M09. 遠野物語九四
M10. 遠野物語五五
M11. 知恵の果実
M12. 焔
M13. The Beast
M14. Perfect Blue
M15. シンクロニシティ
M16. チルドレンレコード
M17. 吉原ラメント
M18. 細雪(Re-Recording)
M19. 華火(Re-Recording)
M20. 情景エフェクター
M21. ドラム和太鼓バトル〜幾千ノ音魂〜
M22. 起死回生(Re-Recording)
M23. 雪影ぼうし
M24. 八奏絵巻
M25. 千本桜(Re-Recording)

ENCORE
EN01. 暁ノ糸
EN02. 星月夜
EN03. GIFT


和楽器バンド『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
配信: wgb.lnk.to/thanks_digital
CD: wgb.lnk.to/2024_al_cd
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