マイク・タイソンが“ボリウッド”進出!?“ボリウッド”女優にキスしたリチャード・ギアに逮捕状!?……と、何かと話題の“ボリウッド”。一体“ボリウッド”って何なのよ! とイライラ気味の皆さまに、CDJournal.com的考察をご紹介!
冒頭でご紹介したとおり、ちかごろ路肩に咲く一輪のたんぽぽのようにひっそりと話題のキーワード“ボリウッド”。一般的には歌って踊って大団円、ベタな喜怒哀楽とグラマラスなサリー姿の女優が魅力のインド映画のこと。日本でもヒットした“ボリウッド”映画
『ムトゥ 踊るマハラジャ』は当時“マサラ・ムービー”として紹介されました。(写真右上は
OST)
年間の映画制作本数、そして映画館の観客総数が世界一多い“超映画大国”インド。そのほとんどが北インドの都市ボンベイ(現在はムンバイ)で制作されています。欧米での映画の聖地である“ハリウッド(Hollywood)”をもじって、主にボンベイで作られているヒンディ語の娯楽映画のことを“ボリウッド(Bollywood)”と呼んだことがその語源。インドはその地域ごとに言語が異なる事もあり、共通語として使われている“ヒンディ語”が使われている作品(=インド全土で公開される作品。ウルドゥー語も含む場合が多い)が「ボリウッド・フィルム」なのです。
日本で最も有名なインド人俳優・
ラジニカーントは、実は厳密には“ボリウッド・スター”ではないのです。そもそもインド映画界では、カースト制度などにより職業選択の自由がほとんどないお国柄も含め、基本的に俳優/女優は「縁故」採用。そのほとんどがミュージカル仕立てのインド映画では、歌専門の俳優/女優(プレイ・バック・シンガーと呼ばれます)がいるため、歌唱力はそれほど問われませんが、白い肌で美形であることが最も重要視されます。ラジニカーントはインド映画界でもバス・ドライバー出身、ダーク・スキンでしかも美男子ではないのに、トップに登り詰めた異色のスターなのです。
さらに、大ヒット作『ムトゥ−』も“ボリウッド”映画ではありません。ラジニカーントの出身地であるタミル・ナードゥ州の公用語タミル語で制作された、いわゆるローカル映画なんですよ。ちなみにラジニカーントは91年に『我ら』というヒンディ語映画にも出演しています。4月25日、5月2日にそれぞれ発売されるラジニカーントの
DVDボックスで、言葉も文化もすべての枠組みを越えるスーパー・スターの魅力をぜひ味わってみてくださいね。(写真左は4月25日に発売されたDVDボックス
『踊る!スーパースター ラジニカーント』 )
ここまで読んで“ボリウッド”って、世界最大の映画大国なんて言いながらもアホ映画……もといB級ものしかないのかぁ〜と早とちりはなさらぬように。“ボリウッド”映画の巨匠として名高いグル・ダッド監督の作品をぜひご覧あれ。(5月26日に待望の
DVDボックスが発売!) 日本ではほぼ無名のグル・ダッドは世界的にとても高い評価を得ている“孤高の映像作家”として知られる存在。インド映画なだけに、しっかりと“娯楽作品”としての魅力も兼ね備えた名画を生み出しました。
グル・ダッドは1925年生まれで、俳優/監督そしてプロデュースを手掛け8本の映画を制作しましたが、39歳で自ら命を絶っています。1950年代に
『大河のうた』(写真右)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞など、多数の映画賞を受賞し、欧米諸国にアジア映画の実力を知らしめた名監督
サタジット・レイと並び、アジアを代表する映画監督です。
ここ、日本では一部の映画マニアの“お愉しみ”でもあるインド映画。ぜひこの機会にラジニカーントからグル・ダッドまで、まだ広く知られていない秘宝の数々をご自身の目でお確かめください!
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