こちらハイレゾ商會
第3回 携帯プレーヤーでハイレゾ! の巻
ハイレゾ音源を聴く目的は、「高音質で音楽を聴く」ためであろうから、たいがいの人は、それなりのオーディオ・システムで再生していることだろう。でも、アンプとスピーカーで聴くだけが音楽の楽しみ方ではない。携帯プレーヤーとヘッドフォンで聴くのも音楽の楽しみ方だ。
ということで今回は「ハイレゾ音源を、携帯プレーヤーで聴こう!」という話である。
いまやハイレゾ音源に対応した携帯プレーヤーは多い。ソニーのウォークマンもハイレゾ音源に対応している。
また、iPhoneやiPod touch、iPadでも、ONKYOのアプリ「HF Player」をインストールすれば、ハイレゾを聴くことができる。(ただしiPhoneの規格のため、イヤフォン端子からは48kHz / 16bitにダウンサイズされて出力される)。
今回はその「iPhone + HF Player」と、iriverの携帯プレーヤー「Astell & Kern AK120」を使ってハイレゾを聴いてみた。ヘッドフォンは僕がいつも愛用しているソニーのMDR-CD900STである。
e-onkyoにアップされたばかりの、名盤のハイレゾ化である。
お目当てはホルストの『惑星』(1970年録音)だ。このスタインバーグ指揮の『惑星』が大好きなクラシック・ファンは多いはず。なかでも、こんな「火星」は聴いたことがない。クラシックなのにスウィングしているかのように躍動的だ。
iPhoneのHF Playerで聴くとやわらかい空間が耳のまわりにひろがる。ヘッドフォンでもオーケストラの響きを繊細に感じる。トゥッティでも耳に強くあたらないやわらかさである。
続いては1970年にリリースされた、シカゴのセカンド・アルバム『シカゴII』。
これもe-onkyoの音源。こちらはAstell & Kern AK120で聴いた。
大ヒット曲「長い夜」はアナログ録音らしい、厚く、弾力のある音。とくにバスドラがすごい。「昔、LPで聴いていたシカゴは、こんなにスゴかったっか!?」と思う。ブラス・ロックのパワーが全開だ。
しかし、音楽は暴れまくっているのだが、空間は澄んだ水面のようにクリアだ。昔なら耳もとでガンガン鳴ったであろうヘッドフォンの音が、ハイレゾでは音圧を感じないのだから驚きだ。ロックといえども、ハイレゾでは耳あたりがいい。ヴォリュームをどんどん上げられる。
最後はチック・コリアとリターン・トゥ・フォーエヴァーだ。1972年録音の、この名盤のハイレゾ音源もe-onkyoに登場している。同じくAstell&Kern AK120で聴いた。
この頃のチック・コリアといえば、水晶のような「クリスタル・サウンド」が有名だった(だから古くからのジャズ・ファンには認められなかった)。
その「クリスタル・サウンド」が、ハイレゾで聴くと、ほんとうに「クリスタル」である。当時のLPはアナログ特有の歪みとノイズが混じっていた。「もっとクリアになってくれ」と念じて聴いたものだが限界があった。それがハイレゾでは、混じり物のないクリアな空間となる。
それでも音の厚みは、しっかりと感じた。
フェンダー・ローズはウォームでありながらワイルドである。ベースはコンパクトながら、キビキビと動く。ヴォーカルとサックスには「コク」があった。ハイレゾで聴くと、意外にも「クリスタル・サウンド」が、血肉の通ったアナログ音であったと気づくのだ。
携帯プレーヤーで聴くハイレゾは、繊細な空間が出現し、やわらかい音圧であった。音は襲いかかってこないで、耳のまわりに心地よく漂う感じだ。それが微粒子というのだからたまらない。携帯プレーヤーで場所を選ばずハイレゾを楽しんでみてはいかがか。