こちらハイレゾ商會
第7回 ネットワークプレーヤーが落ち着くのは、オーディオDNAのせい? の巻
この連載の
第2回で、ハイレゾを聴くのに「PCオーディオ派」と「ネットワークオーディオ派」という、ふたつのタイプを挙げたが、今回はその「ネットワークオーディオ派」について書いてみよう。かくいう僕も、どちらかといえば「ネットワークオーディオ派」なのだから。
ネットワークオーディオは、PCやMacを使わないで再生できるのが特徴だ。
かわりに専用のオーディオプレーヤーを使ってハイレゾを聴く。簡単に説明すると、NAS(ナス)と呼ばれるハイレゾ音源を格納するハードディスクをネットワーク上に置いて、それを専用プレーヤーで再生するやり方が一般的だ。
パイオニアのN-50は、その代表的プレーヤーだ。コストパフォーマンスの高さで、最近のオーディオ界ではひさびさのヒット製品である。
あと、厳密にはネットワークオーディオとは呼ばないかもしれないが、いっそNASをなくし、プレーヤー内にハードディスクを内蔵したソニーのHAP-S1もある。これもひさびさにソニーらしい製品として大ヒットした。僕もこのHAP-S1を使用している。
このように、ハイレゾ業界が「パソコン抜き」で熱くなっているのが分かるだろう(とはいっても音源のダウンロードや、プレーヤーへの転送などで、あいかわらずパソコンは必要であるが)。
これらのネットワークプレーヤーで聴いていると、あらためてオーディオ的な「快適さ」を感じずにはいられない。それは、オーディオや音楽以外に余計なものがない「快適さ」である。
そもそも、パソコンの存在自体が音楽鑑賞に邪魔だと思うのは僕だけだろうか?
音楽の制作現場ならツールとして必要だろうが、音楽をリラックスして聴く部屋に、「お仕事臭」をプンプン発している自分のパソコンを視界に入れたくないのである。
パソコンでハイレゾ再生用プレーヤーを立ち上げているとき、ブラウザやメールがチラチラ目に入るのも落ち着かない。「ハイレゾを聴いているあいだもメール・チェック……」なんてことになりかねない。まるでお仕事で音楽を聴いているみたいではないか(実際、この連載のようにお仕事の場合もあるが)。
まあ僕はオーディオ好きとはいいながら、大きなアンプや反響板のたぐいはインテリアとしてどうかと思うからパス、というような男であるから、音よりもパソコンに神経をとがらせてしまうのかもしれない。
もちろん、パソコンにDAC(D/Aコンバーター)を繋げて聴くハイレゾの音質が素晴らしいことも知っているから、実際はパソコンでハイレゾを聴くことも多いのである。
それでもN-50やHAP-S1で聴いているとき、「この安心感はなんだろう?」と思ってしまう。
こう考えたとき、N-50やHAP-S1が「四角い箱」であることも関係があるのではないかと思った。
これまでのオーディオは、みんな四角い形が基本だった。僕のような昔のオーディオDNAを持つ人間には、音楽を聴きながら「四角い箱」を見ているだけで落ちつくところがあるのかもしれない。
まさかねえ……オーディオ精神分析に詳しい人がいたら訊きたいくらいだ。
まあ個人的な話はともかく、パソコン・オンリーではないトレンドは今後も続くと思う。
この4月にオンキヨーから発売されるネットワーク対応のAVアンプ、TX-NR636はパソコンに加え、スマートフォンでもDSD5.6MHzをはじめとしたハイレゾ音源を操作できるスグレものだ。ちなみに、このTX-NR636も「四角い箱」である(笑)。
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