僕の昭和少年時代(絵と文 / 牧野良幸) 第6回 サンダーバードの話

2019/03/26掲載
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第6回 サンダーバードの話
絵と文/牧野良幸
サンダーバードのテレビ
今回は少年時代を熱狂させたサンダーバードである。
しかしサンダーバードについて書こうものなら、本が1冊書けてしまうほどに内容が濃い。なので、ここでは僕のような子どもがどんな風にサンダーバードを楽しんでいたかを、簡潔かつ忠実に書きとめておくにとどめたい。ではサンダーバード・アー・ゴー!
正直、サンダーバードの放送がいつ始まったのか覚えていない。気がつけばテレビで国際救助隊の活躍を夢中になって見ていたのだ。
最初はNHKの総合テレビ(愛知県では当時3チャンネル)で放送された。それを見たような、見てないような。「サンダーバードの放送は最初はNHKだったんだぜ」などとウンチクを言っていたくらいだから、熱中したのはNHKから民放に移っての最初の再放送かもしれない。それでも1話をすべて放送する1時間枠ではあった。1話を前編と後編に分割して30分枠で放送したのは70年代になってからである。
内容についてはここに書くまでもない。日本の怪獣番組やアニメにはない、リアルなメカやストーリーが支持された。輸送機の2号がいちばん人気だったことでもそれがわかる。
サンダーバードは発進シーンも凝っていた。何回見ても飽きず、スコットやバージルのように自分もサンダーバードに乗り込むつもりになったものである。人命救助というテーマも子どもには刺激が薄いようで実は興奮するものだった。事故はさまざまだから、どんな機器を使って救助をするのか毎回楽しみだったものである。
プラモデルは“今井のサンダーバード”
しかしサンダーバードが60年代に一大人気となったのは、テレビ番組だけではなくプラモデルがあったからだと思う。“今井のサンダーバード”である。今井科学のプラモデルもテレビ放送なみに大ヒットした。これもまた1冊の本ができるほどディープな世界だ。以下に僕の作ったプラモデルをあげてみよう。
  • トレーシー兄弟のフィギア・モデル(それぞれに1号から5号のミニチュアがつく)。50円。
  • サンダーバード1号から5号のスタンダードなモデル。250円から500円くらいか。
  • 人気のジェットモグラ。400円くらいか。
プラモデルの中でもやはり2号が一番人気だった。しかし悩まされたのも2号だった。2号は脚を折り曲げて畳むようにしてあるのだが、付け根のパーツがだんだんと緩んできて脚がたれてしまうのだ。こうなると耐えられない。しかたなく買い換えた。そうするとまた脚がたれる。結局2号は3個買ったのではないか。
しかしこれだけでは“牧野もたいしたことないな”と思われるだろう。重々承知である。リストは出し惜しみをしていた。さらにこんなプラモデルも作ったのであげてみる。
  • エックスカー
  • ゼロエックス号
  • ラジコンのサンダーバード2号
エックスカーは一度もテレビで見たことがないメカだったけど、プラモデルで見た衝撃は大きかった。ゼロエックス号は劇場用の映画『サンダーバード』に登場した飛行機のような火星探査ロケット。大きなプラモデルの箱を見ただけでも幸せ一杯だった。
ラジコンの2号は最後の最後に買ったと思う。ラジコンといってももちろん飛ばない。走るほうのラジコンだ。さすがに小学生も高学年になると“今さら子どもじみたラジコンでもあるまい”と気が引けたけど、どうにも欲求を抑えることができず買ったのだった。当時ラジコンは高かったから、多分お年玉がたまって気が大きくなったのかもしれない。
しかしラジコンともなるとサイズが大きくて30センチ以上はあった。そうなると細部の作りが甘くなる。250円のサンダーバード2号の緊張感はラジコン・モデルにはなかった。走らせてもなんだか湯たんぽが動いているようである。これは買って失敗だったと後悔した。
ここまで読んで、サンダーバード秘密基地がないじゃないか、と言われる方もあるかと思う。サンダーバード秘密基地は確かに究極のサンダーバードのプラモデル。これでどんな遊びができるか考えただけでワクワクしたものだ。
しかしサンダーバード秘密基地は最後のほうに出たのではなかったか。基地の部分はともかく、1号から5号はフィギュアモデルに付属していたものと変わり映えしないように思えた。
また高価なサンダーバード秘密基地を買ったら“石屋の小倅のくせして、ブルジョアになってしまう”という変な自意識が働いた気もする。サンダーバード2号のラジコンを買っておいてブルジョワもないのであるが、それが子供心というものだろう。結局、サンダーバード秘密基地は痩せ我慢して買わなかったのだった。
サンダーバードの終焉とたび重なる再放送
しかし、どんな熱狂やブームにも終わりがつきものだ。サンダーバードも例外ではない。
プラモデルのほうから先に書くと、僕のなかでは製造元の今井科学が潰れて、バンダイに販売が移ったところで熱狂は終わったと言える。
バンダイは当時はオモチャのメーカー。“プラモデルとオモチャは違うだろう”という、子どもなりのこだわりがあったのだ。ただでさえ田宮模型の精密プラモデルに惹かれていく時期である。今井科学が潰れたあたりから、自然にサンダーバードのプラモデルからは離れることになる。
テレビ放送は実のところ民放を見ているときに、“またNHKでやらないかな”とずっと思っていた。やはり国際救助隊の活躍をコマーシャルのないNHKで見たかったのだが、それはかなわなかった。
サンダーバードの放送終了後は同じSF人形劇の『キャプテン・スカーレット』そして『ジョー90』が放送されたから寂しく思う暇はなかった。そして実写になっての『謎の円盤UFO』。これらについては、この連載がムックにまとめられる時に書くつもりである。
こうしてサンダーバードのブームは60年代のうちに一段落つくことになる。しかし70年代に入ってもサンダーバードの人気は続いていた。プラモデルのほうはどれほどであったかわからないが、テレビでは何度も再放送されたから下の世代にも人気は不動だったのだろう。
ただ70年代の再放送は30分枠になり、前編と後編に分割されたせいで、中学生や高校生だった僕には面白みが薄れていた。それでもつい見てしまったのだから、やっぱりサンダーバードは永遠だった。
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