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没後1年・八代亜紀が歌謡界の頂点に立つまでの軌跡を収めた歌唱集がヒット中

八代亜紀   2024/12/30 11:22掲載
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没後1年・八代亜紀が歌謡界の頂点に立つまでの軌跡を収めた歌唱集がヒット中
 昨年12月に亡くなった歌手・八代亜紀がNHKの音楽番組に出演した映像が収められたDVD&CD『八代亜紀 プレミア歌唱集』(DVD2枚 + CD1枚)が、12月4日(水)に発売されています。

 今作は、1973年に初出場した『第24回 NHK 紅白歌合戦』(なみだ恋)をはじめ、1981年までに放送された『ビッグショー』『NHK歌謡ホール』といったNHKの音楽番組に出演した56曲にも及ぶ八代亜紀の歌唱映像を収録。「おんな港町」「舟唄」「雨の慕情」などの大ヒット曲を熱唱する若き日の八代亜紀が鮮明に蘇ります。

[コラム]
 2023年12月30日に八代亜紀が天に召されてから1年。“人生100年時代”と言われるなか、73歳の旅立ちはあまりに早く、その訃報が各方面に衝撃と喪失感を与えたことは記憶に新しい。

 歌手としてはもちろん、画家や俳優としても活躍した八代は刑務所慰問や被災地支援、故郷の地域活性化など、社会貢献活動にも積極的に取り組み、優しく朗らかな人柄が慕われていた。没後に熊本県から「県民栄誉賞」、八代市から「名誉市民」の称号を贈られ、2024年3月に開催された「お別れの会」に3000人が参列したのは故人の人徳を示すものと言えよう。

 その八代がテイチクに在籍していた初期10年間の映像と音源をDVD2枚とCD1枚にコンパイルした『八代亜紀 プレミア歌唱集』が12月4日に発売された。DVDには『紅白歌合戦』『ビッグショー』『歌謡ホール』など、いずれも初商品化となるNHKの映像を多数収録。CDには出世作の「なみだ恋」(1973年)から、日本レコード大賞を受賞した「雨の慕情」(1980年)まで、キャリアを代表する12曲が網羅されている。

 ブックレットには蔵出しの写真も掲載されており、「亜紀ちゃんに、もう一度逢いたい」と願うファンにとってはたまらない企画。訃報が伝えられたあと、各局でその功績を偲ぶ追悼番組が放送されたが、八代が「舟唄」(1979年)と「雨の慕情」で名実ともに“歌謡界の女王”となるまでの軌跡を歌唱映像とオリジナル音源で辿る今回のBOXは決定版ともいえる内容で、オリコンの週間ミュージックDVDランキングで19位に初登場したのも頷ける充実度だ。

 唯一無二の歌声でリスナーを魅了し続けた八代亜紀は1950年8月、熊本県八代郡(現・八代市)に生まれた。幼い頃から歌が好きで、12歳のとき、米国のジャズ歌手、ジュリー・ロンドンのレコードを聴いてクラブ歌手を志したという。それまでは自身のハスキーな声にコンプレックスを抱いていたが、ナイトクラブ出身のジュリーのハスキーボイスに魅せられたからだ。

 中学を卒業した八代は地元でバスガイドをしたのち16歳で上京。音楽の基礎を学びつつ、銀座のクラブで歌い始め、その歌声が評判となる。当初の目標どおり、クラブ歌手として歌い続ける道もあったが、周囲の勧めもあって1971年に「愛は死んでも」でレコードデビュー。プロ歌手も参加できるオーディション番組『全日本歌謡選手権』(よみうりテレビ)で10週連続勝ち抜きのグランドチャンピオンとなったことで注目を浴び、4作目のシングル「なみだ恋」がミリオンセラーとなった。

 今回の『プレミア歌唱集』には初出場を果たした紅白歌合戦で「なみだ恋」を歌う貴重映像も収められているが、一躍全国区のスターとなった八代はその後もヒットを連発。「もう一度逢いたい」(1976年)や、紅白歌合戦でトリを務めた「おんな港町」(1977年)ではリズムに乗った演歌で新ジャンルを開拓し、トラックの運転手からも絶大な支持を獲得する。菅原文太主演の映画『トラック野郎・度胸一番星』(1977年)に女性トラッカー役で出演したり、全国に八代の顔を観音様に見立てたデコトラが出現したりしたのはその頃のことだ。

 音楽祭で最も権威のある日本レコード大賞には1973年から8年連続で出場し、歌唱賞を4回、金賞を3回、最優秀歌唱賞を2回受賞。1980年には「雨の慕情」で念願の大賞を獲得した。筆者は生前の八代に2回、取材をしたことがあるが、そのうち1回はレコード大賞に関するインタビューで、受賞時の映像を観ながら話を聞いた。

 「雨の慕情」については「軽く歌っていていい感じですね。この歌は軽く歌った方が言葉が生きて、切なさが増すんです」と語っていたことが印象に残っているが、かねがね「歌手としては表現者というより代弁者でありたい」と表明していた彼女らしいコメントだった。感情を込め過ぎずにサラッと歌った方が、歌の世界観が聴き手に伝わることを熟知していたのだろう。だからこそ広く愛される国民的な歌手に登りつめることができたわけだ。

 もう1つの取材はキャリア初の男歌「舟唄」で八代に新境地をもたらした作詞家・阿久悠に関するものだったが、そのときも終始楽しげに「舟唄」が生まれた背景や、恩人・阿久との知られざるエピソードを聞かせてくれた。大御所にありがちな近寄りがたいムードなど一切なく、輝くばかりの笑顔と明るい語り口で人を惹きつける魅力を湛えていた。それだけに突然の訃報は筆者にとっても大きな悲しみであった。

 それから1年。命日の12月30日に放送される『第66回輝く!日本レコード大賞』(TBS系)では八代に特別功労賞が授与される。紅白歌合戦やレコード大賞の大舞台で幾度も名唱を披露してきた歌謡界の女王には何よりのはなむけ。その歌声はこれからも人々を魅了し続けていくことだろう。


――濱口英樹 

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■2024年12月4日(水)発売
『八代亜紀 プレミア歌唱集』
www.teichiku.co.jp/catalog/teichiku/2024/TEBS-11127.html
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