カニエ・ウェストのアルバム
『イーザス』にも参加したフランスのDJ / プロデューサー、
ブロディンスキーが手がけるレーベル「Bromance Records」のコンピレーション・アルバム
『HOMIE LAND vol.2』(写真)。アルバム・ジャケットには銀歯の男の子のなんともいえない笑顔が使われています。ヒップホップ・アーティストの中にはこのジャケットのように、歯に金や銀の装飾を施しているアーティストがおり、そのような装飾を“グリル”と呼びます。
グリルのルーツは古く、1999年にアメリカで発表されたMarshall Becker博士の研究書「Etruscan Gold Dental Appliances: Three Newly 'Discovered' Examples(「エルトリア人の金歯について: 新たな三つの症例発見」)では、紀元前8世紀頃にイタリア半島で生活していた、エルトリア人の裕福な女性は富の象徴として歯を金歯にしていたと報告されています。
ヒップホップ・シーンではまず
パブリック・エナミーのFlavor Flavや
クールGラップ、
ビッグ・ダディ・ケインらニューヨーク周辺で活動するアーティストの間でグリルが流行し始めます。彼らのグリルをデザインしたのがEddie Pleinという宝石商。彼はその後アトランタに宝石店“Eddie's Gold Teeth”をオープンさせ、
アウトキャストや
リル・ジョン、
グッディ・モブらのグリル・デザインを手がけました。この結果、米南部のダーティ・サウスと呼ばれるヒップホップ・シーンでグリルがブームを迎えます。2005年には
ネリーが
ポール・ウォール、
ビッグ・ギップ、
セント・ルナティックスのAliを迎えグリルをテーマにした曲「Grilz」をリリース。全米1位を記録したこの曲はネリーのベスト・アルバム
『ザ・ベスト・オブ・ネリー』に収録されています。古くから富や力の象徴としての金歯が存在しており、そこがヒップホップの持つメイク・マネーというひとつの側面と合致したため、アーティストの間で流行したのかもしれません。
現在グリルはヒップホップのみならず、
マリリン・マンソンや
BLINK182のトラヴィス・ベイカー、
ジョニー・デップやモデル / 俳優の
カーラ・デルヴィーニュらも使用するまでになりました。日本でも
KOHHや
Anarchyといったアーティストがグリルを施しています。国内では東京・上野にある「Grillz Jewelz」がグリルの受注、販売を行なっています。
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