ビーフといえば牛肉! キン肉スグルのみならずとも“吉野家”の並たまごが恋しい昨今、輸入再開の報を聞けど……と連想する平和な日本人には想像するだに恐ろしい“BEEF(ビーフ)”とは、“中傷合戦”や“揉め事”を意味するスラングでもあります。ヒップホップの世界にはびこる抗争や中傷合戦についてCDJournal.com的考察をまとめてみました。
ヒップホップ史上最大、かつ最悪だった“ビーフ”はいわゆる「東西抗争」で、1990年代から東海岸(イーストコースト:NY中心)を代表するラッパー、
パフ・ダディや
ノトーリアス・B.I.G.を擁するレーベル、バッド・ボーイ・エンターテインメント(Bad Boy Entertainment)と、西海岸(ウエストコースト:LA中心)を代表する
スヌープ・ドッグ、
2パックらが所属するデス・ロウ・レーベルとの関係が悪化。その対立を大きな本流として、アメリカの東西間で“舌戦”が繰り広げられました。ラッパー以外にもギャングをも巻き込んだ暴行事件や襲撃事件、はたまた発砲事件などに発展、最終的には2パック、ノトーリアスB.I.Gという才能あふれる二人のラッパーを、それぞれ銃撃事件で失いました。(写真は2パックのデス・ロウ時代のベスト
『モア・ベスト・ワークス・オン・デス・ロウ』)近日発売されるDVD
『2PAC&Notorious BIG/Welcome to the Hood』(HMBU-1015\3,990(税込) 8/25発売)はこの二人の軌跡を辿り、全26曲のミュージック・ビデオを収録。友人、親族、関係者にこの二人の間に起こったことを紐解こうとインタビューを敢行した作品は注目です。
ヒップホップ・カルチャーは本来、ストリートで発生していたキッズやギャングたちのケンカで不要な血を流さないために、暴力の代わりにブレイク・ダンスやラップの優劣で競いあった事がその発端。
エミネムの自伝映画
『8マイルズ』に収められているマイク・バトルが如く、身も心もプライドもすべてを賭けた男と男の真剣勝負なのです。“G-ファンク”の中心人物
ドクター・ドレの尽力などで、現在では命を落とすような大きな抗争は起こっていませんが、個人間の中傷は日常的に起こっています。
最近では
エリカ・バドゥをめぐる
コモンとアンドレ(
アウトキャスト)、
NASと
JAY-Z、
ネリーと
KRS-One、
ザ・ゲームと
G-UNITなどの間で起こったいざこざが有名でしょうか。もっと詳しく知りたい方は、2pacとBiggieの抗争をはじめ、
NWAと
Ice Cubeから
50 Centと
Ja Ruleまで新旧抗争の歴史を網羅したDVDシリーズ「ビーフ」(
『ビーフ1』 『ビーフ2』 『ビーフ3』が日本語字幕付でリリース)をぜひご覧ください。日本でもいわゆる“J-RAP”のアーティストをおちょくるような形で頻繁に小さなディス(disrespect:軽蔑するという意味が転じて悪口をいう/批判するなど)合戦が行なわれており、渋谷の首領こと
K DUB-SHINEと
Dev Large(
Budda Brand)がアンサーソングを連発しあった事などが、日本のヒップホップ専門誌に取り上げられ知られています。
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