アース・ウインド&ファイアーのリーダー、
モーリス・ホワイトが2月3日に逝去しました。彼らのコンセプトは独特の世界観で構成されており、日本人イラストレーターの長岡秀星による神秘的なアルバム・ジャケットや、メンバーが宇宙空間を思わせる背景で歌い踊る「Let's Groove」のPVなど、単なる“ディスコに咲いた徒花”として片付けられない魅力があります。
アース・ウインド&ファイアーようなヴィジュアル・コンセプトは“アフロ・フューチャリズム”と呼ばれます。“アフロ・フューチャリズム”とはミュージシャンに限らず一部の黒人アーティストが表現する宇宙思想。この思想はアフリカという精神的な故郷を失った黒人が「宇宙人に連れ去られた」「本来は宇宙出身だ」と自らの生活や文化のルーツを宇宙に求めたため、黒人のユートピア思想とも強く関係があります。“アフロ・フューチャリズム”では宇宙や未来と同様にピラミッドやファラオといった、エジプト文明もモチーフになっています。
“アフロ・フューチャリズム”の代表的なミュージシャンとして1950年代後半から“土星出身”を公言しファラオの衣装を纏ったジャズ・ミュージシャンの
サン・ラ、ライヴに宇宙船が登場し、アルバムで壮大なスペース・オペラを展開させたパーラメントをはじめとするP-FUNK一派が挙げられるほか、
アフリカ・バンバータや
ジェフ・ミルズらも宇宙を意識した作品を発表しています。いずれも音楽史に名を刻む錚々たるアーティストですが、そのなかでもアース・ウインド&ファイアーは大衆性と“アフロ・フューチャリズム”の創造性を両立できた数少ないグループではないでしょうか。
写真は、1976年リリースのアース・ウインド&ファイアの『スピリット』 ※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。