出題したつもりはなくとも、いつの間にやら回答が! 不思議な不思議な音楽業界のキーワード「アンサー・ソング」。この生態について、CDJournal.com的考察をまとめてみました。
「質問に対して答える」……。従来のQ&A形式には収まりきらない「アンサー」の可能性を表現しつつある音楽シーンのキーワード“アンサー・ソング”。自らの創作意欲に火をつけた楽曲/現象について、「答える」というよりは「応える」?アンサー・ソングの数々をご紹介いたします。
日本国内でのアンサー・ソングの歴史を紐解くべく、時間を遡ること数十年。“元祖”として音楽史に軌跡を残しているのが、森あきよ「ドラネコのゴーゴー」。1969年にダブル・ミリオンという売り上げを達成した大ヒット曲、
皆川おさむ「黒猫のタンゴ」のアンサー・ソングです。黒猫がドラネコへ/タンゴがゴーゴーへ、B面には「黒猫のタンゴ」のカヴァーも収録!と、単なるパクりとは訳が違う二匹目のどじょうソング。「ブームに乗る」という意味もアンサーには含まれるようでして。
ヒップホップ・シーンに見られる
「disに対する回答」なるハーコーな姿勢とは異なり、ヒット曲からのインフルエンスを如実に表現した「ドラネコのゴーゴー」。そんな姿勢を2004年に見事受け継いだのが、
スーパーベルズ 「かいじ101号」。『タモリ倶楽部』内「タモリ電車倶楽部」への出演も待たれるメンバー・野月貴弘の鉄道ファンぶりが遺憾なく発揮された歌詞はもちろん、カップリングには「あずさ2号」のカヴァーも搭載され、本家に対するリスペクトが伝わってきます。ジャケット(写真)も必見!
過去に自分が発表した楽曲に対し、その後のストーリーを展開させる「自問自答」スタイルもアンサー・ソングの一種。いつの間にやら中学生! 大人への階段を上っていく孫へのエールを込めた、
大泉逸郎 「孫も大きくなりました」(←「孫」)、ライヴでは続けて演奏されることも多い、
DREAMS COME TRUE「朝日の洗礼」(←「決戦は金曜日」/アルバム
『DIAMOND 15』収録)、同じメロディでその後の恋愛模様を描いた、
安室奈美恵「Nobody」(←「White Light」/シングル
「Baby Don't Cry」収録)……など、ファンにはたまらない作品も。
また、結婚を前に控えた男性の“亭主関白”メッセージ・ソング、
さだまさし「関白宣言」では、自ら「関白失脚」とどうにも弱気なアンサーをしてしまった例にも注目したいところ。(共に
ベスト盤に収録)
近年大きな話題を集める「カヴァー」「トリビュート」といったキーワードも、もちろんある意味「アンサー」。オリジナルへの自分なりの解釈を、歌詞/サウンドに込めて発表する“アンサー・ソング”。こっそりと大人の事情が盛り込まれていようとも?音楽シーンを彩る話題のひとつには違いありません! 今後ともご注目を。
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