こちらハイレゾ商會
第37回 “ナイアガラ・サウンド”が怒濤に流れるハイレゾ・プレイリスト
大瀧詠一が亡くなって、もうじき3年になろうとしている。その間にベスト盤『Best Always』や『DEBUT AGAIN』などが発売された。しかしそれらはCDとかアナログで発売されただけで、ハイレゾはリリースされなかった。残念である。
現在、大瀧詠一のソロ作品のハイレゾはなく。わずかに、はっぴいえんどの2枚のアルバムだけという寂しさだ。誰もが聴きたいと思っている『A LONG VACATION』はいつになったらハイレゾで出ることだろう……。
ここはじっと待つしかないのであるが、その日が来るまで、大瀧詠一が80年代にアイドルに提供した楽曲のハイレゾを集めて、疑似的ではあるが大瀧詠一をハイレゾを聴いている気分になってみようと思う。曲はプレーヤーのプレイリストで組んでもいいし、FLACタグを編集して一枚のアルバムを作ってもいい。
しかしどうせ“疑似アルバム”を編むのなら、『A LONG VACATION』に近づけて曲を並べたら面白いのではないか。つまり『A LONG VACATION』に収録されている順番どおりに、雰囲気の似た曲を当てはめていくのだ。
さっそくe-onkyoで大瀧詠一が提供した楽曲のハイレゾをリストアップしてみる。出てきたのは、有名な松田聖子のアルバム『風立ちぬ』のアナログのA面にあたる最初の5曲。それから薬師丸ひろ子「探偵物語」や小泉今日子「怪盗ルビイ」があった。あとは大田裕美の「さらばシベリア鉄道」があれば『A LONG VACATION』に近くなり、バッチリなのだが、残念ながらハイレゾはまだない。そこで吉田美奈子の「夢で逢えたら」のハイレゾを代わりに選んだ。
ジャーン! こうなった。まずはアナログのA面である。参考までに各曲の右に『A LONG VACATION』にあたる曲を記しておく。
1. 冬の妖精(松田聖子) 「君は天然色」
2. 四月のラブレター(松田聖子) 「Velvet Motel」
3. 風立ちぬ(松田聖子) 「カナリア諸島にて」
4. 一千一秒物語(松田聖子) 「Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語」
5. Rock'n'roll Good-bye(松田聖子) 「我が心のピンボール」
歌うのは全部、松田聖子。2枚のアルバムからの選曲なので統一感がとれている。つづいてB面はこうである。
1. 探偵物語(薬師丸ひろ子) 「雨のウェンズデイ」
2. ガラスの入江(松田聖子) 「スピーチ・バルーン」
3. 快盗ルビイ(小泉今日子) 「恋するカレン」
4. いちご畑でつかまえて(松田聖子) 「FUN×4」
5. 夢で逢えたら(吉田美奈子) 「さらばシベリア鉄道」
薬師丸ひろ子の歌う「探偵物語」から始まるところが、レコードのB面に変わった感じが出てグッド。そのあと松田聖子、小泉今日子と流れるが、ヴォーカルの違いが気にならないほどに、各曲は“ナイアガラ・サウンド”が支配的だ。すごい、すごい。唯一録音年代が古い「夢で逢えたら」も、“ナイアガラ・サウンド”でなんとか不自然ではなくつながるのだから驚いてしまう。
全体を聴いてみて、やはり“ナイアガラ・サウンド”に圧倒される。それもハイレゾでは高揚感がさらに高まった。こだわって入れた小さな楽器音さえ明瞭に鳴る。個性的な4人の歌手も、あたかも大瀧詠一のバンドでヴォーカルを交代で取っているかのように楽曲に溶け込んでいる。
思いつきでこんな企画を考えたのに、この10曲の統一感はハンバない。あたかも一枚のアルバムであるかのようだ。思わぬものができあがってしまった。
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松田聖子
『風立ちぬ』
「冬の妖精」「風立ちぬ」「一千一秒物語」「ガラスの入江」「いちご畑でつかまえて」収録
(1981年)
松田聖子
『Candy』
「四月のラブレター」「Rock'n'roll Good-bye」収録
(1982年)
薬師丸ひろ子
『ハイレゾxベスト 薬師丸ひろ子』
「探偵物語」収録
小泉今日子
「怪盗ルビイ」
(1988年)
吉田美奈子
『FLAPPER』
「夢で逢えたら」収録
(1976年)