今年はトム・クルーズやパリス・ヒルトン、ヘイデン・クリステンセンが受賞して話題となったラジー賞。“その年の最低な映画や俳優に贈られる”と認知されていますが、ホントにホントにそれだけなのでしょうか? その実態について、CDJournal.com的考察をまとめてみました。
映画賞といえばハリウッドの大作映画が中心にノミネートされるアカデミー賞や、その前哨戦と称されるゴールデン・グローブ賞、ミニ・シアター系映画ファンの注目を集めるカンヌ映画祭やベルリン映画祭など多々あれど、その年の最低な映画や俳優に贈られるゴールデン・ラズベリー賞(通称ラジー賞)は唯一“不名誉な受賞”とされています。
毎年アカデミー賞の前夜にハリウッドのホテルにて行なわれるラジー賞は、ハリウッドの映画マニアであるジョン・ウィルソンが考案し、1980年に始まったもので、“ゴールデンラズベリー賞財団”によって決定される賞。“裏アカデミー”などと揶揄され、過去に30回ノミネート、10回受賞という“ラジーの申し子”と言っても過言ではない
シルベスター・スタローンや、ことある事に果敢に“女優”にチャレンジしては見事玉砕、もしくは華麗なあだ花を咲かせている
マドンナなどがまさに古株の常連アーティスト。
近年では世界の
“叶姉妹”こと
パリス・ヒルトン(姉)やジャッカス・ファミリーとの交際が真実か否か気になりすぎる
ジェシカ・シンプソン(もちろん妹の
アシュリーもノミネート!)などスキャンダラスな皆様が華麗にノミネートし、世界のゴシッピィたちを楽しませてくれています。
やはり注目はその“レッド・カーペット”。残念ながらわざわざ不名誉なラジー像をアカデミー前夜に受け取りに訪れる余裕のあるセレブは数少なく、基本的には受賞者の“赤の他人”に授与しているそうですが、過去に
ビル・コスビー(1988年最低主演男優賞受賞)、96年にほとんどの部門を総なめした
『ショー・ガール』の
ポール・ヴァーホーヴェン監督、02年に5部門を独占した
トム・グリーン、そして
『キャット・ウーマン』で最低女優に選ばれたハル・ベリーが登場しました。中でも
ハル・ベリーは黒人女性初の受賞を果した上に、自らが
『チョコレート』でオスカーを手にした際のスピーチを“セルフ・カヴァー”したことで不名誉な受賞を一転、セレブリティとしての格をあっさり底上げしてしまいました。
ラジー賞が人々の注目を集め続ける要因として、ただ単純に大根役者や無能な監督を選んでいるのではなく「うっかりと駄作に関わってしまった大物」をおちょくるシニカルな側面や、最低続編/リメイク賞のように近年ハリウッドにはびこる安易な続編/リメイク企画に警鐘を鳴らす映画ファンの本音をストレートに反映した部門を設立していることなども挙げられます。本年の主演男優賞を
『デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!?』の続編(日本未公開)で受賞した
ロブ・シュナイダーはラジー賞のある種の象徴と言っても良いでしょう。ご存知ない方にもイメージしやすいように日本で例えるならばまさに“Vシネマの帝王”こと
竹内力兄貴と並べても遜色ない俳優です。ロブのように、コツコツと好事家のハートをわしづかみにするアメリカンなお馬鹿コメディ映画に登場しつづける怪優が選ばれる事もファンにはたまらない魅力でもあります。
また、主宰者のジョン・ウィルソンによるラジー賞受賞作品をまとめた
The Official Razzie Movie Guideは、ラジーな映画のガイド・ブックとしても、シニカルでクールな、笑える悪口読本としても楽しめ、オススメです。
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