日本のロックが暗中模索していた70年代にタイムスリップ!……そんな言葉も思わず浮かぶリリース群に、マニアでなくとも頬が緩んでしまう――。ロック世界遺産級のレア音源や入手困難となっている“名盤”との誉れも高い作品だけを、デジタル・リマスター化し、紙ジャケット仕様でリリースすることで知られる復刻/未発表音源専門レーベル、ハガクレ・レコード。この9月には女性アーティスト作品を専門に復刻するくノ一・レコードも誕生し、ますますにぎやかなラインナップとなった。CDJournal.comでは、両レーベルが選びに選んだ“レジェンド”たちを改めてご紹介!
<2002年:ハガクレ・レコード参上!> ハガクレ・レコードの最初のリリースは、特に70年代の日本のロックにこだわりを持つファンにとっては衝撃的ともいえるアーティストたちの名前がならんだ。その核となったアーティストは、
加納秀人(
外道)にほかならないだろう。もちろん
RCサクセションの70年代〜80年代タイトルが復刻されたことや、国産プログレッシヴ・ロックの金字塔、
四人囃子と、女性ロック・ヴォーカリストの原点であり、ひとつの到達点を提示した
カルメン・マキ&OZなどのアルバムが登場したことは無視できないが、作品が入手困難であるがゆえに伝説ばかり一人歩きし、良くも悪くも正しく評価されることがなかった外道/加納秀人関連の作品が登場したことは大きな意味を持つ。
イエローの垂水兄弟、
ゴダイゴの浅野孝巳、
ファニー・カンパニーの西哲也を輩出し、加納秀人も在籍した幻のバンド
Mのアルバム『M』(中古市場では40万円という高値でとりひきされたことがあるという伝説がまことしやかにささやかれていた作品)や、アブなくスリリングな
鷹魚剛の『蛇行都市』(伝説的な放送禁止歌を2曲収録!)を第一弾リリースにしたあたりにも、ハガクレ・レコードが、安直な紙ジャケ化復刻専門プロジェクトではないことがうかがえる。
(左から写真1/2/3/4/5)
M/The M(初CD化/写真1)
M/1972.LIVE AT 新宿(未発表)
外道/外道LIVE(復刻/写真2)
加納秀人/地球の夜明け(初CD化)
加納秀人/IN THE HEAT(初CD化)
加納秀人/LIVE 1979(未発表)
鷹魚 剛/蛇行都市(初CD化)
鷹魚 剛/青い風の地平へ(初CD化/写真3)
カルメン・マキ&OZ/カルメン・マキ&OZ(復刻/写真4)
カルメン・マキ&OZ/閉ざされた町(復刻)
カルメン・マキ&OZ/III(復刻)
カルメン・マキ&OZ/LIVE(復刻)
カルメン・マキ/ナイト・ストーカー(復刻)
カルメン・マキ&LAFF/LAFF(復刻)
フラワー・トラベリン・バンド/エニウェア(復刻)
RCサクセション/シングル・マン(復刻)
RCサクセション/ラプソディ(復刻)
RCサクセション/プリーズ(復刻)
RCサクセション/EPLP(復刻)
RCサクセション/BLUE(復刻)
RCサクセション/COVERS(復刻)
外道/水金地火木土天回明 〜外道・秘蔵音源集 その壱(未発表)
外道/水金地火木土天回明 〜外道・秘蔵音源集 その弐(未発表)
外道/POWER CUT(復刻)
外道/MOONING(復刻)
加納秀人/エレクトリック・ウズ(復刻)
四人囃子/一触即発(+2)(復刻/写真5)
四人囃子/二十歳の原点(+2) (復刻)
四人囃子/Dance(復刻)
四人囃子/LIVE FULL−HOUSE MATINEE(復刻)
四人囃子/2002 LIVE(新録音)
<2003年:ハガクレ版“ニュー・ロックの夜明け”> ファニー・カンパニーのフロント・マンとしてブルージーな日本語ロックを鳴らしたのち、ソロとして“ロック歌謡”とも呼べる作品でヒットを連発した
桑名正博の作品を復刻。その一方で、70年代ロックの潮流を受け止め、咀嚼(そしゃく)し、より混沌とした世界を構築した
フライド・エッグや、
フード・ブレインも登場。これらに参加していた
つのだ☆ひろのドラマーとしての実力や、
陳信輝のサイケデリックな世界観にも圧倒される。“ロックはいかしてる!(いかれてる!)”という事実が、リスナーの心にある音楽ジャンルの壁を破壊する快感も味わえるだろう。
さらに、
村八分の未発表音源もリリースされた。それも京大西部講堂でのライヴ演奏や、初期アレンジでの「ぐにゃぐにゃ」(サイケデリック!) 、ヴォーカルがのった「のうみそ半分」が収録された未発表スタジオ・テイクまでもが登場した。これらのアルバムは外道と並ぶロック界の“マボロシ”村八分を紐解く上で重要な作品だろう。“宅録神童”の名を現在でも欲しいままにする
マジカル・パワー・マコのサイケデリックなカオスと、素朴さすら感じさせる実験精神の宝庫ともいうべきアルバム群も忘れてはならない。この両アーティストの復刻リリースは、リスナーがこれまで耳にしていた彼らの破天荒な伝説や、幻想を打ち壊し、また異なる角度や視点からその魅力に迫るきっかけとなったという点で、前年の外道関連作復刻と同じ意義を持ったはずだ。
(左から写真1/2/3/4/5)
村八分/UNDERGROUND TAPES〜1972 KBS京都スタジオ・ライブ(未発表/写真1)
村八分/UNDERGROUND TAPES〜1973 京都大学西部講堂(未発表)
村八分/UNDERGROUND TAPES〜1979 京都大学西部講堂(未発表)
TEAR DROPS/TEARDROPS 〜Deluxe Edition(復刻/未発表曲)
マジカル・パワー・マコ/マジカル・パワー(復刻)
マジカル・パワー・マコ/SUPER RECORD(復刻)
マジカル・パワー・マコ/JUMP(復刻)
ブルース・クリエイション/ブルース・クリエイション(復刻)
ブルース・クリエイション/悪魔と11人の子供達(復刻)
ジプシー・ブラッド/ろっこうおろし(+4)(復刻)
洪 栄龍/目ざまし時計(復刻)
桑名正博/WHO ARE YOU(復刻/写真2)
桑名正博/ロード・マシーン(初CD化)
桑名正博/TEARDROPS(初CD化)
桑名正博/ROCK’N SOUL special(初CD化)
桑名将大(正博)/MILLER Dr.(初CD化)
桑名将大(正博)/WOMANIAC (+2)(初CD化)
ザ・ルースターズ/THE BASEMENT TAPES〜未発表スタジオ・セッション(未発表)
ザ・ルースターズ/THE BASEMENT TAPES〜LIVE AT 渋谷EGG MAN 1981(未発表)
甲斐よしひろ/翼あるもの(+1)(復刻)
喜納昌吉&チャンプルーズ/BLOOD LINE(復刻)
フライド・エッグ/ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン(復刻)
フライド・エッグ/グッバイ・フライド・エッグ(復刻)
ストロベリー・パス/大烏が地球にやってきた日(復刻)
フード・ブレイン/晩餐(復刻/写真3)
陳 信輝/SHINKI CHEN(復刻/写真4)
乱魔堂/乱魔堂(復刻)
葡萄畑/スローモーション(復刻)
布谷文夫/悲しき夏バテ(復刻)
茂木由多加/デジタル・ミステリー・ツアー(初CD化)
山本道則/微笑(初CD化)
NOIZ/NOIZ(初CD化)
キャプテンひろ&スペース・バンド/LOST OR FOUND(初CD化/写真5)
正統〜異端、さまざまな伝説で彩られる日本ロックの名盤を復刻したハガクレはその後4年間リリースを休止。まずはお久しぶり、の挨拶がわりに過去リリースしたM、
ルースターズ、四人囃子、村八分の10タイトルがより入手しやすい価格でふたたび登場させた。
その後、雑誌『ロッキング・オン』の設立メンバーである
松村雄策がミュージシャンとして発表したアルバム3タイトルの復刻を皮切りに、
クリエイションの武道館ライヴ(
マウンテンのパパラルディが客演!)や、これまでのリリース群とはイメージを異とする反面、やはり日本のパンク・シーンの礎となった“東京ロッカーズ”の重鎮で、現在はPE'Zなどのプロデューサーとしても知られるS-KENが窪田晴男やヤヒロトモヒロらを率いて、猥雑にロックしたS-KEN&ホットボンボンズのリリースに加えて、女性アーティスト専門の復刻するくノ一・レコードも誕生。 発足当初は100タイトルをリリースすると謳っていただけに、再始動後も深い愛情を感じさせるタイトルが予定が発表されることに期待したい!
松村雄策/夢のひと(写真)
松村雄策/プライヴェイト・アイ松村雄策/UNFINISHED REMEMBERSクリエイション/CREATION with FELIX PAPPALARDI Live at 武道館 1976 (写真)
S-KEN&ホットボンボンズ/パープービー(写真)
S-KEN&ホットボンボンズ/千の眼S-KEN&ホットボンボンズ/SEVEN ENEMIES<くノ一レコード>
ガールズ/野良猫(写真)
ガールズ/パンキー・キッスチェルシア・チャン/マインド・ウェーブ純アリス/花模様 安田南/MORITAT(お定のモリタート)(写真)
■ハガクレ・レコードの公式サイト :
http://www.universal-music.co.jp/hagakure_record/■くの一レコードの公式サイト :
http://www.universal-music.co.jp/kunoichi_record/index.html ※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。