ストリート・ミュージシャンやアコースティック・セットで行なわれるライヴなどで数多く使用される、演奏者がまたがって演奏する穴の開いた大きな四角い木箱が“カホン”です。その場面を目撃する機会が最近増えてきました。叩く場所によって鳴る音が変わるこのカホンが、一体どんな楽器なのか不思議に思っている方も多いことでしょう。(写真は、
ホアキン・コルテス主演
『ジターノ』の
オリジナル・サントラ。ジャケ写でホアキン・コルテスが座っているのがカホン。劇中にもカホンは登場いたします。)
“大きな箱”という意味を持つ名前のカホンは、南米のペルーが発祥の地となるパーカッション。このカホンの歴史はというと、植民地時代のペルーに連れてこられた黒人奴隷が木箱などを叩いて楽しんでいたことが起源と言われています。そして、現在のようなサイズで作られるようになったのが1960年代以降のことらしく、現行のカホンはまだまだ楽器の歴史のなかでは新しいほうです。
そんなカホンが世界的に知られるきっかけとなったのは、スペインのギタリスト、
パコ・デ・ルシアが60年代に使用していたことでしょうか。ペルーのミュージシャンからプレゼントされたというカホンを、パコ・デ・ルシアはフラメンコの演奏などに使用。その結果、カホンの知名度はあがったのですが、フラメンコ=スペインとのことから、スペイン発祥の楽器との間違った認識が生まれたりもしました。ペルーでは、現在、カホンを国の文化財に指定。ペルーを代表する楽器のひとつとして認定されるに至っています。ちなみにスペインのフラメンコ・ダンサー、
ホアキン・コルテスの舞台でもカホンは使用されていたりするそうです。
さて、そのカホンの演奏方法はというと、演奏者は穴の空いた面を後ろにしてカホンにまたがり、前面を手の平で叩いて演奏します。平手で上の縁を打つ(オープン)、センター付近を指をそらして叩く(ベース)、上の縁を指先で叩く(スラップ)、上の縁あたりを指先の力を抜いて叩く(ティップ)などの奏法で音色が変わります。本体の中央はバスドラムのような低音、端のほうがハイハットのような高音、縁のほうを叩けばスネアのような音が鳴るので、叩き方を駆使すればドラム・セットのような役割を果たすことも可能。そのため、ストリート・ミュージシャンなどの間で重宝されるようになりました。
構造はというと、カホン本体の打面となる面だけが薄くなっており、その裏面にワイヤー(ピアノ線やギターの弦のようなもの)が張られています。弦は音の出し方などでさまざまな張り方があるようですが、ワイヤーの張られていないカホンも存在するようです。このワイヤーはスネア・ドラムでいうところのスナッピーのようなものと言えばわかりやすいかもしれませんね(ちなみにここに鈴などを取り付けたものも存在します)。また、裏面に存在する大きな穴は、低音の空気の流れや音の反射による響きや広がりを考えてのものだそう。こちらはドラムのバスドラムの穴と同じようなものと考えてもいいかもしれません。
そんなカホンは、今では普通に楽器屋などでも購入可能になり、カスタムメイドで製作してくれるお店も増えているようです。自宅録音でドラムを使いたいけど置く場所がないというあなた、ストリート・ライヴにドラムは持っていけないとお悩みのあなた。このカホンがあればそんな悩みは解消されるかも。ドラムとはひと味違いながらも、ドラム同様に多彩なサウンドを奏でてくれる、アコースティックの打楽器、カホン。
『大人の楽器生活 カホン、ジャンベの嗜み』といったカホンの教則DVDも発売されているので、今から何か楽器を始めたいという人は、カホンを選んでみてはいかがでしょうか?
今回、写真で掲載したカホンは……
【アクリル胴カホン】
●メーカー名:PLAYWOOD 型番:CP-30AC
【木胴カホン】
●メーカー名:Schlagwerk 型番:CP-4005
■カホンのご購入はこちらへ■http://www.ikebe-gakki.com/web-ikebe/ds-sib_cajon/編集協力 : 池部楽器店 ドラムステーション
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