リサーチ

ルックバック〜4月21日 首都ブラジリアが誕生

2025/04/21掲載
はてなブックマークに追加
ブラジルの首都ブラジリアやブラジルの文化について、面白い映画があったらおしえてください。
 65年前の1960年4月21日、ブラジルの首都がリオデジャネイロからブラジル中部の標高1000メートル以上の高原地帯にあるブラジリアに遷都が行なわれました。首都移転計画自体は18世紀のポルトガル植民地時代からあったようですが、1955年より首都移転に着手。翌年に大統領に就任したジュセリーノ・クビチェックによって、1960年に実行に移されました。

 ブラジリアへの遷都は、ポルトガルの影響を非常に強く受けていた旧首都・リオデジャネイロに替わって、多民族から構成されているブラジルとしての国民国家のシンボルとなるような都市を建設することと、リオデジャネイロやサンパウロをはじめ、沿岸部に集中している人口を内陸部に分散させ、ブラジルの総面積の約4分の1(日本の5.5倍)を占める“ブラジルのサバンナ”といわれるカンポ・セラード(低木草原地帯)の土地改良による農業振興を主な目的とし、特に農業振興においては、日本人移住者が活躍。半世紀以上が経ち、人口においては、サンパウロ、リオデジャネイロに次いで国内3位の309万都市(2021年)となり、経済や教育、文化などさまざまな面で発展をたどっています。

 そんなブラジリアへ遷都した頃のブラジルや、ブラジルの文化を舞台にした作品をいくつか紹介していきましょう。

 まずは、1964年に公開された映画『リオの男』(写真)。仏を代表する俳優のジャン=ポール・ベルモンド、妹のカトリーヌ・ドヌーヴをはじめ俳優一家に育ったフランソワーズ・ドルレアックが出演したフランス / イタリアのアクション・コメディです。ベルモンド扮する見習航空兵がドルレアック扮する婚約者が住むパリに休暇で滞在している間、婚約者の父らがブラジルから持ってきた古代文明の像が盗まれる事件が発生。婚約者も誘拐されてしまい、それを必死に追走するうちにリオデジャネイロや未来的都市と謳われたブラジリアまでを飛び回る姿を滑稽に描きます。ここでは建設途中のビルが点在する遷都まもないブラジリアの風景が登場します。

 続いては、2019年よりNetflixで配信されているブラジルのドラマ長編『ビューティフル・シングス:人生にボサノヴァを』。サンパウロから移住してきたものの、夫に財産を持ち逃げされた若い女性が、ミュージシャンと恋に落ち、ライヴハウスを作ろうとする……というストーリーで、ブラジリアを直接的に描いたわけではありませんが、ちょうどブラジリアへの遷都が行なわれる1960年前後のリオデジャネイロの文化や社会情勢がみてとれます。当時は1958年にジョアン・ジルベルトが歌った「想いあふれて」(Chega de Saudade:シェーガ・ジ・サウダージ)のヒットにより、ちょうどボサ・ノヴァが台頭した頃。作品のタイトルの原題の「Coisa Mais Linda」は、ボサ・ノヴァの代表曲「イパネマの娘」の歌詞に由来しています。

 同じく2019年よりNetflixで配信されているのが『ブラジル 消えゆく民主主義』というドキュメンタリー。硬派な政治ドキュメンタリーゆえ、気軽に楽しめる作品ではないかもしれませんが、史実と個人的な回想を織り交ぜながら、ブラジリアに遷都後に起こった1964年のクーデターによる軍事政権以降のブラジル史を、大統領の盛衰をたどりながら、政治的な観点を中心に描いていきます。2019年のサンダンス映画祭ではワールドプレミアを受賞し、翌年の米アカデミー賞では長編ドキュメンタリー賞にノミネートされました。

 ブラジルを代表する音楽“ボサ・ノヴァ”とラテンアメリカの光と影を、ブラジル音楽の伝説的ピアニストのテノーリオ・ジュニオルをテーマに描いたのが、2023年製作のアニメーション映画『ボサノヴァ〜撃たれたピアニスト』。50年代末からブラジルの音楽やカルチャーの歴史を変えたボサ・ノヴァについて調べるためにリオデジャネイロへやってきたジャーナリストが、テノーリオ・ジュニオルの足跡をたどっていくドキュメンタリーです。アカデミー外国語映画賞受賞作『ベルエポック』のフェルナンド・トルエバ監督とハビエル・マリスカル監督が共同監督を務めた本作は、4月11日(金)より公開されています。

 最後は、別な観点からの“ブラジル”映画を。英コメディ・グループ“モンティ・パイソン”のメンバー、テリー・ギリアムが監督を務めた『未来世紀ブラジル』。ある未来のある都市の情報省が、テロの容疑者の名前をワープロで打ち込む際、一匹のハエがワープロに侵入したことで誤植を生み、容疑者とは無関係の人物が連行されてしまうことから始まるという、情報統制がなされた“20世紀のどこかの国”の暗黒社会をテーマにした映画で、タイトルから一見想起されるブラジルについての作品ではありません。

 そのタイトルは、本作が全編にわたって、邦題で「ブラジルの水彩画」、原題は「Aquarela do Brasil」、英語圏では「Brazil」の名で知られるサンバが使われていることにちなんでいます。「ブラジル」は、1939年にブラジルの作曲家 / ピアニストのアリ・バホーゾが手掛けたブラジルの有名曲のひとつ。1939年の発表当初はふるいませんでしたが、ブラジルでは1942年、アメリカでは翌年に公開されたディズニー映画『ラテン・アメリカの旅』にて同曲がオウムのキャラクター、ホセ・キャリオカが生まれるシーンなどで使われると一躍名を広め、アメリカのラジオ局では100万回以上流された最初のブラジルの歌となりました。
 
 「ブラジル」はリオオリンピックの開会式で使われたほか、日本では東京スカパラダイスオーケストラによるカヴァーがビールのCMで起用されるなど、CMや番組BGMで耳にすることも多いのではないでしょうか。軽快でさわやかな歌いやすいメロディもあって、サッカーJリーグの多くのクラブのサポーターが歌うチャントにも採用されています。
最新リサーチ
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 突如あらわれた驚異の才能! 10代の集大成となる1stフル・アルバム Meg Bonus[特集] 嘘の本屋 リアル異変探しゲーム「嘘の本屋」
[インタビュー] TSUMUZI 5拍子の魅力に取りつかれた男の新作は、これまでのリズム研究の集大成[インタビュー] みやけん×ヒビキpiano 「二刀流」vs 「超テクニック」人気のピアノ男子対談!
[インタビュー] 佐野元春 自身の名曲群を“再定義”した 最新アルバム『HAYABUSA JET I』[インタビュー] ヒロイックニューシネマ “誰かのヒーローになる” 新体制となって初の全国流通アルバム完成
[インタビュー] エクスペリメンタルHip HopユニットDry Echoes 4年ぶりとなる2ndアルバム完成[インタビュー] 三浦文彰 清水和音 『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集』を発表 全曲演奏会の最終回を東京と大阪で開催
[インタビュー] のん (映画『私にふさわしいホテル』)[インタビュー] 角野隼斗 イメージ・キャラクターを務める「ベスト・クラシック100極」のコンピレーション・アルバムを選曲・監修
[インタビュー] 色々な十字架 話題の“90年代ヴィジュアル系リヴァイヴァル”バンド 待望のセカンド・アルバムをリリース[インタビュー] アシックスジャパンによるショートドラマ 主題歌は注目のSSW、友成空
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015