80年代〜90年代カルチャーのリバイバルが定番になりつつある近年。音楽では、世界的な人気を誇るカナダのシンガー・ソングライターの
ウィークエンドが、自身の楽曲「アウト・オブ・タイム」で亜蘭知子の「Midnight Pretenders」をサンプリングするなど、いわゆる“シティ・ポップ”(その解釈やその範囲などはひとまず置いておいて)が海外においても注目されたり、K-POPシーンを席巻しているNewJeansが、「Ditto」でボルチモア・クラブダンス(ビーモア)マナーのサウンドとビデオカメラやビデオテープといったアイテムが登場するミュージック・ビデオを、「Attention」で90年代後半〜00年代初期のR&Bサウンドと以前なら“ダサい”と言われたファッションを採り入れたミュージック・ビデオをそれぞれ手掛けたりと、当時を知らない世代には新鮮に映り、それらに触れた世代には“一周してカッコいい”としてムーブメントとなっています。2018年頃にTikTokで“バズった”
倖田來未のカヴァー「め組のひと」の“本家”となる
鈴木雅之の1994年の楽曲「
違う、そうじゃない」がTikTokからブレイクし、2022年末の『紅白歌合戦』でも披露したり、人気バスケットボール漫画『スラムダンク』が30周年を機にアニメ映画化されて国内外で話題を集めたのは、記憶に新しいところです。
80年代において多くを魅了した一人が、漫画家 / イラストレーターの
わたせせいぞう。都会的で洒脱な作風と各作品で画風や装丁などのフォーマットを基本的に踏襲したスタイルで、鮮やかな色彩によるランドスケープと甘酸っぱくもキラキラとした登場人物を描いて、人気を博しました。2月15日はわたせせいぞうの誕生日ということで、わたせせいぞうワークスのなかから、CDジャケットとなった作品をいくつか紹介したいと思います。
まずは、やはり代表作となる『
ハートカクテル』でしょう。TVアニメ化された際には日本たばこ(JT)の一社提供ということもあり、「たばこ1本のストーリー」とのキャッチフレーズとともに放送。
松岡直也をはじめ、
三枝成章、
島健らが手掛けた
サウンドトラックはシリーズ化され、好評を博しました。3月21日(火)・28日(火)には、20年ぶりに書き下ろした『ハートカクテル カラフル』がNHKにてミニアニメ化。“ボクとカノジョの恋”という不滅のテーマを軸に、多様化する現代の恋愛を描いていきます。
亀梨和也、
満島ひかりが声優を務めることで、早くも話題となっています。
わたせワークスのCDジャケットは、松岡直也らハートカクテル“御用達”アーティストはもちろん、
TUBEがよく採用したことでも知られ、『
BOYS ON THE BEACH』『
Remember Me』『
Melodies & Memories』といった80〜90年代のアルバムのジャケット・ヴィジュアルには、しっかりとわたせせいぞうワールドが描かれています。
当時だけにとどまらず、2000年以降もジャケット・ヴィジュアルに採用するアーティストは少なくなく、
山下達郎のシングル「
君の声に恋してる」をはじめ、
Retro G-Styleのシングル「
What's the Answer?」やアルバム『
Party 3』、
ジャンク フジヤマのドライヴをコンセプトにしたベスト・アルバム『
風街ドライヴ』などにも見られます。ドラマ『
続・最後から二番目の恋』の劇中歌で、同ドラマに主演した
小泉今日子と
中井貴一がデュエットしたシングル「
T字路」(写真)のジャケットも、わたせせいぞうの書き下ろしです。
TUBEは2000年以降もわたせワールドをたびたび採り入れ、バラード・ベスト『
Melodies & Memories II』やシングル「
空と海があるように」、最近では2021年リリースのシングル「
BLUE WINGS」で、色彩豊かなスタイリッシュな画風を確認することができます。
鈴木英人や永井博とともに時代を築いた、“一目でわかる”わたせせいぞうのジャケット・ヴィジュアルの作品を、あらためてチェックしてみてはいかがでしょうか。
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