メインストリームに上ることはなくとも、革新的な刺激に溢れた映画ジャンル“ミッドナイトムービー”。その生態について、CDJournal.com的考察をまとめてみました。
クエンティン・タランティーノ『キル・ビル』に興奮しきりの貴方、巨匠による夢の競演『マスターズ・オブ・ホラー』シリーズを食い入るように見つめるホラー・ファン、はたまた
ROLLY(
すかんち)好きに至るまで、手を変え品を変え、様々なジャンルにその影響を及ぼす“ミッドナイトムービー”と呼ばれる映画作品の数々。メインストリームでの評価を受けることはなくとも、その遺伝子は確実に世界へ浸透、無意識のうちにチルドレンを増殖させているミッドナイトムービーとはいかなるムーヴメントだったのでしょうか? そんな疑問に対し、明確な回答を与えてくれるドキュメンタリー映画
『ミッドナイトムービー』がついにDVD化! 1月24日に発売されます。(写真は
ピンク・フラミンゴOST)
映画館主、配給会社、観客、監督へインタビューを敢行し、当事者たちが語る生の証言をもとにミッドナイトムービー黎明期を伝える本作。プロデューサー/監督/脚本の3役をつとめた映像作家、
スチュアート・サミュエルズが、代表的な例として挙げるのは紛れもない“カルト”な6作品。
『エル・トポ』(
アレハンドロ・ホドロフスキー監督)、『
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(
ジョージ・A・ロメロ監督)、
『ハーダー・ゼイ・カム』(
ペリー・ヘンゼル監督)、『ピンク・フラミンゴ』(
ジョン・ウォーターズ監督)、
『ロッキー・ホラー・ショー』(
リチャード・オブライエン脚本/出演)、
『イレイザーヘッド』(
デヴィッド・リンチ監督)……1970〜1977年にかけて、映画館の深夜興行に端を発し、いわゆる口コミでその評判が伝わっていった裏街道映画グルメ。取り上げる題材/ストーリーが放つ、これまでの映画にはない“ヤバさ”は、当時のヒップな人脈(
ジョン・レノン、
デニス・ホッパー、
オーソン・ウェルズなど)に愛されることによって、一種の社会的ステイタスにまで上り詰めることに。
深夜というある意味閉鎖的な劇場空間、興行的な成功よりも観客に媚びない映画作りを目指した若い才能、極めて異例な条件が重なったことにより、これまでの映画が目を向けてこなかった“奇妙キテレツ”“悪趣味”“B級感覚”ともいえる新たな価値観が根付くこととなったのでした。熱烈&激烈なキャッチコピーを連投することでも知られる、テレビ東京系『木曜洋画劇場』CM(例:「ダブルゼータヴァンダム」)にも、もちろんその影響は伺えるでしょう。
ド派手なアクション/CGが炸裂するハリウッド的娯楽作品でスカッとした後は、極めて濃厚な後味を残す“ミッドナイトムービー”で締めくくってみてはいかが。
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