[こちらハイレゾ商會] 第35回 祝!ソニーミュージックのハイレゾ配信スタート その1 〜J-POP、洋楽のハイレゾ〜
掲載日:2016年08月09日
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第35回 祝!ソニーミュージックのハイレゾ配信スタート その1 〜J-POP、洋楽のハイレゾ〜
絵と文 / 牧野良幸
 ソニーミュージックのタイトルのe-onkyoでのハイレゾ配信が始まった。音楽ファンならご存じのとおり、ソニーミュージックにはビッグ・タイトルが目白押しだ。なので特集として2回にわたって、ソニーミュージックのハイレゾをあげてみたい。今回はまずJ-POPと洋楽のハイレゾである。
五輪真弓
『少女』


(1972年)

 ソニーミュージックといえば、以前の会社名であるCBSソニーについて書かないわけにはいかないだろう。洋楽ファンにとってCBSソニーのマークは輝いていた。そのマークが日本人のデビュー盤に付いていたのだから事件だった。さらに“アメリカで録音”とか“キャロル・キングも参加”とか、当時の日本人には夢のような文句が躍った。ここまで舶来の印象で攻めておきながら、タイトルは日本語でズバリ『少女』。カッコよかったあ。
 ハイレゾで聴く『少女』はふくよかなアナログ風サウンドである。昔のLPがハイクオリティになって現れたようだ。とくにスネア・ドラムのくしゃっとした鳴り方はいかにも70年代風で、聴いていて心地よい。五輪真弓のハイレゾとしてはライヴ盤『冬ざれた街』もいつかリリースしてほしいものである。
ポール・サイモン
『ライヴ・サイモン』


(1974年)

 洋楽ファンなら当時“CBSソニー = サイモン・アンド・ガーファンクル”だったのではないか。そのS & Gの全アルバムのハイレゾがe-onkyoで配信された。さらにポール・サイモンのソロ・アルバムまでハイレゾ配信されたのだからたまらない。本作はポール・サイモンが74年にリリースしたライヴ・アルバム。1stの『ポール・サイモン』と2ndの『ひとりごと』までの活動を集大成したライヴだ。
 LP時代はライヴ盤ということで、スタジオ・アルバムより音質的に下に見ていたけれども、ハイレゾは思った以上に高音質である。まるで最前列で聴いているかのように、楽器が大きくスピーカーの前に現れる。最初の「僕とフリオと校庭で」でのサイモンのギターはスタジオ・アルバム以上の生々しさではあるまいか。
バーブラ・ストライサンド
『追憶』


(1974年)

 これもジャケットを見たらCBSソニーのマークが思い浮かぶアルバム。「追憶」はあまりに有名な曲であったが、当時のロック小僧にとって、バーブラ・ストライサンドは違う世界の人に思えて手が出せなかった。オヤジとなった今、気後れせずハイレゾでこのアルバムを聴けるのだから、歳を取るのもそんなに悪くないと思う。
 タイトル曲「追憶」を待たずに、1曲目の「Being At War With Each Other」からノックアウト。ハイレゾではヴォリュームを上げても煩わしく感じない。オーディオ・ファイルには非常に美味しい音質だと思う。音のエッジに適度の柔らかさがあり、ヴォーカルにも深みがある。バーブラの歌声を堪能できるハイレゾだ。
『「サウンド・オブ・ミュージック」オリジナル・サウンドトラック50周年記念盤』

(1965年)

 当時はどこの家庭にもあったレコードではあるまいか。あの頃はロック小僧でさえ映画のサントラ盤を聴くのは普通のことであった。音楽リスナーが局所的になるのはこのあとからである。
 ジャケットを見れば自然と思い出すのは“RCA”の文字であるが、現在はソニーミュージックの傘下なので、今回めでたくハイレゾで聴けるわけである。さらにオリジナルLPよりも収録曲が多い。映画ではセリフのバックに流れていたオーケストラ曲とか、同じ曲をもう一度ちょっと変えて歌ったものなど、全部入っている。文字どおりのサントラになってのハイレゾ登場だ。
 録音は古いものの、ハイレゾではやはりその解像度に驚かされた。ジュリー・アンドリュースの歌うメロディラインが、クッキリと山の稜線のように追いかけられる。ヴォーカルがビシッと決まるものだから「ドレミの歌」や「私のお気に入り」などを聴いても、映画のシーンを飛び越えて音楽そのものに引き込まれてしまう(これ、褒めています)。逆に今までLPに入っていなかったオーケストラ曲とか、トラップ一家が脱出前にザルツブルグの観客の前で歌う「さよなら、ごきげんよう(リプライズ)」などを聴くと、どっと映画のシーンが思い浮かんだ。
松田聖子
『風立ちぬ』


(1981年)

 70年代のCBSソニーを代表するアイコンがサイモン・アンド・ガーファンクル(ほか多数)としたら、80年代のCBSソニーのアイコン的存在は松田聖子で間違いないだろう。81年発売の本作は大瀧詠一や鈴木 茂、そして作詞の松本 隆の参加により、いまや聖子ファンだけでなく、日本のロック・ファンにも重要なアルバムになった。とくにLPではA面の、大滝詠一プロデュースによるナイアガラサウンドに、いまだハイレゾで出ていない『A LONG VACATION』の面影が探れて興味深い。
 そのハイレゾであるが、アナログ風の温かみのある音質。そこに80年代初期らしい端正な音が現れる。ナイアガラサウンドはスピーカーから雄大に広がり、まあ細かい楽器がよく聴こえること。こうしてハイレゾで聴くと、一音として無駄のないサウンド作りに驚かされる。そんなパーフェクトな伴奏をけっしてこわさない松田聖子の歌唱力もたいしたものだと思う。LPのB面にあたるトラックでは松田聖子のヴォーカルの伸びやかさが印象的だった。
佐野元春
『Sweet 16』


(1992年)

 最後は佐野元春が1992年発表した作品。エヴァーグリーンな『SOMEDAY』や革新的な『VISITORS』でなく、このアルバムを選んだのはCDで発売された時から、ひとえに大好きだったからである。ハイレゾで『Sweet 16』の自然体のポップでありながら、過激なサウンドをちりばめた音楽を聴いてみたい。もちろん『SOMEDAY』も『VISITORS』もハイレゾで聴きたいものであるが(実際『VISITORS』のハイレゾはすごく良かった)。
 その『Sweet 16』、ハイレゾではCDの音の攻撃性(ロック度)は残しながらも、スピーカーの前に滑らかに広がる音場がたまらない。こうしてハイレゾで聴くと、過激な音作りをしながらも、その実、細部まで丁寧に作られたサウンドにあらためて感心してしまう。ハイレゾで、より飽きないアルバムになった。
 今回は、さすがにソニーミュージックのタイトルだけあって、熱く書いてしまった。次回はソニーミュージックのジャズとクラシック、それもDSD(DSF)配信のものを取り上げる予定だ。お楽しみに。
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