こちらハイレゾ商會
第26回 ハイレゾ配信でも“ジャケ買い”はあるの?(クラシック編)
この連載を始めた2年前にくらべるとハイレゾ配信はかなり一般的になった。少なくともオーディオ・マニアの間ではCDやアナログ・レコードと並ぶ選択肢のひとつになったと思う。ではそこまで一般的になったのなら、ハイレゾ配信にも“ジャケ買い”はあるのだろうか?
一応ハイレゾ配信にもジャケット画像はある。しかしパソコンのディスプレイ上で数センチほどの大きさだ。LPのジャケットはおろか、“ジャケットに面白みがない”と言われたCDにさえ及ばない。はっきり言ってジャケットというよりアイコンである。そんなアイコンだけを見て、はたして“買っちゃおうかな”と思うだろうか?
僕の場合、答えは“イエス”であるから、まったく音楽好きの脳内構造は、LPの時代からじつは何も変わっていないのではないかと思う。
その一方でムターの弾き振りによる
『モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲全集』のジャケットにも惹かれた。庇護者カラヤンの亡き後、成熟したムターが人魚みたいなドレスを着ている。10年前のCD発売時は、通俗的なジャケットだと敬遠していたが、今、ハイレゾ配信の画像で見るとちょうどいい塩梅だから不思議だ。これまた、ポチしちゃおう。
レージネヴァは1989年生まれというから、現在20代半ばの立派な女性である。けれども童顔だ。なので声も澄み渡ったボーイ・ソプラノのような声を想像していた。しかしハイレゾを聴いてみると、見事なまでに想像を裏切って、太い声である。いくらソプラノの音域にしても、ここまで貫禄のある声を誰が想像できようか。
こういう意外性も“ジャケ買い”の面白さで、それはハイレゾでも変わらない。ちなみにレージネヴァのハイレゾはほかにも
『アレルヤ〜4つのモテット集』などがある。彼女の歌声に魅せられたら、こちらも聴いてみてはいかがか。
ジョン・バット指揮ダンディン・コンソートの
J.S.バッハ『クリスマス・カンタータ集 / マニフィカト』もジャケ買いしたくなるハイレゾだ。Linnからリリースされるバッハの声楽曲は、どれも緊張感のある宗教絵画が使用されている。ここでも暗闇から浮き上がる人物像が秀逸だ。演奏も素晴らしい。少人数の合唱がナマナマしいほどに迫ってきて、この“ジャケ買い”も成功だった。
今回はクラシックの“ジャケ買い”を書いてみたが、もちろんポップスのハイレゾでも“ジャケ買い”をしてしまうことだろう。機会があればいつかポップス編も書いてみたいと思う。
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アンネ = ゾフィー・ムター(vn)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンpo
『ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲』
(1979年録音)
アンネ = ゾフィー・ムター(vn, 指揮)
ロンドンpo
『モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲全集』
(2005年録音)
ユリア・レージネヴァ(S)
ジョヴァンニ・アントニーニ指揮
イル・ジャルディーノ・アルモニコ
『ヘンデル: アリア集』
(2015年録音)
ユリア・レージネヴァ(S)
ジョヴァンニ・アントニーニ指揮
イル・ジャルディーノ・アルモニコ
『アレルヤ〜4つのモテット集』
(2012年録音)
ジョン・バット指揮
ダンディン・コンソート
『J.S. バッハ: クリスマス・カンタータ集 / マニフィカト』
(2014年録音)