“オスカー”の名でも知られているアメリカ映画の祭典、アカデミー賞。これまで、名誉外国語映画賞に
黒澤明監督作の『
羅生門』が選ばれたのをはじめ、作曲賞に『
ラストエンペラー』の
坂本龍一、長編アニメ賞に
宮崎駿監督作の『
千と千尋の神隠し』『
君たちはどう生きるか』、外国語映画賞に
滝田洋二郎監督作の『
おくりびと』 、国際長編映画賞に
濱口竜介監督作の『
ドライブ・マイ・カー』のほか、衣装デザイン賞、科学技術賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、視覚効果賞などの各賞にて、多くの日本人が受賞してきました。
そのなかで“演者”として受賞を果たしたのが、
ナンシー梅木です。
マーロン・ブランドが主演し、
高美以子(たか・みいこ)も出演した
ジョシュア・ローガン監督のアメリカ恋愛映画『
サヨナラ』でハリウッド・デビューを果たすと、翌1958年3月26日に行なわれた第30回アカデミー賞にて助演女優賞を受賞。これは、日本人および東洋人の俳優として初となるアカデミー賞受賞で、アメリカとイギリス以外の俳優が助演女優賞を受賞したのも初という快挙となりました。
日本人演者では、アカデミー賞助演男優賞に
早川雪洲(『
戦場にかける橋』)、マコ岩松(『
砲艦サンパブロ』)、
渡辺謙(『
ラスト サムライ』)、
ノリユキ・“パット”・モリタ(森田則之)(『
ベスト・キッド』)、同助演女優賞に
菊地凛子(『
バベル』)がそれぞれノミネートされていますが、受賞者はナンシー梅木が唯一となります。
ナンシー梅木は、ジャス・シンガーとしてキャリアをスタート。戦後、舞台でジャスを歌っている際に、アメリカの国民的漫画『ナンシーちゃん』の主人公ナンシーに似ていることから、アメリカ兵からしきりに“ナンシー”と呼ばれたことがきっかけで、芸名に採用。ジャズ・バンドでヴォーカルを務めるなど、1950年代における日本のジャズ・シンガーの草分け的存在として人気を博し、ミュージカル映画にも出演しました。渡米後はミヨシ・ウメキとしてアルバムを発表。ブロードウェイ・ミュージカル『フラワー・ドラム・ソング』や映画『忘れえぬ慕情』、TVドラマ『エディの素敵なパパ』などに出演し、トニー賞やゴールデン・グローブ賞にもノミネートされるなど、大いに活躍しました。
なお、アカデミー賞において、日本人としてはこれまで、同監督賞に
勅使河原宏(『
砂の女』)、黒澤明(『
乱』)、濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)の3名がノミネート。同作品賞には『ドライブ・マイ・カー』を手掛けた映画プロデューサーの
山本晃久がノミネートされ、現時点でアカデミー作品賞にノミネートされた唯一の日本人となっています。
(写真は、2009年5月リリースのナンシー梅木の全米デビュー・アルバム『
ナンシー梅木・シングズ・アメリカン・ソングズ・イン・ジャパニーズ』)