幼稚園や小学校の時に触れた人も多いであろうエレクトーン。赤、白、黄色などのレバーがあって、ふたがついた開閉式の鍵盤楽器という印象を持つ人も多いと思います。形はオルガンのようだけれど、シンセサイザーのような機能を持ち合わせたエレクトーンが、実際、何なのかいまいち分りにくいところも。そんなエレクトーンはというと、上下2段の鍵盤とペダル鍵盤、またエクスプレッション(表現)ペダルを備えた電子オルガンの一種になります。ちなみに、このエレクトーンなる名称はヤマハの登録商標だったりするのです。
初級者向けの小型のものから、重さが100キロ近くになる大型のものまで数多くの種類があるエレクトーンは、1959年に初代機種D-1(なんと重さは120キロ!!)を発表。その後、80年代初頭まではレバーで音を選択するアナログ方式を採用した鍵盤楽器でしたが、時代の流れか83年からはFM音源(現在、携帯電話の着メロなどに使われている音源)を採用。それからは内蔵音源のエディットが可能になったり、音源もAWM(デジタル録音した音をデータ化し、音源として使うヤマハのサンプリング技術)音源になったりと、シンセサイザーと同等の楽器へと変わってきました(現行モデルSTAGEAシリーズでは、415音色(上位機種では509音色)、274種類のリズムパターン、183種類のエフェクトが組み込まれています)。
鍵盤数やペダル数はモデルによって異なりますが、2段鍵盤(上下ともに61鍵)+ペダル鍵盤(25鍵)が基本的な形。83年よりタッチコントロールも装備され、その後はアフタータッチ(鍵盤を押し込む強さをセンサーで検出し、音の音量・音色をコントロールする機能)だけではなく、ホリゾンタルタッチ(鍵盤を押さえたまま指の重心を左右に動かすことによって、微妙なピッチ変化やビブラートなどの変化をつけることができる機能)なるものも装備。それによって、弾き方ひとつで細かいニュアンスを出すことが可能となり、デジタルながらもピアノのように演奏者の感情表現を活かすことができる楽器となりました。
現在では、USBやスマートメディアを搭載し、インターネットとの接続(!)も可能。本体も分解や組み立てが可能なユニット式となり、必要に応じて機能のバージョンアップが可能になるなど、シンセサイザーとはひと味違う、アナログ感覚でフレキシブルに対応できる楽器として存在しています。
これだけ柔軟性に優れたエレクトーンでも、本体が大きく持ち運びが不便ということもあるのか、メイン楽器として使うアーティストがなかなかいないのも事実。そんなエレクトーンを通過(経験)したアーティストを挙げてみると、28日にニュー・アルバム
『起きて寝る-FUNNY DAY&HARD NIGHT-』を発売する
PE'Zのキーボード奏者、
ヒイズミマサユ機。彼は中学2年生の時にジュニアエレクトーンフェスティバル‘91全日本大会に出場し、「ILLUSION」という自作の曲で銅賞入賞という過去を持つアーティストなのです。また、最近ではエレクトーンを学ぶ子供たちの間で、ヒイズミマサユ機のような弾き方が流行りつつあるとか。打楽器のようにアグレッシヴに弾く小学生……見てみたいものです。
小学校2年生からエレクトーンを習い、専門学校ではエレクトーン科に通って学んでいたというのは、
櫛引彩香。彼女は、初めて自分で作った曲はエレクトーンで作り上げたそう。しかもその曲が、中学生のテープコンクール(コンクール名は不明)で佳作に入ったとか。
ジャパメタ発ヒップホップ経由〜ジャズ郡ガレージ町行き! ポスト・ハードコアの未来を切り開くFUGAZIのごとく、未知なるエレクトーンの可能性を常に追求しているのが
TUCKER。激烈なパフォーマンスはもちろん、変幻自在に面白き音色を奏でるそのスキルに脱帽! ひとたび彼の音楽が流れ出せば「Jump Around」で間違いナッシング。
エレクトーン全日本グランプリを獲得という過去を持つのが、
THE COWS JACKSONのヴォーカル兼ベーシストのYUSUKE。エレクトーン界の逸材とも呼ばれる彼が率いるTHE COWS JACKSONの音楽は、エレクトーンから作り上げたものをバンドで表現する形を取っているそうです。そんな彼らのミニ・アルバム
『who's your HERO?』ではエレクトーンとバンド・サウンドの融合に挑戦しているのでチェックしてみてはいかがでしょうか?
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