今回のデザイナー・シリーズはパリ発! 巷のお洒落業界人から熱い注目を浴びるデザイン・ユニット、M/M (paris)。ロゴ・デザインに展覧会、ファッション・ブランドのコレクションと、華麗に作品を発表し続けている彼らの活動のなかでも“音楽”へ焦点を当てて迫りました。
パリ国立装飾美術学校(ENSAD)/ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)と、その経歴もまばゆいミカエル・アムザラグ(Michael Amzlag)/マティアス・オーギュスティニアック(Mathias Augustyniak)の2人によって、1992年にフランス・パリで結成されたデザイン・ユニット“M/M (paris)”。2007年には、リアム・ギリックとのコラボレートによって生まれた『MALAGA』(書籍/ポスター/Tシャツがセットになったもの)が、「文字の視覚的表現の追求」をテーマに開催されている国際コンペティションで“東京TDC賞”を受賞するなど(2003年/2004年も参加)、ここ日本でも大きな注目を集めています。
adidas、A.P.C、Kenzo、Givenchy、Hermes、Jeremy Scott、Louis Vuitton……ビッグ・ブランドが連なるクライアント・リストを覗けばお分かりのとおり、彼らのデザインがピックアップされるようになったのは、ファッション業界での成功があったからこそ。Yohji Yamamoto、Jil Sander、Martine Sitbon、Calvin Kleinなどのカタログ/広告/ビジュアル・イメージを手がけたことを皮切りに、それを目にした
ビョーク/
マドンナなどミュージシャンからのオファーも舞い込むようになったのだとか。
ファッション・ブランド、ミュージシャン、カフェ、美術館、その対象がどのようなものであろうとも、まずはクライアントとの“個と個の対話”からデザインをスタートさせるという姿勢が、彼らのスキルを高め、より大きな支持が集まる要因になったとも。
中でも有名なのは、2001年に発表されたビョークの4thアルバム
『ヴェスパタイン』。マルヤン・ディジョディジョヴ ・ペジョスキ(Marjan Djodjov Pejowski)がデザインした“白鳥ドレス”(アカデミー賞授賞式でも大きな話題に)を身にまとったビョークの姿へ、重なるように白鳥のイラストが描かれています。
後に
『メダラ』「ヒドゥン・プレイス」など、彼女のビジュアル面をともに手掛けることとなるフォトグラファー、Inez van Lamsweerde & Vinoodh Matadinによる淡い色調の写真との対比も完璧。彼らのジャケット作品に多く見受けられる、写真へグラフィック(文字/絵)を載せた構図は、不思議な違和感とともに見る者を圧倒します。
『ヴェスパタイン』に触発され、次なるオファーを出したのは“マテリアル・ガール”こと
マドンナ。毅然たる意思表明をこめた10thアルバム
『アメリカン・ライフ』(2003年)はM/Mによるもの。世界に漂う開戦前夜の緊張感と、あえて“NO”を突きつけたマドンナの姿勢、シンプル極まりないレイアウト/色使いでそのすべてを表現した、歴史を飾る1枚に。
デンマークの
ミュー『Mew.and the Glass Handed Kites』(2005年)、“オフィシエ章”受賞でも知られる
エティエンヌ・ダオ『Corps et Armes』(2000年)、フレンチほのぼのポップ野郎、
マチュー・ボガート『J'En Ai Marre d'Etre Deux』(1998年)、ミュージシャンの持つ音楽性/メッセージ/価値観/性格……といった“写真からにじみ出る”目には見えない何かを、対話を頼りにグラフィックへと置き換えた面白さが、M/Mの一つの魅力ではないでしょうか。
■M/M (paris)の公式サイト :
http://www.mmparis.com/◆※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。