5月27日は鎌倉時代の公家で歌人の藤原定家が1235年(文暦2年)に『小倉百人一首』を完成したと自身の日記『明月記』に記したことにちなんで、“百人一首の日”となっています。百人一首は当時さまざまな人が編纂しており、いくつも“百人一首”と呼ばれるものが存在しましたが、藤原定家という京都にいる著名な公家が編纂したことや庶民に“歌がるた”として広く用いられたことで、百人一首といえば『小倉百人一首』という存在になりました。ちなみに、京都・嵯峨の小倉山荘に貼られた歌を集めたことから、小倉の名がつけられています。
日本の歌の歴史において、いわば“クラシック”ともいえそうな百人一首ですが、現代のJ-POPの歌詞においても、その句の一部やフレーズが引用されている楽曲がありますので、いくつか紹介してみましょう。
六歌仙の一人で、『伊勢物語』の主人公のモデルとして著名なモテ男こと在原業平が詠んだ「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」を引用したのは、
倉木麻衣 の「
渡月橋 〜君 想ふ〜 」(写真)。劇場版『名探偵コナン』シリーズ『
名探偵コナン から紅の恋歌 』の主題歌としておなじみのこの曲には、「から紅に染まる渡月橋」「から紅に水くくるとき」などの詞が出てきます。
同様に、競技かるたを題材にした
広瀬すず 主演映画『
ちはやふる -上の句- 』『
同 -下の句- 』の主題歌となった
Perfume の「FLASH」(アルバム『
COSMIC EXPLORER 』やシングル「
無限未来 」に収録)は、サウンドはダンサブルで、ダンスにカンフーが用いられたりと一見“古典”な部分がないように思えますが、サビに「速い時の中で ちはやぶる」と歌っています。冒頭の「花の色が 変われるほどの」は、「FLASH」を手掛けた
中田ヤスタカ が、小野小町が作った「花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに」を意識していたかもしれません。
日本を代表するロック・ユニットの
B'z にも百人一首を用いた楽曲があります。1990年リリースの3rdシングル「LADY-GO-ROUND」の「こひしかるべき Round Round……」「わがなみだかな Round Round……」「かみのまにまに Round Round……」のフレーズは、それぞれ三条院が詠んだ「心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな」、西行法師の句「嘆けとて月やは物を思はするかこち顔なる我が涙かな」、菅家による「このたびはぬさもとりあへず手向山もみぢの錦神のまにまに」からの引用です。
大胆にも百人一首をいくつも組み込んだのが、
BABYMETAL のメンバーも在籍していたアイドル・グループ“
さくら学院 ”の「さくら百人一首」(シングル「
ベリシュビッッ 」に収録)。「をとこもすなる日記といふものを…」から始まる『土佐日記』の作者の紀貫之が詠んだ「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける」を冒頭から引用し、その後も僧正遍昭による「天つ風雲のかよひぢ吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ」をはじめ、百人一首を多く引用しながら、その句をモチーフにした歌詞を展開しています。
“地球アートギター”を相棒に国内外で活躍している福井県出身のシンガー・ソングライター“
せりかな ”のベスト・アルバム『
SERIKANA BEST "LOVE & EARTH" 』や『
SERIKANA BEST2“DOWN TO EARTH” 』には、「百人一首の奏」という楽曲を収録。「めぐりあいて」は紫式部が詠んだ「めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな」、「ひさかたの」は紀友則が歌った「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」からの引用で、ここでも「ちはやふる」「はなのいろは」と在原業平と小野小町の句が使われています。やはり平安時代のプレイボーイの在原業平と、クレオパトラ、楊貴妃と並んで世界三大美女の一人に数えられている小野小町とう美男美女の歌は、現代においても多くの人を惹きつける魅力があるのかもしれません。
ちなみに、せりかなは特技が百人一首かるた(A級四段)で、全国大会優勝の経験を持っているとのことなので、歌詞の訴求力も高そうです。
VIDEO
VIDEO
VIDEO
※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。