雑誌CDジャーナルの人気コーナー、「ライセンス・トゥ・イル 博士のDVDチェック」からやってきた??? (ニセ)博士と(ニセ)助手が再び立ち上がる! 「CD工場見学」に続き、2008年新春におくる第2弾、魅惑の高音質CD「SHM-CD」について考察! “音の違い”に迫ります。
助手▼ 今回のネタは新開発の高音質CD「SHM-CD」です。
博士★ SとMの間でHが板挟みとは、こりゃまたエロいCDぢゃのう。
▼ 博士のことだから確率100%でそうくると思ってました。
★ お約束ぢゃよ、お・や・く・そ・く。で、何ぢゃい、そのSHMというのは?
▼ スーパー・ハイ・マテリアル=超高級素材って意味だそうです。
★ 超高級なSHM-CD対応プレーヤーを買わないと聴けないんぢゃろ?
▼ SHM-CDは普通のCDプレーヤーで再生できますよ。別のスーパーなCDとは違います。
★ ちょっと見には普通のCDと変らんようぢゃが、どこらへんがスーパーでハイなのかえ?
▼ ディスクの透明なところの材料が高級でして、液晶テレビの画面に使う樹脂でできてます。
★ ということは……このCDは表面にテレビ番組が映るとな!? ひょっとして地デジも?
▼ テレビは映りません!
★ きびしいのう……。見たいなあ、地デジ。
▼ とにかく、音を聴かないと始まらないので実際に聴いてみることにしましょう。
[3分経過]★ よォーっし、わかった! 真犯人は普通のCDぢゃ!
▼ わかるのが早すぎです! 次は同じ演奏を普通のCDで流します。SHM-CDの音と比べてください。
[3分経過]▼ どうですか?
★ うーん、さすがスーパーでハイなマテリアルっぽい音ぢゃのう。マッタリとしていながら、それでいて……。
▼ 無理して通ぶらなくていいですから、正直に感想をおっしゃい。
★ ものすごくビックリするような差があるわけではないんぢゃが、音全体が滑らかで真に迫っとるわい。ヴォーカルの生々しさやストリングスの艶っぽさが一段と冴えとる。
▼ はい、よくできました。
★ 普通のCDの音は、何か大切なものが音楽から抜け落ちてしまったような、さみしい感じぢゃな。何というか、SHM-CDと比べて普通のCDは「お仕事だから演奏してま〜す。ほんとは早く帰りたいんだけど、アタシ」みたいに聞こえてしまうんぢゃ。ワシゃ行ったことはないが、銀座の高級クラブと場末の安酒場の違い、と言ったら助手くんにもわかるかえ?
▼ CD聴いて一体なに考えてんですか!
★ しかし、音の違いといっても微妙な差ぢゃな。
▼ まあ、100人が聴いて100人全員がわかるかというと、それほどのものではない、とも言えます。
★ やっぱり安物の機械ではダメかのう。
▼ 一定の性能が具わったオーディオ機器を使えば、違いはハッキリ出るんですけどね。あと、ヘッドフォンではなくスピーカーを使って聴く方がわかりやすいと思います。空間が前後に広がる感じが出やすいですから。
★ これで一枚2,800円というお値段ぢゃが……。
▼ その価値があるかどうかは考え方次第ですね。こう考えたらどうですか。音楽ソフトを良い音で聴く方法は大まかに二つあって、一つは良い再生装置を使うこと。もう一つはソフトに入れる音を良くすることでした。
★ 高いオーディオ機器を揃えるか、音の良いリマスター盤を選びなさい、ということぢゃな。両方やれば完璧。
▼ でも、SHM-CDはそのどちらでもありません。いわば第三の音質向上ファクターなんです。音質を改善できるなんて誰も期待していなかったところへ突然メリットが上乗せされたんですから、純粋にお得なんですよ。もちろん、良い装置に買い替えればSHM-CDをもっと良い音で聴けますし、リマスター音源を使ってSHM-CDを作ればさらに音質が上がる計算です。良いことずくめじゃないですか。
★ いつからユニバーサルの営業マンになったんぢゃ? それにしても、ディスクの材料が違うだけでこれだけ音に差が出るもんぢゃろうか。音の良いマスターにこっそり差し替えるとか、ワシらに見えない体育館の裏かどっかでズルしとるんぢゃないかえ?
▼ してません! 去年11月に出たジャズとクラシックの50タイトルと、1月23日に出たロック/ポップ系の50タイトルは、いま一番安く買える廉価盤のマスターをそのまま使ってます。そうしないとSHM-CDの実力を広範囲にアピールしにくいですから。それに、メーカーとしては手間をかけて新規にリマスターしなくても従来のマスターから自動的に高音質なCDを作れるという旨味がありますし。
★ 大人の事情ぢゃのう。とはいえ、少しでもCDの音を良くしたいのなら、リマスター音源を使ったSHM-CDもアリぢゃないかえ?
★ ルビジウム・カッティング……、むむむ。くやしいが、ギャグが思いつかん。一生の不覚ぢゃ。
▼ それもCDの音質を良くする技術の一つです。デジタル信号の濁りが減るので、澄んだ音のCDが作れるんですね。
★ ごくろうさん。今回はいつになく説明的なセリフが多いのう。ついでに聞きたいんぢゃが、結局のところ音が良くなった原因は何なのかえ?
▼ それが、よくわかってないんです。説明おわり。
★ ……見損なったぞ助手くん。そんな物言いが科学万能の21世紀に通用すると思うてか!
▼ SHM-CDを作り出した日本ビクターの人も「わからない」って言ってるからお手上げです。紙資料にはもっともらしく“透明度が上がったため複屈折が……”なんて書いてありますが、それで全面的に納得できるかといえば難アリですよ。同じマスターから作ってもSHM-CDは普通のCDより音量が大きくなるとか、現在の科学では説明がつきません。
★ うーむ、不思議ぢゃ。オカルトが大嫌いな理系の人たちが真実を解明してくれんかのう。
▼ 何が原因だろうと、音が違うのは事実ですからね。音の世界は深いってことです。
★ とりあえず優秀録音で有名な
スティーリー・ダンの
『エイジャ』でも押さえるか。音質の違いを知ってしまった今となっては、普通のCDで聴くと精神衛生に良くないわい。
▼ あんたに精神衛生なんて上等なもんがあったんかい!
★ たくさん買えば衛生面でモアベターよ。
▼ (棒読みで)SHM-CDはすべて限定盤ですので、お早めにお買い求めください。
★ 心の温かさとは裏腹に懐の寒さが身にしみる冬ぢゃのう。
[博士のココをチェーック!]SHM-CDを出しとるのは今のところ世界中で日本のユニバーサル ミュージックだけだから、輸入盤で安く買う手は使えんのぢゃ!
取材・文/佐藤良平(2008年1月)
■SHM-CD 公式サイトhttp://www.universal-music.co.jp/u-pop/special/shm-cd/index.html■1月23日発売/SHM-CDタイトル◆※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。