こちらハイレゾ商會
第24回 ハイレゾ・ディスコの一夜
今回は架空のディスコの話を書いてみようと思う。いつかこんなディスコが誕生することを期待しながら読んでもらいたい。
店の名前は“ハイレゾ・ディスコ”としようか。70年代から80年代の雰囲気を残した店内にはミラーボールが回っている。しかしレトロなのは雰囲気だけである。名前のとおり、ここはハイレゾの曲をかけるディスコなのだ。さっそくハイレゾ好きのガールフレンド、配レゾ子と行ってみた。
店では惜しくも近年亡くなったドナ・サマーの曲でみんなが躍っていた。ドナ・サマーのアルバムの多くがハイレゾで配信されているのだ。在りし日の“ディスコ・クィーン”の歌声を聴いて胸がジーンとしているあいだに、配レゾ子はもう踊りはじめている。
「Bad Girls」ではディスコ特有のリズム“ボス、ボス”が重厚に刻まれる。ディスコに関しては今まではノリが大事と音質にはあまり気にしなかったが、ハイレゾだとまるでスティーヴ・ライヒのミニマル・ミュージックのように我が道をいく“ボス、ボス”になる。説得力がある。これが192kHz / 24bitで聴くディスコというものか……。
「こんなにいい音なんだから、あなたも踊りなさいよ」。配レゾ子の声で我に返った。おっしゃー、昔スポーツ・クラブで3ヵ月かじったダンス・レッスンの腰つきを見せてやる、と僕もフロアに飛び込んだ。
曲は「I Remember Yesterday」になった。「懐かしいなあ。学生の頃、このサックスのアレンジが大好きでネ」と言うと、「アンサンブルが凝っているだけに、ハイレゾだとシットリ感を感じるわね」と、ハイレゾ好きの配レゾ子らしい答えである。
そこで曲調が変わり、パララララ〜とトランペットの甘い調べが流れてきた。うおお、これまた懐かしい、スタイリスティックスの「愛がすべて」。これは“K2HDプロセッシング”という技術で16bitのオリジナルからハイレゾ化したものだ。そのおかげでスタイリスティックスの数々の名曲もハイレゾで聴けるのだ、ありがたい。
「スタイリスティックスってロマンチックね」と初めて聴く配レゾ子はうっとりである。「スタイリスティックスのヒット曲の多さはカーペンターズやCCRなみだよ。ハイレゾが聴ける携帯プレーヤーで聴いたら病みつきになるよ」とまたまたオヤジのウンチクを披露した。
ここでチーク・タイムである。スタイリスティックスの名バラード「祈り」にあわせて、僕と配レゾ子は身体を寄せ合った。“レッツ、プリオーン、トゥギャザー?”というファルセット・ボイスが温かく響く。ずっとこのままでいたい。
と、ここで日本人が歌うディスコが流れはじめた。岩崎宏美の「センチメンタル」だ。これも“K2HDプロセッシング”によるハイレゾである。もう少しチーク・ダンスをしていたかったけれど、岩崎宏美のアルト・ヴォイスがハイレゾで聴けるのなら許そう。
そしていよいよクライマックス。今やディスコの定番曲となったボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」だ。これも“K2HDプロセッシング”によるハイレゾである。有名なイントロが流れるや、配レゾ子はフロアの中央に飛び出した。僕もこの曲にはお世話になった世代だ。躍るぞ!
ハイレゾの「君の瞳に恋してる」は9分以上もある長いヴァージョンである。もうノリノリが止まらない。聴くのもよし、踊るのもよしだったディスコが、ハイレゾになって、ますます脳を刺激するのだった。ボス、ボス、ボス、ボス。
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「Bad Girls」
ドナ・サマー
『Bad Girls』より
「I Remember Yesterday」
ドナ・サマー
『I Remember Yesterday』より
「愛がすべて」「祈り」
スタイリスティックス
『愛がすべて〜スタイリスティックス・ベスト【K2HD】』より
「センチメンタル」
岩崎宏美
『GOLDEN☆BEST【K2HD】』より
「君の瞳に恋してる」
ボーイズ・タウン・ギャング
『君の瞳に恋してる〜ベスト・オブ・ボーイズ・タウン・ギャング【K2HD】』