そのネーミングとは対照的に、九州発の鋭いロックンロール・バンドを指す“めんたいロック”。豚骨のかぐわしき香りとともに、その華麗なる軌跡について、CDJournal.com的考察をまとめてみました。
とんこつラーメン、白くま、薩摩揚げ、とらふぐ、博多通りもん、ひよ子、辛子蓮根、一文字ぐるぐる……。名物の種類は数あれど、九州といえばやはり“めんたいこ”! そして単に「九州発」というだけで名づけられてしまったジャンルといえば、皆さんご存知“めんたいロック(めんたいビート)”! 他の地方にはない独自性と攻撃的なカッコ良さ、口に運べば運ぶほどにお腹が空いてくる魔法のツブツブが持つ魅力(「飯の友」)を音楽という形で世間へと広めたその功績たるや(嘘)!今新たに注目を浴びようとしているムーヴメント“めんたいロック”の軌跡を辿ってみました。(写真はTHE SEXY PISTONSの1stミニ・アルバム『よかろうもん』)
時は1970年前半。“日本のリヴァプール”とも称された博多を中心に、ザ・ローリング・ストーンズに端を発し、パブロック、R&B、ブルース、初期パンクやモッズ・サウンドといった、ブリティッシュ・ビート文化を受け継いだバンドが続出していた九州音楽シーン。田舎者(
山部善次郎(山善)が在籍)、
サンハウス(柴山“菊”俊之(
Zi:LiE-YA)/
鮎川誠(
シーナ&ザ・ロケッツ)在籍)、開戦前夜(
森山達也(
THE MODS)在籍)、ハキハキシスターズ(穴井貴恵(THE MARQUEES)在籍)、シューティング・スター(
陣内孝則(
TH eROCKERS)、北里晃一(THE MODS)在籍)、MODERN DOLLZ(苣木寛之/
梶原雅裕(THE MODS)在籍)……などなど、後にビッグなバンドを築き上げる豪華なアーティストが活動をスタートさせたのもこの時期。
無論、この流れは博多のみにとどまらず、久留米にはリンドン(伊藤カオル(
チューリップ)、田中伸昭(
THE BADGE)在籍)、アップル・トゥリー(
石橋凌(
ARB)在籍)、北九州にはバラ族(
大江慎也/
池畑潤二(
THE ROOSTERS)在籍)らがいたことも忘れてはいけない事実かと。THE MODSのデビュー25周年記念トリビュート
『THE MODS TRIBUTE SO WHAT!! Vol.2』の顔ぶれをみれば、今に繋がるその影響力の濃さは歴然。地方から全国区へ躍り出た、男臭さと硬派なオーラに満ち溢れる“健康優良不良音楽”とはまさにこのこと。
そんな歴史を振り返れば振り返るほど、ムクムクと沸いてくる違和感。「略して! めんたいロック!」と小堺一機ばりにシャウトしてみても、ホカホカご飯の上にこんもり乗った姿が浮かんでしまう“めんたい”の4文字。ステージ上ではセックス、ドラッグ、ロックンロール! なんて言っていても、ご飯も食べればトイレにも行く、ただの人なんだよ……というおばあちゃんの格言がそこには隠されているような気がしてなりません(妄想)。まもなく復活ライヴDVDがリリースされる
スワンキーズをはじめ、
GAI/
CONFUSE/
LAST CHILD/
アグレッシヴ・ドッグスといったKINGS WORLD系バンドや、SIEG HAILにSTATE CHILDRENなど、今や世界的なハードコア/ノイズ・コアの聖地として有名になっている九州。忘れることのないよう、お手元の地図帳に“九州(めんたい)”としっかり刻んでおきましょう。
地方色豊かな“めんたい〜”とは対照的に、なんとも都会的なニュアンスをかもし出すネーミングといえば“東京ロッカーズ”。1978年頃の東京を舞台に『NO NEW YORK』直結のアート・パンクなバンド(
フリクション、
Mr.Kite、
リザード、
MIRRORS)が集まっていたS-KENスタジオでのシリーズ・ギグを由来とするムーヴメント。そのものズバリなコンピ盤
『東京ロッカーズ』や、実録映画『ロッカーズ』は親を質に入れてでも体験すべき衝撃X!
映画『ロッカーズ』にも出演している
SSをはじめ(ステージ衣装は揃いのカンフー・ルック!)、
町田町蔵(現・町田康)/林直人(
アウシュヴィッツ)が在籍した
INU、ALCHEMY RECORDS主宰者・
JOJO広重率いる
非常階段、ALTERNATIVE TENTACLESからのリリースも驚きだった
ウルトラ・ビデらが巻き起こしたのが“関西ノー・ウェーヴ”。
ボアダムスしかり、
ZUINOSINや
あふりらんぽを輩出した“関西ゼロ世代”しかり、いつの世も突飛なサウンドを送り出してきた関西シーンの原点がここに。
浪花ソウル&ブルース、沖縄ハードロック、宮ビリー(宮古島+ロカビリー)、富山ロカビリー、湘南サウンド、広島フォーク村、KCHC(柏シティー・ハードコア)、老舗レーベルMCR COMPANYによってリリースされているローカル・コンピ・シリーズ(名古屋/京都/札幌/横須賀/三多摩/静岡/新潟/高知/横浜/宇都宮など)……などなど、民謡だけじゃありません! 日本各地に散らばる“ご当地音楽”の数々。観光名所の名前がデカデカ印刷されたペナント&ちょうちんをぶらさげて、必死の形相で貴方のお住まいの町を探してみてはいかが。気分はもう『探検ぼくのまち』!もしくは『八つ墓村』!
[[ こちらもお薦め! ]]シーナ・アンド・ザ・ロケッツの鮎川誠が語り下ろした60年代ロックの歴史。
『'60sロック自伝』 好評発売中!R&Rの歴史をリアル・タイムで体験し、人生をロック一筋に賭けた鮎川誠が、個人的回想と共に、'60sロックの恐るべき魅力と謎を解明!
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