7月23日にリリースされたシングル「名前の無い恋」は、秋元順子の大ヒット曲「愛のままで…」の作曲家、花岡優平が手掛けた作品。今回は歌謡曲ということもあり、音羽しのぶとして演歌を歌っている時とは違う印象で聴くことができる一枚。切ない恋愛模様をしっとりと歌い上げる本作について話を訊いた。
【しのぶ ライヴ動画】
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――デビューから約8年間は演歌を歌ってこられたわけですが、7月23日にリリースされた新曲「名前の無い恋」は、“音羽しのぶ”から“しのぶ”という名前に変えて、歌謡曲を歌うことになりましたね。
「音羽しのぶというと演歌のイメージがあるので、今回のような歌謡曲を歌うときは名前を変えた方がいいかなと思って。それで、“しのぶ”という名前にしました。演歌の音羽しのぶも同時進行ですけどね」
――「名前の無い恋」を初めて聴いたときは、どういう印象でした?
「なんて美しい歌なんだろうと思いました。物語的には決してハッピーな恋愛ではないですけど、人を好きになるってこういうことなのかなって思える曲ですね。これを聴くと自分も恋をしたいなって思います(笑)。曲の背景には不倫というものがあるとは思うんですけど、感じ取れるのはそれだけでなくて……。恋愛って、片想いでも自分のためになると思うんですよね。“もっと自分を磨いて”っていう気持ちが生まれることは大事だと。この曲は、人それぞれ、いろいろな感じ方ができる曲だと思います。メロディは綺麗なので、不倫のドロドロ感もないですしね」
――初めて歌うとき、どのように楽曲に挑みました?
「自分の等身大で挑もうと思ってました。こういうメロディがここにくるなら、この方がいいとか、そのときの感覚を大事にしてましたね」
――歌い方は当然、演歌を歌うときとは変わりますよね?
「新曲を聴いていただいた方から、“今までと印象がまったく違う”ってよく言われるんですけど……。自分のなかではあまり意識はないんですよね。自然にイントロを聴くとスイッチが入るんですよ。“演歌を歌っている人なのにコブシが入らないんですか?”って言われるんですけど、そういう曲ではないんですよね。コブシが入れやすいのはいわゆる“ど演歌”と言われる王道のものですよね」
――そもそも、歌謡曲でもあるこの曲を歌うことになったきっかけは?
「事務所もスタッフも含め、“今話題になっている花岡優平先生に書いてもらいたい!”というところからでしたね。それで、花岡先生が作ってくださった楽曲の中から、周りのみんなも“絶対、これだ!”と思ったものが〈名前の無い恋〉だったんです。それからカップリングでこの曲に合う曲をもう1曲作らなきゃいけないってことで、〈愛はときおり…〉を作って、花岡先生にもハモっていただいたんです。詞はすごい悲しいのに、なぜか温かい感じがする曲ですね」
――レコーディングの時に、なにかエピソードはありましたか?
「〈名前の無い恋〉を私が歌ったあとに花岡先生が目頭を押さえて泣かれてたんですよ。“俺は人の歌を聴いてレコーディング・スタジオで泣いたのは初めてだ”って言って。本当に純粋な先生なんです。私ももらい泣きしてしまって(笑)。“しのぶを見てるとそんなこと思わないんだけど、声だけ聴いてると涙が止まらなくなって”と。あと、“主人公が浮かぶ”って言われてました」
――たしかに「名前の無い恋」もストーリー性があって、映像が鮮明に浮かぶ曲です。「愛はときおり…」は、深い絆を感じながらもそれが切なく伝わってくるストーリーですね。
「この曲の主人公は30代くらいの女性で、ご主人が交通事故かなにかで急死しちゃうんです。その主人公が公園で老夫婦を見ながら回想しているストーリーで。だからストレートに歌いたいというか……。この曲は、“淋しいんだけど、温かい気持ちでご主人を思い出している歌だからね”って先生にも言われて。自分には主人はいないですけど、もしそういうことになったら辛いだろうなって考えてしまいますよね。すごく綺麗なストリングスで、〈名前の無い恋〉とは印象は違うんですけど、じっくり聴いていただきたい曲ですね」
取材・文/清水 隆(2009年6月)
次回、Interview Vol.3
profile
幼い頃から歌手を目指し、水森英夫の内弟子として入門。その後、2001年に音羽しのぶとしてキングレコードから「しのぶの渡り鳥」でデビュー。同年の「日本レコード大賞」で新人賞を受賞。その後もコンスタントにオリジナル曲を発表しつつ、「日本有線大賞 有線音楽賞」など数多くの賞を受賞。そして、2009年7月、“しのぶ”名義でリリースされた新曲「名前の無い恋」は“歌謡曲”に。秋元順子の大ヒット曲「愛のままで…」の作曲家、花岡優平が手がけていることでも話題となる。8月26日にはさまざまなカヴァー曲も収録されたミニ・アルバム『しのぶリメンバー「名前の無い恋」』もリリース。