未来のザ・ベストテン 第6回 ÅlborgのMiyaと考える“Today

2024/06/27掲載
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第6回 ÅlborgのMiyaと考える“Today's Folk Music”な未来のザ・ベストテン

『CDジャーナル』本誌で連載中の『未来のザ・ベストテン』。今回のゲストはカクバリズムのニューカマー・バンド、Ålborg(オールボー)からサウンドの要を担うヴォーカルMiyaが登場。Miyaが選ぶ「Today's Folk Music」なベストテン!
Miya(Ålborg)
Miya(Ålborg)
今回のお題
The Neon Skyline
アンディ・シャウフ
(2020年)
――今回のランキングには、Ålborg(オールボー)のバンドとしての個性の成り立ちも反映されているように感じました。
 「“Today's Folk Music”と題して、今を生きて、未来を背負っている仲間たちの作品を選びました」
――その1位と2位が、アンディ・シャウフのアルバム2作です。
 「アンディ・シャウフの『The Neon Skyline』(2020年)と『Wilds』(2021年)には、やられたなと思いました。『The Neon Skyline』はすべての曲が“ネオン・スカイライン”っていうバーを舞台にした一夜を描いているコンセプト・アルバムになっているんです。歌詞を読むとジュディとかチャーリーとか同じ人がいろんな曲に何回も出てくる。短編小説みたいになってるんです。そしてそのあとに出た『Wilds』は『The Neon Skyline』のアナザー・ストーリーのような内容になっています。アンディ・シャウフは音楽というジャンルを超えて注目しているアーティストです」
――Miyaさんにとってこの2枚のポイントは歌詞なんですね。
 「はい。彼にしかできないサウンドだなと思いつつ、やっぱり歌詞に惹かれました。ライム(韻)とか全然気にしてないし、字余りだったり。それでもって彼の語る物語が面白い」
――欧米での“シンガー・ソングライター”という肩書きは、圧倒的に歌詞を評価されている場合が多いですよね。
 「サウンドはもちろん大事なんですけど、歌詞がある曲はやっぱり歌詞を読まないと良い音楽と言っていいのかわからないみたいなところは私もあります。とくにフォークではそうです」
――Ålborgは英語詞だし、Miyaさんも英語の理解力が高い。それは海外で暮らした経験があるから?
 「もちろん日本語のほうが得意なんですけど、歌詞では英語のほうが言いたいことが言える。奥ゆかしくないし、ごまかさないでいられるので英語のほうが便利だなって思います。英語は、20歳のときデンマークに留学して身につけました」
――3位はアーニー・マーグレットの『They Only Talk About the Weather』(2022年)。
 「彼女は、じつは私がデンマークで出会った友人でもあるんです。その出会いが、私の音楽人生を変えた出来事でもあるので、ランキングに入れざるをえない。彼女はアイスランドからの留学生で、2人とも島国出身という共通点もあったし、お互いに惹かれてすぐに仲良くなったんです。一緒にソングライティングの授業を取ったり、一緒にバンドを組んだりして、好きな音楽を共有していました。一緒に成長した仲間です」
――彼女の音楽からMiyaさんが具体的に取り入れたものってありますか?
 「彼女の歌やギターにはとても影響を受けました。アコースティック・ギターを上手に弾くので、私も練習しようと思いました。もともと私はパンク・ロックが好きだったのもあってエレキ・ギターのほうになじみがあったし、“アコギは指が痛くなる”くらいに思っていたんです(笑)。私小説みたいな歌詞の書き方も影響を受けてるかな」
――4位はジョアンナ・スタンバーグ『I've Got Me』(2023年)。
 「衝撃を受けました。彼女のアルバムは2枚とも好きです。彼女の音楽を聴いていると“自分は自分でいいんだな”と元気が出ます。いつか彼女が暮らすニューヨークに行って会ってみたいです」
――5位はボニー・ライト・ホースマンの『Keep Me on Your Mind/See You Free』(2024年)。
 「メンバーそれぞれは経歴が長いんですけど、バンドとしてはまだ新しいです。とくに、シングルで出た〈When I Was Younger〉という曲をÅlborgのシングルをレコーディングしていた2月に聴いてました。作業中だったから、影響受けすぎないようにしないといけないって思ったくらい(笑)。やっぱり歌詞がいい。フォーク・ソングって、声が聞こえやすいから歌詞がスッと入ってくるんですよね。彼女たちの音楽からも、伝えたいっていう思いが感じられて胸が熱くなります」
――6位はイ・ランのファースト・アルバム『ヨンヨンスン』(2012年)。
 「このアルバムってパンクスみがあると思って。彼女の曲ってコードが少なくて、ヴォーカルのスタイルもすごくラフ。イ・ランはSF作家のカート・ヴォネガットの本を読んでいると聞いたことがあるのですが、悲しいことや苦しいことを悲劇的じゃなくてユーモラスに表現するところはヴォネガットの作風を継承してると感じます。素朴なコードがおかしみを生んでいるのかな。すごくいいんです」
――7位はエイドリアン・レンカー『Songs And Instrumentals』(2020年)。彼女はビッグ・シーフのメイン・ヴォーカルでもあります。
 「2枚組でどっちのディスクもいい。コロナ禍に山奥でひとりで録音して、雨音とか入ってる感じも好き。彼女の豊かな内面世界が描かれているところがいちばんの魅力だと思います。〈Zombie Girl〉という曲が大好きです。彼女の書く詞がとても好きなので、興味本位で彼女がオンラインで開講していたソングライティングの授業を受けてみたこともあります」
――最後は駆け足ですがお願いします。
 「8位はゆうらん船『My Generation』(2020年)。(内村)イタルくんの歌詞がめちゃくちゃいいし、バンドとしてもいろんなことやっていてかっこいい。このアルバムは口ずさめる曲も多いし、大好きです。9位はスウェーデンのファースト・エイド・キット『Drunken Trees』(2009年)。彼女たちの最初のEPかな。フォークってかっこいいなと思い始めたきっかけかもしれない。だけどこのアルバムにもパンクスみがあるからかっこいい。10位はアイスランドのシンガー・ソングライター、アウスゲイル『Bury the Moon』(2020年)。留学時代にアーニーに教えてもらったんですけど、去年フジロックで見て一目惚れして今回選びました」
――今はオンラインでいろんな音楽にすぐアクセスできる時代ですけど、Miyaさんはデンマークに行ってアーニーさんに出会ったように、その場所に行って体験したり、その人がいる場所の空気を想像することの面白さを知っていると思います。そういう感覚を反映したランキングでもありますよね。
 「そうですね。せっかくならまだまだ音楽を作り続けてほしいと私が思う人たちを紹介したいと思って今回はToday's Folk Music と題して選んでみました」
取材・文/松永良平
今回の未来のザ・ベストテン
1位
アンディ・シャウフ
The Neon Skyline
アンディ・シャウフ
2位
アンディ・シャウフ
Wilds
アンディ・シャウフ
3位
アーニー・マーグレット
They Only Talk About the Weather
アーニー・マーグレット
4位
ジョアンナ・スタンバーグ
I've Got Me
ジョアンナ・スタンバーグ
5位
ボニー・ライト・ホースマン
Keep Me on Your Mind/See You Free
ボニー・ライト・ホースマン
6位
イ・ラン
ヨンヨンスン
イ・ラン
7位
エイドリアン・レンカー
Songs And Instrumentals
エイドリアン・レンカー
8位
ゆうらん船
My Generation
ゆうらん船
9位
ファースト・エイド・キット
Drunken Trees
ファースト・エイド・キット
10位
アウスゲイル
Bury the Moon
アウスゲイル
次点
Westerman
Your Hero is Not Dead
Westerman
次点
Supersport!
Tveir dagar
Supersport!
次点
Ålborg
The Way I See You
Ålborg
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