70年代後半、NYアンダーグラウンド・シーンで発生した“アート・パンク”ムーヴメント“NO WAVE”。70年代後半〜80年代のポストパンク・シーンとそこから多大な影響を受けたアーティストの証言を集め、検証したドキュメンタリー映画『KILL YOUR IDOLS』のDVDリリースや、シーンのカリスマ的存在、ジェイムス・チャンスの再来日公演(6月13日/渋さ知らズ大オーケストラにゲストとして出演)を控え、CDJournal.comが“NO WAVE”とその影響を受けたバンドたちをご紹介します。
すべてがここからスタートした、ともいえるNO WAVEムーヴメントが世に知られたきっかけとなったアルバムが、
ブライアン・イーノ(
ロキシー・ミュージックほか)がプロデュースしたアルバム
『NO NEW YORK』(78年)。
ジェイムス・チャンス&コントレーションズ、
リディア・ランチが在籍した
ティーンエイジ・ジーザス&ジャークス、D.N.A(
アート・リンゼイ、
イクエ・モリ在籍)、
マーク・カニンガムの
マーズ、これら4バンドが参加、70年代パンクの影響を特に精神面で強く受けながらも、その影響からもかけ離れた音楽性/表現に驚かされ、初めて“ポスト・パンク”という言葉で語られた名盤です。
また、当時をうかがうことができる音源として、『NO NEW YORK』以外にもZE RECORDSより79年から83年のリリース音源をリマスター/コンパイルした
『NEW YORK NO WAVE』もオススメ。当時ニューヨークでいちはやくパンクに触れていたフランス人Rosa Yemen(
リズィー・メルシエ=デクルー)やコントーションズも収録されています。これらの音源を聴いてもわかるように“NO WAVE”とカテゴライズされるバンドは特にファンク、ジャズ、パンクといった音楽スタイルからの影響を受けていると語られることが多いのですが、映画
『KILL YOUR IDOLS』劇中でリディア・ランチが「過去を参考にしなかった」と語り、アート・リンゼイが「(自分たちは)ミュージシャンではない」とはっきりとコメントしていることでもわかるようにアート指向も強く、音楽的なテクニックが重要視されることは少なく、パフォーマンス性の強い当時のオルタナティヴな表現でした。(写真左/『NO NEW YORK』 写真右/『NEW YORK NO WAVE』)
映画では、“第二世代”とでも呼ぶべき80年代ニューヨーク・アンダーグラウンド・シーンから世に出たノイズ・ロック・バンドたち……
ソニック・ユース(
サーストン・ムーアと
リー・ラナルド)、マイケル・ギラ(
スワンズ)、
フィータスらのインタビューを収録。彼らが体験した“NO WAVE”を振り返っています。その後本編では“第三世代”ともいえる若い世代、
ストロークスや
ヤー・ヤー・ヤーズ、
ライアーズといった2000年代のニューヨーク・シーンを象徴するバンドも紹介し、いまだに大きな“NO WAVE”の影響力がわかるはずです。(写真はソニック・ユースの
『Confusion Is Sex』)
映画では触れられることはありませんでしたが、80年代当時日本では“USジャンク”との言葉で紹介されていたミッシング・ファウンデーション(MISSING FOUNDATION/のちに
Disassociate<ディサソシエイト>にMF在籍メンバーが参加)や、NYからシカゴに飛び火した
スティーヴ・アルビニの
ビッグ・ブラックも“NO WAVE”の影響を感じさせる“第二世代”のバンドと呼べます。さらにスワンズ中期のドラマー、テッド・パーソンズは、
プロング、
ゴッドフレッシュのメンバーとして活躍。彼らのパンク/ノイズ/インダストリアル的なアプローチは90年代に
ヘルメットや
アンセインといったバンドへと派生し、受け継がれたともいえるのではないでしょうか。さらにティーンエイジ・ジーザス&ジャークスにも参加していたレックが日本に“NO WAVE"をもたらし、
フリクション、
Aunt Sally(アーント・サリー/
Phewが在籍) といった東京ロッカーズ/パス・レコード周辺のバンドもお忘れなく。
これらのバンドはソニック・ユースに代表されるいわゆるオルタナティヴ・ミュージックが市民権を得た今では、“アンダーグラウンド”という意味において、より精神性を受け継いだ生粋の“NO WAVE”バンドとも呼べるかもしれませんね。(写真はMISSING FOUNDATIONの2nd
『1933 Your House Is Mine』(88年))■監督
S.A.クレーリーのインタビューが掲載された本誌CDジャーナル3月号は
こちら■「
渋さ知らズ大オーケストラ」ゲスト:ジェイムス・チャンス
2007/6/13(水) 渋谷 C.C. Lemon ホール(渋谷公会堂)
18:00開場 18:45開演
前売 S席4,800円 A席4,300円(税込)
プランクトン、
チケットぴあ、イープラス、ローソンチケットにて発売中
お問い合わせ:プランクトン 03-3498-2881
※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。