植村花菜は、メジャー・デビューから数えるともうすぐ5年の時が経つ。今まで発表された彼女の音楽は決して聴き流すことはできない力があり、深く知ればそれだけ感動も大きくなる。そこで、新作
『わたしのかけらたち』をさらに深く楽しめるように、彼女の現時点までの活動を振り返ってみた。
太陽のような“明るさ”と裏に隠れた“陰”
その極端なレンジの広さが植村花菜の魅力
2005年5月11日、植村花菜はシングル
「大切な人」でメジャー・デビューをした。当時の第一印象は、歌から感じる以上の純粋さと太陽のような明るさを感じるアーティストだった。その透き通るように朗らかな性格が、包容力のある歌唱法にも作用しているのかもしれない。しかしながら、彼女はシンガー・ソングライターの資質として大切な“陰”の部分も備えていた。その陰の部分は、後に発表される楽曲から少しずつ知られることになる。そして、彼女の素晴らしいところは、志向の部分にしっかりとした芯の強さを持っているところ。何かを成し遂げようとする推進力はデビュー当時から目立っていた。現在、最新楽曲となる「トイレの神様」でブレイクしつつある状況だが、その状況はさまざまな葛藤を乗り越えてきた、彼女の努力のたまものでもある。「トイレの神様」で彼女のことを知った人には、此処に至るまでの過去の楽曲も順を追って聴いてほしい。
彼女が歌手を志したのは8歳のとき。ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』を観て、“たくさんの人が笑顔になれるような歌をうたいたい”と歌手になることを決意。日々歌の練習を重ね、19歳のある日、ストリートで歌う知人の姿を観て感化されるとすぐにギターを手に入れ、曲作りを始める。その後、地元でもある関西各地のストリートやライヴ・ハウスで歌うようになる。オリジナル曲はもちろん、後に
シングルとして発表した
荒井由実(
松任谷由実)のカヴァー「やさしさに包まれたなら」もこの頃に歌っていた。彼女の歌の才能は、この時期から大きな光を放つようになる。そして、プロになるきっかけは当然のように訪れた。
大阪ミナミのストリートで歌っていた彼女は、ある人物に声をかけられて<ザ・ストリートミュージシャン・グランプリ>に参加。1,200組の出場者のなかからグランプリに選ばれている。デビューのきっかけとなったのはこの出来事だった。
恋愛がテーマの楽曲が中心の1stアルバムと
夢を叶える強い意志”をアピールした2ndアルバム
2004年6月、インディーズから
「花菜」というシングルがリリースされ、その後、準備期間を経て、2005年5月に作詞を渡辺なつみ、作曲を
亀田誠治が手掛けたシングル
「大切な人」でメジャー・デビュー。さらに、愛用のアコギをかき鳴らすイントロが印象的な
「ミルクティー」(2005年9月)、込み上げる想いを歌にのせたラブ・ソング
「キセキ / 恋の魔法」(2005年11月)と2枚のシングルを発表。そして、自身の誕生日でもある2006年1月4日に、それらの楽曲も収録された1stアルバム
『いつも笑っていられるように』が発売された。アルバム・タイトルの“いつも笑っていられるように”は、彼女が大切にしている言葉。ラブ・ソングを中心に構成された本作ではあるが、収録された「melody」では、“遥か 彼方へ どれくらい往けるんだろう たよりない翼で”と、恋愛とは別のベクトルにある“夢”に向かう、自身の不安な心境も表現していた。
1stアルバムのリリース後は休むことなく、2ndアルバムの制作に向けて動き出す。2006年3月には前述のカヴァー曲「やさしさに包まれたなら」をシングルとして発表し、さらに同年8月にはシングル
「紙ヒコーキ」をリリース。この曲は“大きな空”を次のステージに見立て、“夢を叶える強い意志”を高らかにアピールした一枚だった。この頃から、彼女のなかで“音楽を作ること”のイメージが少しずつ明確になる。次のシングル
「光と影」は、“躓いても立ち上がり、強くなり、心のままに進んでいけばいい”と大きな夢に立ち向かっているときの葛藤を表現。“誰もが大きな不安や挫折と闘って生きている、そんな人たちの力になりたい”というような気持ちも感じ取れた。それらの楽曲が収録された2ndアルバムのタイトルは、
『しあわせの箱を開くカギ』(2007年1月4日発表)。「紙ヒコーキ」「光と影」だけでなく、“果てなく続く 希望を抱きしめて”と歌う楽曲「物語(ストーリー)」からも確かなメッセージが伝わってくる。
苦悩を乗り越え、「トイレの神様」がヒット!
その1年前には「神様につながる時」という曲をリリースしていた
そして、2007年9月には、作詞に
いしわたり淳治を迎えたシングル
「あなたのその笑顔はいいヒントになる」をリリース。この頃から客観的に自身を見つめつつ、今までに関わったことのないクリエイターとの交流で新たな表現方法を求めるようになった。そして、同年11月に3rdアルバム
『愛と太陽』をリリース。このアルバムでは、昔から好んで音楽を聴いていたというシンガー・ソングライターの
小林建樹や
森若香織らを楽曲制作陣に起用することによって、特に作詞面と歌唱法の“深み”を出すことに成功している。
サンディ・トムの楽曲に森若香織が日本語詞を付けた楽曲「Only You」を披露したライヴを聴いたときは、それまでとは違う“深み”に驚いた記憶がある。そして、特筆すべきは『愛と太陽』の収録楽曲「タペストリー」。“過去を振り返りながらも、今を信じて、さらに未来に向かって行こう”という歌で、憶測ではあるがこの楽曲を歌いながらも、その頃の彼女は自分自身の現状に対して疑問を持っていたようにも感じた。ここまでの楽曲は試行錯誤しながら苦労して生み出された作品で、それらはどの曲もリスナーの心に響くもの。しかし、“それがなぜたくさんの人に拡がらないのか……”と。「タペストリー」を歌いながらも彼女は、心が折れないように鼓舞していたのかもしれない。
3枚のアルバムを出し、2008年8月にシングル
「シャララ」をリリースした後、初心に帰るかのように、彼女の拠点は地元でもある関西地方に向いた。関西限定でマキシ・シングル「BLESS / 春にして君を想う」をリリースすると、地元関西で絶大な人気を誇るTV番組「ちちんぷいぷい」やFM802の番組などでも取り上げられ、ヴォーカリストとしての実力を大きく認められることになる。後にそれらの楽曲は、ミニ・アルバム
『春の空』として全国発売された。作詞に森若香織、作曲に都倉俊一を配した収録曲「神様につながる時」は、シンプルな言葉のなかにも深い情感があり、彼女の歌が胸に迫ってくる。“夢が叶う時と 言うならどんな時も 信じて 夢見て 歩いて行こうよ”と歌うこの楽曲。偶然にもこの「神様につながる時」の後に「トイレの神様」がヒットに繋がり、結果的に大きな意味を持つ楽曲だったのかもしれない。
そして、最新のミニ・アルバム『わたしのかけらたち』はトータル・プロデューサーの
寺岡呼人とともにゆっくり時間を掛けて制作された。濃密なミーティングを経て、「トイレの神様」を始めとする6曲が完成。「これまでの彼女は優等生のようで殻を破っていない」と感じた寺岡は、山田ひろし、岩里祐穂という作詞家の手を借り、彼女の本質に迫ることに成功した。世の中の注目を浴びるようになった今は、植村花菜にとってまさにマイルストーン(=通過点の標識)。2ndアルバムのインタビューの時に「幸せになりたいと思って一生懸命になってても、人間って欲深いから、結局ゴールってないと思うんですよ。大事なのは“葛藤すること”ですよね」と語っていた彼女。これからも植村花菜は、シンガー・ソングライターとして葛藤を続けながら、人の心に響く曲を生み出し、歌っていくだろう。
文/清水 隆
植村花菜に30の質問!
ここでは音楽的なことだけでなく、植村花菜のパーソナルな部分にクローズアップ! ご本人に30の質問を投げかけてみました。
Q.パーソナル・データを教えてください。 |
☆イノシシ年。山羊座。A型。 |
|
Q.よく言われる(言われた)、あだなは? |
☆かなちゃん。うえ。ばなな。カナ吉。 |
Q.自身の性格を分析してください。長所は? |
☆良くも悪くも、とにかくむっちゃポジティヴです! |
Q.自身の性格を分析してください。短所は? |
☆驚くほど忘れん坊。良いことも悪いこともすぐ忘れます。 |
Q.音楽以外の特技は? |
☆ゲーム全般。 ☆バルーンアート。 ☆バトン。 ☆鉄棒。 |
Q.故郷のセールス・ポイントは? |
☆大阪から快速で17分! ☆川西出身の有名人。ヤクルト古田さん。由美かおるさん。寺門ジモンさん。 ☆猪名川という、大一級河川がある。 ☆阪急百貨店や、神戸と川西にしかないモザイクがある。ラウンドワンもある。 ☆なんか、いい街。 |
Q.ミュージシャンになった動機は? |
☆8歳の時、ミュージカル映画『サウンドオブミュージック』を観て感動し、将来歌手になる事を決意する。 |
Q.ミュージシャンでない仕事に就くとしたらどんな仕事? |
☆人と触れる、接客業がいいです。自分の存在が、誰かを笑顔にするお仕事がいいです。福祉関係。 |
Q.コンプレックスはある? |
☆顔が丸い。 |
Q.趣味は? |
☆読書。 ☆映画観賞。 ☆ドラマ『相棒』BOX観賞。 ☆アクセサリー収集。 ☆ゲーム。 |
Q.好きな色は? |
☆オレンジ。 ☆ミドリ。 |
Q.好きな場所は? |
☆猪名川。 ☆五月山。 ☆京都。 ☆神戸。 ☆東京タワー。 ☆浅草。 ☆シャボテン公園。 |
Q.好きな食べ物は? |
☆レバ刺し。 ☆アボカド。 ☆もやし。 ☆ゆば。 ☆えび。 ☆食べ物全般なんでも好き。 |
Q.好きな芸能人/アーティストは? |
・アーティスト ☆カーペンターズ ☆ジョン・メイヤー ☆Tete ☆ボニー・レイット ・芸能人 ☆笑い飯 |
Q.生まれて初めて買ったCDは? |
☆チャゲ&飛鳥さんの『LOVE SONG』 |
Q.好きな本は? |
☆重松清「流星ワゴン」 ☆東野圭吾「容疑者Xの献身」 ☆山本文緒「恋愛中毒」 ☆唯川恵「肩ごしの恋人」 ☆星新一「ボッコちゃん」 |
Q.好きな映画は? |
☆ウエストサイド物語 ☆サウンドオブミュージック ☆ビッグフィッシュ ☆エターナルサンシャイン ☆ONCE〜ダブリンの街角で〜 ☆ペネロピ ☆ダークナイト ☆アンヴィル ☆オズの魔法使い ☆美女と野獣 |
Q.植村さんご自身の曲の中で、一番好きな曲、もしくは思い出深い曲は? |
☆テネシーワルツ。 |
Q.曲はどんなときに生まれやすい? |
☆お風呂とか、散歩とか、電車に揺られてる時とか、比較的リラックスしてる時に生まれやすいです。 |
Q.最近、熱中していることは? |
☆料理。 ☆ギターソロの練習。 |
Q.いま欲しいものは? |
☆春物の洋服。 |
Q.なにをしているときが一番幸せ? |
☆歌ってる時!と、美味しい物食べてる時!!! |
Q.自分に向かないことは? |
☆じっとしてるコト。 |
Q.今までで一番、幸せを感じたことは? |
☆家族みんなで笑いながらご飯を食べるコト。 |
Q.今までで一番、辛いと思ったことは? |
☆おばあちゃんが亡くなったコト。 |
Q.なにか失敗談があったら教えてください。 |
☆ハーフマラソンに出場するのに、一番肝心なジョギングシューズを忘れて行った。 ☆PVの撮影で、ギターを忘れて出かけた。 ☆友達に送るはずのメールを、間違えてアメブロに送ってしまい、1時間ほどずっとブログにアップされていた。 ☆山のようにあって書ききれません……。 |
Q.休みの日はなにをしていることが多い? |
☆掃除、選択、料理。家事全般。 ☆映画を観に行く。 ☆自然に触れに行く(山登ったり)。 |
Q.尊敬している人物は? |
☆ジュリー・アンドリュース。 ☆カレン・カーペンター。 ☆母。 |
Q.理想の未来はどんな感じ? |
☆毎日歌をうたって、幸せな家庭を築いて、最後自分が死ぬ時も歌いながら死んでいって、「おばあちゃんは最後の最後まで歌ってたね♪」と笑いながら看取られたい。 |
Q.心に残っている、大切にしている言葉は? |
☆いつも笑っていられるように。 |
Q.今までの音楽活動で忘れないエピソードは? |
☆5年間で1度だけ、目覚ましが鳴らず寝坊してしまったコト。でも、仕事はなんとか大丈夫でした♪ |