[注目タイトル Pick Up] 渋谷毅のエリントン・アルバム他、Yumi
掲載日:2018年7月24日
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注目タイトル Pick Up
渋谷毅のエリントン・アルバム他、Yumi's Alleyの7作品が一挙ハイレゾ化
文/國枝志郎

 夢のような話である。それにしても夢を具現化するだけの行動力に対してありったけの称賛を送りたい。音楽プロデューサーとして長く活躍する望月由美さん。FM放送ディレクター、ライター、カメラマンとしても活動するかたわら、自分の好きなアーティストをレコード会社にプロモートしてリリースを続けていたが、やはりレコード会社の原盤というのは100%自分自身の希望どおりにはならないもの。レコード会社の倒産や統合、会社はなくならなくてもレーベルや部門の廃止ということもあり得る世界だ。廃盤となり、その後まったく陽の目を見なくなる……悲しいがそういう現実は実際にあるのだ。それならば、ということで望月さんは自身の夢を実現するべくみずから原盤制作に乗り出し、自分自身で発売してくれるレコード会社を探し出してはリリースするという事業に乗り出す。1990年のことである。最初にリリースされたのは今回のリイシューにも含まれているAACM〜アート・アンサンブル・オブ・シカゴのジョセフ・ジャーマン『ポエム・ソング』だったというだけでもいい意味での趣味性のすごみを感じさせるじゃないですか。彼女のプロデュースした作品群は前述のとおり、その都度レーベルを探して発売という手順を踏んでいたため、複数のレーベルから発売されていたわけだが、2004年にはビデオアーツ内にYumi's Alleyレーベルを設立し、すべての作品をここからリイシューしたことで、彼女のプロデュース作品がまとめて俯瞰できるようになっていた。そして2018年。“Yumi's Alley Masterpiece Collection”と銘打たれて望月さんのプロデュース作が7タイトル、CDのリイシューとあわせてまとめてキングレコードからハイレゾ・リリースと相成ったわけである。いずれも愛に満ちた目線でのプロデュース・ワークが最上のかたちで音源化されている作品ばかりで、どのアルバムも必聴といえるけれど、7タイトルのうち5タイトルを占めるピアニスト、渋谷毅の作品群に耳を傾けてみたい。なかでも渋谷の代表作といえるのは99年録音の『essential ellington』だろうが、ここではその続編的な存在である2005年度作品『Island Virgin』を取り上げよう。『essential ellington』同様、渋谷のピアノを中心として、峰厚介および松風鉱一のサックスと関島岳郎のチューバ(!)を中心としたアンサンブルで、デューク・エリントンの有名曲からレア曲までを深みのある音で楽しめる。『essential ellington』のベテラン・エンジニア、及川公生氏と、『Island Virgin』の鈴木浩二氏という素晴らしいエンジニアの録音の違いを楽しむのも一興だと思う。しかも今回素晴らしいことに、PCM(192kHz/24bit)と同時にDSD(2.8MHz)での配信も実現しているのだ。まさに至れり尽くせり。これはやはり全部聴くしかないでしょう。


 いまどき“女性の〜”などと書くのもどうかと思うけれど、しかしジャズのラージ・アンサンブル界で女性の活躍が目覚ましいのは事実でしょう。デヴィッド・ボウイとの共演で一般レベルにまでその名を高めたマリア・シュナイダー、自身のアンサンブルを持っているわけではないが、今や日本のラージ・アンサンブルのための作曲やアレンジをやらせたら天下一品の挾間美帆などの活躍はもはや周知のとおり。ここで紹介するピアニストでありバンドマスターでもある守屋純子もまた、素晴らしい活動を繰り広げる女性アーティストである。早稲田大学卒業後、ニューヨークのマンハッタン音楽院修士課程修了を経てアメリカやヨーロッパ各地で演奏活動を行ない、1997年、デビュー作『My Favorite Colors』を自身のオクテットで発表。以後プレイヤーとしてだけではなく後進の指導やCDのプロデュースなど、さまざまな活動を繰り広げ、現在(2018年8月)までに9枚のリーダー作を発表している。トリオやオクテット、セクステットの録音もあるが、このうち6枚は自己のオーケストラによる作品であり、守屋純子というアーティストにとってのこのラージ・アンサンブルがやはりいちばん重要ということになるだろう。エリック宮城、木幡光邦、奥村晶、岡崎好朗(tp)、佐野聡、佐藤春樹、東條あづさ、山城純子(tb)、近藤和彦、緑川英徳、岡崎正典、アンディ・ウルフ、佐々木はるか(sax)、納浩一(b)、広瀬潤次(ds)、岡部洋一(perc)というスーパープレイヤーを擁したこのアンサンブルをハイレゾ(48kHz/24bit)で聴けるのは快感以外のなにものでもない。守屋は、前作『Play For Peace』(2015年)で、徳川家康公400年祭を記念して徳川家康公ジャズ組曲「厭離穢土、欣求浄土(おんりえど、ごんぐじょうど)」を披露、日本の文化への深い理解と取り組みが高く評価されたが(ちなみに本作もこの新作とほぼ同時にハイレゾ配信が開始されている)、この新作『Art In Motion』は、国宝「松林図」「楓図」で大変人気の高い画家、長谷川等伯の作品をモチーフにした5曲からなる「長谷川等伯組曲」を中心に制作されたもの。石川県七尾市で子供たちにジャズを教えている守屋が、当地出身の画家、長谷川等伯を取り上げているのは重要だ。これはインタビューなどでも語っていることだが、一時ほとんど知られることのなかった長谷川等伯の芸術が今の時代に知られるようになったきっかけは、守屋の曾祖父が書いた論文であったという。まさに歴史の歯車がかみあったとしかいいようのない成果だ。後半4曲の、ジャズ・ジャイアンツに捧げるトリビュート・ナンバーとの対比も素晴らしい。


 アンビエントやドローン・ミュージックの佳作を多数リリースするアーティストであり、エンジニアでもあるChihei Hatakeyamaが主宰するレーベル、White paddy mountainはハイレゾ的にもつねに要チェックなレーベルなので、このコラムでも過去にいくつか紹介してきたのだけれど、今回も素敵な作品がハイレゾで登場だ。H.Takahashi……東京を拠点とする建築家であるいっぽう、イギリスのWhere To Now?、奈良のMuzan Editionsなどのレーベルからアンビエント作品をリリースしたり、また“アンビエント〜ニューエイジ〜テープカルチャー”を標榜するユニットUNKNOWN ME(メンバーは彼のほか、ラッパーのやけのはら、トラックメイカーのP-RUFF)での活動も行なうなど、ユニークな個性を誇るアーティストである。H.Takahashiのアンビエント、それはなんとiPhoneのアプリ、GarageBandをメインに使用して作られているというからなんとも現代的ではないか。H.Takahashiの、White paddy mountainからの初のリリースとなった新作『Low Power』(48kHz/24bit)を聴いて、僕はiPhoneのいくつかのアプリケーション・ソフトを思い出した。アンビエント・マスター、ブライアン・イーノが監修した「Bloom」「Scape」「Trope」「Reflection」……ここを読まれている方なら使ったことがある方もおられよう。簡単な操作で自動生成アンビエントを楽しめるソフトだが、この『Low Power』はまさにこれらのアプリから生み出される天国的なエレクトロニック・ミュージックの世界を思い出させるサウンドなのだ。もちろん、ここで鳴っている音響はもっと複雑なものだけれど、同時に非常にシンプルなきめも持っている。シンプルな音色が重なり合い、複雑なレイヤーを描きながら配置の妙を描き出していく。これを聴きながら、イギー・ポップの『ロー・パワー』を思い出す……いや、あっちは『Raw Power』(邦題:淫力魔人)、こっちは『Low Power』なのだが……しかし、このアルバムが持つパワーはけっして“Low”ではない。むしろ生々しい“Raw”だ。もちろん、リラックスするのには最適なアルバムである。だが、胸をざわつかせる力を持ったアルバムでもあるのだ。


 2018年はYES結成50周年という記念すべき年だそうである。いまだ現役で活動を続けるユニットで、ちょうど本稿執筆時には結成50周年を記念した北米ツアー中のはず。さすがにだいぶメンバーも変わってしまっているし、やはりなんといってもあのジョン・アンダーソンのハイトーンが今は聴けないのがこじらせファンとしてはなかなか難しいものがあるといえばあるんだけど(現ヴォーカリストのファンの方ごめんなさい)。しかし、彼らには素晴らしい遺産(いや、まだ現役なんですが……)たるアルバムが多数あるのだ。今回登場した本作は、フィジカルLPボックスのリリースとあわせてスタートしたハイレゾ(96kHz/24bit)配信である。選ばれたのはまさに彼らの黄金期といえる1971〜74年のアルバム5作品(LPとしては6枚組)。スティーヴ・ハウをギタリストに迎えた『サード・アルバム』(1971年)からリック・ウェイクマン(まもなく最新ソロ・アルバムをリリース予定!)をキーボードに迎え、「ラウンドアバウト」のヒットで各国でベストセラーとなった『こわれもの』(1971年)、史上最強のラインナップで完成されたプログレッシヴ・ロックの金字塔『危機』(1972年)、その後このボックスには収録されていないライヴ・アルバム『イエスソングス』(1973年)を経てLP2枚組の超大作となった『海洋地形学の物語』(1973年)、リック・ウェイクマンが脱退、代わってパトリック・モラーツをキーボードに迎えた『リレイヤー』(1974年)まで。ようするにYESのプログレ・バンドとしての最良の時間がつまっているわけですね。このボックスの目玉はなんといっても、自身ポーキュパイン・ツリーというユニットで活動するプレイヤーであると同時に、数々のプログレ名盤を、その音楽性を損なうことなく現代にフィットさせるおそるべきテクニックを持ったリマスタリング/リミックス・エンジニアでもあるスティーヴン・ウィルソンが全曲リマスタリングを手がけているということだ。2013年から2016年にかけて行なわれたウィルソンによるYESのリマスターは、とにかく“新鮮な響き”がすると同時に“これはこう響くべき”と聴き手を納得させる説得力があるという点で傑出している。YESの作品には複数のリマスターが存在するのだが、やはりスティーヴ・ウィルソンのそれは一味も二味も違うと言わざるを得ない。


 これはとてもうれしい便りが届いたぞ! オガワシンイチとショウヤマチナツによって1993年に結成されたsugar plant、じつに18年ぶりの新作である。インディ、音響、ポストロック、アンビエント、ディープ・ハウス。そしてベースはヴェルヴェット・アンダーグラウンド。ギャラクシー500やヨ・ラ・テンゴ、スロウダイヴ、マジー・スターといった英米のその後スロウコアやサッドコアともいわれるようになるジャンルのロック・バンドとも共振して、レイドバックしたトランシーなサウンドを聞かせて早くから海外でも高く評価され、アメリカ・ツアーも敢行していたsugar plant。96年に『trance mellow』、98年に『happy』という2枚のアルバムで当時彼らがハマっていたトランスの感覚を押し広げたアルバムを発表後、2000年にDRY&HEAVYやLittle Tempoのダブ・エンジニア、内田直之を迎えてディープ・ハウスやソウル、ボサ・ノヴァのテイストを取り入れた秀作『dryfruit』をリリース、そして映画『ピンポン』のサウンドトラックへの参加を果たしたあと、長い沈黙期間に入ってしまう。2008年にはライヴのみで復活するも、音源の制作までにはまだ時間が必要だった。2016年にはショウヤマチナツのユニットcinnabomのセカンド・アルバム『under the sun』がこれまた11年ぶりのリリースとなり、そしてやっと2018年、sugar plantの6作目となるアルバムが、このユニットとしては初のハイレゾ(48kHz/24bit)での配信となった。じつは一足先にショウヤマのソロ作がハイレゾ(96kHz/24bit)で配信されていたのではあるけど、やはり本家のリリースは待ってました感が強いですね。オリジナル曲ももちろん最高に気持ちいいメロウ・チルアウトだけど、ベン・ワット(エヴリシング・バット・ザ・ガール)のソロ「ノース・マリン・ドライブ」の、とろっとろにとろけそうなカヴァーはもう辛抱たまらん感じで最高。江森丈晃(ex.シトラス)によるアートワークも素晴らしいので、フィジカルも買っちゃおうかなと思ったりして。

ガーディナーが描き出す人間的なブラームス
文/長谷川教通




 いまもっともエキサイティングな指揮者は誰? といえば、若手や中堅、女性の進出など、次々と名前が挙がってきそうだが、忘れほしくないのがジョン・エリオット・ガーディナー。1943年生まれのベテランだが、そのアクティブなアプローチにはぜひ注目してほしい。
 ケンブリッジ大学で音楽を学びながら仲間たちとモンテヴェルディ合唱団を結成したのが25歳の頃。その9年後には古楽器アンサンブル、イングリッシュ・バロック・コンソートを結成し、20世紀後半の古楽器演奏ブームを牽引した先駆者だ。しかし、彼はいわゆるピリオド奏法の時代考証&再現といった博物館的アプローチや、ピリオド奏法への狭量な固執からは離れ、より柔軟で幅広い表現を追求し、1990年には古典派やロマン派への展開を意図したオルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティックを結成。その成果の筆頭にあげたいのがブラームスの交響曲全集だ。4曲の交響曲それぞれのアルバムに、ブラームスの声楽&合唱曲、さらに彼が影響を受けたベートーヴェンやメンデルスゾーンの作品を加えることで、聴き手にブラームス本来の音楽を提示したいという意図だろう。
 ブラームスといえばいかにも北ドイツといった暗さや重厚さがイメージされるが、ガーディナーの演奏はかなり鮮烈だ。重厚な響きに埋もれていた音がまるで靄が晴れたかのように描き出され、ブラームスの才気煥発な筆致が鮮やかに聴きとれる。才能あふれる青年のちょっとうぬぼれで、はにかみ屋で……そんな人間的なブラームスが目に浮かぶ。
 ガーディナーが目指したのは古楽かモダンかの二者択一ではなく、音楽が生まれたときの姿を活き活きと再現したい、そのためのツールが奏法であり、演奏スタイルだと考えているに違いない。長年の同志である合唱団との演奏はすばらしいし、ナタリー・シュトゥッツマンとの「アルト・ラプソディ」も感動的な名演だ。
 10年ほど前の60歳代半ばでの録音だが、これ以後ベートーヴェンやシューベルトの交響曲をはじめ、バッハの「マタイ受難曲」や「ロ短調ミサ」など、次々と新録音・再録音を送り出しており、その進化はとどまるところを知らない。


 コバケン節炸裂のドヴォルザークだ。ソロは2017年に読売日本交響楽団のソロ・チェリストに迎えられた遠藤真理。チェロ・セクションのリーダーがドヴォコンを弾いて、ライヴ録音するなんて、オーケストラにとっては誇らしく、その一方で実力がそのまま出てしまうわけで怖くもあり、そのうえ指揮者がチェコもの&ハンガリーものでは超の字が付く大物、小林研一郎とくればどこまで自己表現できるものか。オケの一員である以上、無茶なことはできないだろうし……などと気にしてみたが、チェロの最初の音が出た瞬間、これはいい! と身を乗り出してしまった。小林はいつものように情感たっぷりで、ひとつひとつのフレーズをていねいに振り、ここぞというところではテンポを落としてさらに想いを込める。まさにコバケン節なのだが、それを受ける遠藤のチェロが不思議なくらい伸びやかに旋律を歌いあげる。コバケン特有の粘っこさを受け止めて、それを清涼感のある歌に変換してしまうのだ。その化学反応が何とも魅力。チェロの音色には温かみがあって、雄大だが威圧的な要素はまったくない。春にボヘミアの平原を訪れると、なだらかな丘陵をおおう一面の黄色い菜の花が迎えてくれる……そんな懐かしさ。アンコールでは遠藤の希望でジョージアの作曲家アザラシヴィリの「無言歌」。チェロのソロとチェロ・セクションによる素敵なアンサンブルだ。


 ハイレゾ・クラシックの中でもこのアルバムは絶対に外せない! いまや実力・人気ともにトップランナーとして活躍するヴァイオリニスト、ユリア・フィッシャーによる2006年4月の録音だ。このとき彼女はまだ22歳だった。ええっ! と誰もが驚いてしまう。テクニックは抜群だし、音楽性もずば抜けている……それにしても何というフレッシュなヴァイオリンだろうか。
 音色のすばらしさや解像度の高さはもちろん、バランスのとれたオケの響きがいい。ピックアップされた楽器の音像とオケ全体の融合されたステレオ音場の描写が自然で誇張感がない。このあたりの音作りがさすがペンタトーン……と唸らされる。この名演がアルバム・ジャケットをリニューアルさせて再登場したのは嬉しい。しかも96kHz/24bitに加えDSF2.8MHz/1bitでダウンロードできる。つまり圧縮されていないDSD音源が手に入るわけだ。ディスク容量に制限されることのない“配信”ならではの優位性と言える。
 オケはロシア・ナショナル管、指揮は故ヤコフ・クライツベルクだ。2011年に51歳で亡くなってしまったが、これから! と期待されていた指揮者だけに残念。ベタベタした感傷性とは一線を画した手堅い指揮。どこかローカルっぽさを感じさせるが、第1楽章ではヴァイオリンから溌剌としたイメージを引き出そうと、巧みにテンポをコントロールして雄大な流れを描き、第2楽章でもチャイコフスキー特有の旋律を美しく際立たせる。終楽章のクライマックスにおける胸のすくような推進力もすばらしい。「なつかしい土地の思い出」ではピアノを弾き、フィッシャーと息の合ったデュオを聴かせている。


 『Seven Words from the Cross』はキリストが十字架上で語ったとされる“十字架上の7つの言葉”を意味する。この言葉をテーマにハイドンやシュッツなど多くの作曲家が感動的な作品を書いているが、ここでは“7つの言葉”にまつわる作品をさまざまな時代や地域から選び出し、キリスト最後の言葉を音楽によるタペストリーとして編み上げたアルバムとなっている。黒人霊歌の「Were you there?」が歌い出されると、あまりに美しいア・カペラに、もう聴覚が釘付け。男声のハミングとアルトのソロが紡ぎ出す声に魂が揺さぶられる。誰もが知っている「Amazing Grace」や「Deep River」からアメリカではよく知られたウィリアム・ビリングの聖歌、最後の「Just As I Am」まで、ゾクゾクするような声楽アンサンブルが聴ける。
 スカイラーク・ヴォーカル・アンサンブルは2011年にマシュー・ガードによって創設されたアメリカの室内合唱団。この透明感あふれるアンサンブルを録音したSono Luminusの技術も驚異的で、DACさえ対応しているなら、352.8kHz/24bit音源をオススメしたい。声の質感の高さ、圧倒的なS/N感、空気感の表現……第一級の録音だ。


 ケルティック・ウーマンが歌って大ヒットした「You Raise Me Up」って、じつはシークレット・ガーデンがオリジナル。ノルウェー出身の作曲家&ピアニストのロルフ・ラヴランドとアイルランド出身のヴァイオリニスト、フィンヌーラ・シェリーの2人で活動するユニット。ファースト・アルバムは1996年の『Songs from a Secret Garden』で、世界中で100万枚以上を売り上げたヒット作だ。「You Raise Me Up」は2002年のアルバム『Once in a Red Moon』に収録されていて、この曲をカヴァーしたアーティストはとても数え切れないほどの大ヒット。これほどのビッグネームなのに、Yahoo!やGoogleで“シークレット・ガーデン”と検索をかけてもヒットするのは、バーネット原作のミュージカルや韓国ドラマばかり。もちろん英語で検索すればヒットするけれど、ちょっと寂しいな。
 そんなとき彼らのコレクション・アルバムがリリースされ、88.2kHz/24bitのハイレゾ音源がダウンロードできるのだから、これは聴かねば。「You Raise Me Up」もやっぱりオリジナルはいい。「約束」はシンプルなピアノのメロディとヴァイオリンがほんとにきれい。「Song From a Secret Garden」はピアノ・ソロ・ヴァージョン。楽譜もたくさん出ているから、弾きたくなる人も多いだろう。アルバムの最後はファースト・アルバムに収録され、彼らが大ブレイクを果たすきっかけになった「Nocturne」。いつまでも聴いていたくなる。北欧やケルトの癒やし系が好きな人にはオススメだ。

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