――8月26日リリースのミニ・アルバムには、「名前の無い恋」と「恋はときおり…」の他に、カヴァー曲も収録されてますね。そもそも、どういったいきさつでカヴァー曲が収録されたんですか?
「自分のショーのなかで、今までに高橋真梨子さんとか、山口百恵さんとかの曲を歌ってたことがあったんです。音源にもなってる曲もありますけど、歌謡曲ということで、カヴァー曲を入れるのもいいかもしれないということになって」
――収録された8曲のカヴァー曲の中で6曲は新録ですが、どういう基準で選曲したんですか?
「私の好きな曲をリストアップして、最終的にディレクターさんが選びました。今まで歌っていたのが演歌だったので、新しいしのぶを展開していきたいということもありつつ、リード曲となる〈名前の無い恋〉のような楽曲とマッチした曲を歌いたいということで今回のラインナップになったんです。レコーディングはよく知っている曲ということもあり、あっという間に終わってしまいましたね」
――カヴァーの仕方にこだわったポイントはありますか?
「以前から好きな曲を選んだんですけど、すべて名曲と言われる曲ですからね。オリジナルの方たちとは違った私の色が出るように、それを第一に考えてました。でも、原曲の良さを壊さないということにも重点を置いてました」
――カヴァーした曲って、すべてがタイムリーで聴かれていた曲ではないですよね?
「そうですね。杏里さんの〈オリビアを聴きながら〉とか、竹内まりやさんの〈駅〉はタイムリーでしたね。山口百恵さんが歌ってた頃は、私も小さかったので、時間が経ってから映像で観て知りました。〈いい日旅立ち〉は故郷を思い出しますね。音楽好きな両親がいなければ、歌手にはなってなかったので、私にとって故郷はとても大事な場所ですね。〈あなたの空を翔びたい〉(高橋真梨子)も今聴くと“こんな大人っぽい歌詞だったんだ”って改めて気付きましたね。“恋愛って難しいんだな?”みたいな(笑)。恋する気持ちって、それぞれの曲で違うので、いろいろな主人公になれて楽しいですよね。それでいて、気持ちが入るので切なくもあり。〈五番街のマリー〉(ペドロ&カプリシャス)も“深い歌なんだな”って今回のアルバム制作でつくづく感じました」
――このアルバムがきっかけとなって、リスナーの方も改めて気付くことがあるんじゃないですかね?
「もちろん。今回のアルバムを聴いていただいた人にも、何かを感じていただけたら嬉しいですね」
――ちなみに、初めてポップスを聴いたのは、いつくらいからでどんなアーティストでしたか?
「記憶がないですね。小学5年生くらいから
光GENJIがブレイクしたのでそれくらいからですかね。
WINKとかもすごい可愛い衣装で。あんな華やかな衣装で演歌を歌いたいなと思ってましたね」
――今回、音源を聴かせていただいて、取材もさせていただいて感じたことなんですけど、歌に対して純粋というか、一所懸命に向き合ってますよね? しのぶさんをそうさせる、“歌うための原動力”ってどんなものですか?
「やっぱり、お客さんの笑顔ですかね。ステージに立って歌わせてもらってると、とても温かい拍手をいただけるんですよね。それと、一人の力では何にもできないし、自分の周りにも見えないところでスタッフの人が支えてくださっていて、そこでステージに立つ場を作ってもらえる。そういう人たちへの感謝もありますね。毎日がゼロからのスタートという気持ちで歌ってます」
取材・文/清水 隆(2009年6月)
撮影/高木あつ子
次回、特別対談 しのぶ×つるの剛士・前編
profile
幼い頃から歌手を目指し、水森英夫の内弟子として入門。その後、2001年に音羽しのぶとしてキングレコードから「しのぶの渡り鳥」でデビュー。同年の「日本レコード大賞」で新人賞を受賞。その後もコンスタントにオリジナル曲を発表しつつ、「日本有線大賞 有線音楽賞」など数多くの賞を受賞。そして、2009年7月、“しのぶ”名義でリリースされた新曲「名前の無い恋」は“歌謡曲”に。秋元順子の大ヒット曲「愛のままで…」の作曲家、花岡優平が手がけていることでも話題となる。8月26日にはさまざまなカヴァー曲も収録されたミニ・アルバム『しのぶリメンバー「名前の無い恋」』もリリース。