こちらハイレゾ商會
第25回 POPCONの曲は個性派俳優のよう
1970年代から80年代にヤマハが主催していた“ヤマハポピュラーソングコンテスト”は、通称“POPCON(ポプコン)”と呼ばれ、ニューミュージック系のヒット曲を数多く送り出した。そんなPOPCONの代表的な20曲がハイレゾになって配信された。これは第1弾らしいが、どれも懐かしい曲ばかりだ。
クリスタルキングの「大都会」は冒頭の気持ちよいフレーズを、歌えないと知りつつも真似していた。円弘志の「夢想花」には「“飛んで、飛んで”と何回言っているのだ?」と苦笑いした。ほかにも八神純子の「みずいろの雨」、ツイストの「燃えろいい女」、高木麻早の「ひとりぼっちの部屋」などを聴いているとヒットした頃の思い出が蘇ってくる。
しかしこれらは決して“懐かしの歌謡曲”で終わってはいない。それが今回ハイレゾで聴いて思ったことだ。今聴くと、曲の個性に圧倒されまくりなのである。最近のJ-Popは応援歌的というか、健康的な歌が多いから余計にそう思うのかもしれない。
なかには個性を通り越して、“情念”とさえ思える曲もある。たとえば、あみんの「待つわ」。しかし「待つわ」はもともと女の自虐的な思いを歌っていた曲だから、それほど驚くわけではない。
腰を抜かしたのは、もとまろの「サルビアの花」である。今で言う(当時はそんな言葉はない)ストーカー男の女々しい情念がコッテリと歌われる。が、メロディとヴォーカルは絶品だ。「これこそ人間の吐き出す感情(歌)だよなあ」とホレボレしてしまう。
僕にとって“永遠のお姉様”である門あさ美の「月下美人」もそうだ。都会的なサウンドである。しかし門あさ美のヴォーカルは動物的で、妖しい色気がたっぷりだ。「恋心を歌うなら、これくらいセクシーに攻めてこなくちゃウソでしょ」と思う。
つまるところクリスタルキングから門あさ美まで、POPCONの曲は個性派俳優のようなものだと思う。当時はあたりまえのように聴いていたが、驚くべきことに、その輝きは今のほうが数倍も増している気がする。ハイレゾで出たのを機会に濃厚な音楽を堪能してもらえたらと思う。
配信は1曲ごとのダウンロードである。どれを選ぶかはお好みであるが、音質で選ぶなら因幡晃「わかって下さい」、NSP「夕暮れ時はさびしそう」がアナログ・ライクな音に仕上っているように思えた。
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クリスタルキング
「大都会」
円弘志
「夢想花」
八神純子
「みずいろの雨」
ツイスト
「燃えろいい女」
高木麻早
「ひとりぼっちの部屋」
あみん
「待つわ」
もとまろ
「サルビアの花」
門あさ美
「月下美人」
因幡晃
「わかって下さい」
NSP
「夕暮れ時はさびしそう」