こちらハイレゾ商會
第22回 ハイレゾ試聴会は楽し「ビートルズ編」の巻
先日ハイレゾ商會の第2回株主総会が開かれたので、そのご報告である。当日はオーディオ好き、 ビートルズ好きの方々、そして『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』好きの方々にたくさん来ていただいた(と思いたい)。
今回は本の出版記念をかねて“ビートルズ関連の曲”というメニューである。ただe-onkyoで配信されている曲で構成するという方針なので、現在音源が配信されているジョン、ポール、ジョージ、リンゴの曲を聴くことにした。
ビートルズ
『アビイ・ロード』より
「カム・トゥゲザー」
まずはオープニングとして、e-onkyoの配信ではないけれどもビートルズのUSBから1曲。
スペックは44.1kHz / 24bitながらも厚みのある音に定評があるUSBからビートルズ最後の録音。中学3年生のとき、『アビイ・ロード』を買って初めて「カム・トゥゲザー」を聴いたときは面食らったものだ。およそビートルズらしくないと思った僕はレコード店にとって返し、『サージェント・ペパーズ〜』に交換してもらったのだった。もちろん試聴会では昔の僕のように、「カム・トゥゲザー」で席を立つ方はいなかった(笑)。
ジョージ・ハリスン
『オール・シングス・マスト・パス』より
「マイ・スウィート・ロード」
ここからe-onkyoの配信からの選曲である。いずれも96kHz/24bit。「カム・トゥゲザー」の翌年には、こんな名曲が発売されていたのだから、当時のロックがいかに活力に満ちていたか分かる。しかし僕ら中学生にはこの曲と「美しき人生」しか、ジョージのレコードを聴くことができなかったのだ。いまやLP3枚組の『オール・シングス・マスト・パス』をハイレゾで一気に聴けてしまうのだから、オヤジになるのも悪くないなと思う。ハイレゾではギターの音がふくよかだ。
ジョージ・ハリスン
『オール・シングス・マスト・パス』より
「ワー・ワー」
続いて「ワー・ワー」。たとえハイレゾでも、この曲の“ダンゴ状態”は健在である。そうでなければ「ワー・ワー」ではない。昔から“綺麗は汚い、汚いは綺麗”という言い方があるように、フィル・スペクターがグロテスクなまでに音を重ねた「ワー・ワー」はとても美しい曲だと思う。その思いはハイレゾで聴いてますます強くなった。ただハイレゾでは、喉ごしがいい音になっているようだ。
ジョージ・ハリスン
『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』より
「ギヴ・ミー・ラヴ」
僕にとっては青春の思い出の曲。ギターのイントロを聴くと、今でも高校1年生の時に戻ってしまう。当時レコードから録音したScotchのオープンリール・テープが回転する風景が目に浮かぶ。ハイレゾで聴いてもそれは変わらない。
ジョージ・ハリスン
『ダーク・ホース』より
「ファー・イースト・マン」
ジョージの1974年作品。「ギヴ・ミー・ラヴ」の翌年に、こんなAOR風の曲が世に出ていたことが驚きだ。『ダーク・ホース』は当時はまったく聴かなかったけど、今聴くといいなと思うところが多い。ハイレゾではタイトル曲「ダーク・ホース」がツブ立ちの良い音と思ったが、曲のできでこの「ファー・イースト・マン」を選んだ。
ジョン・レノン
『ダブル・ファンタジー / ストリップド・ダウン』より
「スターティング・オーヴァー」
ここからジョンである。オリジナル・ヴァージョンの『ダブル・ファンタジー』と新たにミックスし直された“ストリップド・ダウン”ヴァージョンの2枚分が収録された『ダブル・ファンタジー / ストリップド・ダウン』のハイレゾだ。まずはオリジナル・ヴァージョンの「スターティング・オーヴァー」。相変わらず、ジョンのヴォーカルにせつなくなる。
ジョン・レノン
『ダブル・ファンタジー / ストリップド・ダウン』より
「スターティング・オーヴァー(2010 Remix)」
続いては“ストリップド・ダウン”ヴァージョンの「スターティング・オーヴァー」。バンド音が適度にカットされ、ジョンのヴォーカルがよりナマナマしくなった。“ストリップド・ダウン”ヴァージョンには賛否両論あって当然と思うけれど、僕は結構好きである。
ジョン・レノン
『ダブル・ファンタジー / ストリップド・ダウン』より
「ウーマン(2010 Remix)」
続いて「ウーマン」も“ストリップド・ダウン”ヴァージョンで。正規版のコーラスを伴うヴァージョンと違い、こちらはより親密に聴く感じである。ハイレゾの解像度も“ストリップド・ダウン”ヴァージョンでより鮮明になると思う。以上で第1部が終了である。ここで休憩。
リンゴ・スター
『ポストカーズ・フロム・パラダイス』より
「ポストカーズ・フロム・パラダイス」
第2部はリンゴ・スターから。リンゴのハイレゾ配信は残念ながら、今のところ2015年の最新作『ポストカーズ・フロム・パラダイス』のみである。今回はそこからタイトル曲。この曲は歌詞にビートルズの曲名がちりばめてられているところが特徴。それもハンバでない数だ。ハイレゾの音とビートルズの曲名を同時に追いかけて聴いてほしい。
ポール・マッカートニー
『ポール・マッカートニー』より
「エヴリナイト」
ビートルズのアルバムでは、たいがいリンゴが歌うのは1曲なので(笑)、続いてポールにいこう。まずファースト・アルバム『ポール・マッカートニー』から「エヴリナイト」。昔『ポール・マッカートニー』を聴いた時は、本当にホームメイドな感じがして、あちこちに“のりしろ”が見えるような気がしたものだが、ハイレゾで聴く『ポール・マッカートニー』はガッシリとした音楽に感じてしまう。
ポール・マッカートニー
『RAM』より
「アンクル・アルバート〜ハルセイ提督」
『RAM』は級友から借りたLPを、オープンリールで録音して聴いていたので、今でもジャケットなしでも大丈夫なアルバムある。だからハイレゾでも僕には十分に楽しめる。オープンリールでも至極のメドレーだった「アンクル・アルバート〜ハルセイ提督」をハイレゾで堪能したい。
ポール・マッカートニー
『「007 死ぬのは奴らだ」OST』より
「007 死ぬのは奴らだ」
ハイレゾで迫力の音を満喫できると思う。ハイレゾでは一体化していたジョージ・マーチンの制作したオーケストラ部分とバンド部分の空気感の違いが感じられるところが面白い。それを逆に“当時は編集技術を駆使して、頑張って作ったのだなあ”と感心してしまうのである。
ポール・マッカートニー
『バンド・オン・ザ・ラン』より
「ブルーバード」
名作『バンド・オン・ザ・ラン』からは、ハイレゾ試聴会ということもあって、アコースティックなこの曲を選んだ。ヴォーカルやギターが聴きどころかと思う。
ポール・マッカートニー
『ヴィーナス・アンド・マース』より
「あの娘におせっかい」
「あの娘におせっかい」の収録された『ヴィーナス・アンド・マース』で、『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』は終わる。当時、このアルバムを最後にポールとは距離を置くようになった。でも今は逆に、この『ヴィーナス・アンド・マース』から、ポールの作品を聴き直しているところである。当時は軽々しく思えたこの曲も、今では無心に楽しんでいる。ハイレゾなら、なおさらである。
ポール・マッカートニー
『スピード・オブ・サウンド』より
「幸せのノック」
ビートルズのメンバーのソロ・アルバムで、いちばん気に入ったハイレゾはこれ。「幸せのノック」という邦題のこの曲は、今までどうってことなく聴いていたのに、ハイレゾで聴くやすごく好きになってしまった。とくにウォームな音が気に入っている。
以上で第2回株主総会の報告を終わることにしよう。全体を聴いて感じたのは、ビートルズのメンバーのソロ作品はハイレゾが非常にシックリしていることである。とくに70年代の作品はハイレゾと相性がいいように思う。ぜひ聴いてみていただきたい。また、できれば第3回目の開催もしたいと思う。お楽しみに。